手紙
シイと商家との契約です。シイの打った剣の評価は?そして本章の評価は?
俺はシイを連れて一旦自分の家に寄り、お酒と肴の魔石を箱に入れ、手に持ってキャバクラへ向かった。今週はまともに狩が出来てない。在庫が心許無い。
「いらっしゃいませ」
「ああ」
キャバクラに入ったら黒服が出迎えてくれ、俺は一番端の席を指し確認したら、そのBOX席へと案内してくれた。
「いらっしゃいノーバン」
「おはようママ」「こんにちは」
すぐにママが来てくれた。この店では俺に着く女の子はママしかいない。嫌われているのかもしれないが、ママは美人だし不満は無い。
「可愛いお嬢様ね。何処かのご令嬢かしら?」
「俺の依頼人のシイだ。少し幼く見えるが大人だから安心してくれ」
「そうなの?」
シイが大人だと話しても、まだ少し疑ってるようだ。語尾が上がっていた。
面倒なので俺は話題を変えるように、他の話をする事にした。
「今日は魔石を多めに持って来てる。注文の魔石以外にベルモットを多く入れてある。お酒以外にもキャビアも入ってる」
「こんなに一杯どうしたのノーバン?」
色々な魔石を入れた箱と一緒に、箱の中の一覧表をママに渡した。
「まだ俺も此の子、シイも夕食を食べてなくてな。税金分も要らないから少し多めに料理を頼む」
「それにしても多いわ?」
ママは手を軽く上げ黒服を呼び魔石を片付けさせて、軽食も適当に頼んでくれた。
「ママに頼みが有るんだ」
「なにかしら?」
頼みが有ると言っているのにママはニコニコしながら聞き返してきた。
頼み事を面倒だと思ってないかのようだ。
「ママの髪を触りたい……、じゃなくてシイの絵を三枚描いて欲しくてな」
ママは歌も絵も上手い美人さんだ。まるで美の女神に愛されてる様な女性だ。
「私の髪は触らなくても良いの?」
俺は紙と鉛筆をママに差し出しながら答える。
「触りたいが店内ではな……」
「残念ね……ノーバンがね、くくく」
ママの髪は桃色で腰ほどの長さがあり、サラサラとなびきキラキラと輝いている。
店内では御触り禁止だ。髪でも気を付けないと、他の客の目もある。
触れないのは残念だ。触って顔を埋め触り心地と香りを確かめたい。
俺はウィスキーの水割りを薄めに、シイとママはベルモットを使ったカクテルにしたようだ。カクテルからは少し甘い香りがする。
「食べながらで悪いが、全身と顔の正面からと横顔を書いて欲しい。暗ければ光の魔石も出すが」
「平気よ。お店の薄明かりには慣れてるわ」
俺達が軽食を食べている時から、ママは絵を書き始めていた。
食事を終えてからシイに少しポーズを取ってもらったり、横を向いてもらいながらママは絵を書き上げた。
「ママは最高だよ。とても綺麗だ……絵が」
「あら、絵だけなの?ノーバン」
ママはとても綺麗だ。目は海の様にキラキラ輝き、腰のくびれも良く、胸には夏みかんががしっかり支えられていて存在を主張していてスタイルも良い。
「ママは何時も綺麗だよ。人魚かヴィーナスの様だ」
「……人魚、そうね、ありがとうノーバン、……くくく」
ママはヴィーナスより人魚に反応したようだニヤニヤしながら返してくれる。
俺は絵をシイに渡した。シイは無言のまま笑顔で絵を見つめている。
「有難うママ」
「有難うございます」
「また、いらしてね」
挨拶を交わし、ママから何時もの欲しい物リストのメモを受け取りお店を出た。
絵を描いてもらった為、遅い時間だ、シイを家まで送った。
「シイ、明日はゆっくり休みながら手紙を書くと良い。絵は手紙と一緒に……な、明後日の昼に迎えに来るから食事は済ませておいてくれ」
「はい、おやすみなさい」
俺も家に帰り、その日はすぐに寝てしまった。
翌日は一人でダンジョンだ。今週はまともに狩りが出来ていない分、お酒の魔石集めと自分の階層攻略に少し頑張った。
更に翌日、木曜日の昼少し前、竹筒と布と紐を買ってからシイの家を訪れた。
「こんにちは」
「ノーバンさん、あがってくれ」
「シイ、手紙は書けたかい?」
「書けたけど……その、読ませないよ」
シイは紙の束を持ちながら読めない様に見せて来た。沢山書いたようだ。
「分かった。読ませたくないなら此の竹筒に入れて布で蓋して紐で縛ると良い。一昨日の絵も一緒にな」
「そうさせてもらうよ」
「シイ、少し髪が跳ねてるぞ」
「そんなはずは……」
シイはそんな筈は無いと言いながらも手で髪を触っている。
「櫛を貸してみなさい。梳いてあげるから」
「頼むよ」
シイは櫛を持ってきて手渡してくれた。髪が跳ねてるなんて嘘だ。シイの髪を俺が梳かしたかっただけだ。触り心地と香りを堪能してから解放した。
「そろそろ商家へ行こうか」
「そうだね」
俺はシイに声をかけた。シイに手紙の入った竹筒を持って出る様に言いくるめる事に少し苦労した。が竹筒は胸に仕舞われて手が出せない。
「ノーバンだがオーナーは居るか?」
「奥でお待ちしております。どうぞお入り下さい」
今日は待たずに商家のオーナーに会えた。もう一人先日の冒険者の姿もあった。
「お待ちしておりましたノーバン様、シイ様」
「「今日は宜しくお願いします」」
「ノーバン、両手剣を返す。二mのワニガメを甲羅ごと真っ二つだった」
冒険者は恐ろしい事を言ってきた。もう少し柔らかい相手で試して欲しい物だ。
「ワニガメで試す必要は無いだろう?」
「最初はそう思ったが普通の魔物では豆腐と一緒でな、重さと切れ味からワニガメが行けると思った。その通りだったよ」
「カメを相手にして地面とか岩まで斬ったりしてないだろうな?」
「刃は、こぼれてないから安心しろ」
答えをはぐらかした。何か切ったな。思わず刃を確認してしまった。
商家と冒険者で話は出来ていた様で、シイの契約は殆どがシイへの説明だけで順調に進んだ。
俺からの注文で「シイは腕は兎も角常識が足りていない所が有るから、細かい打ち合わせを頼む。それに伴う齟齬の不利益をシイが一方的に被る事のない様に」と付け加えた。
最後に書面に署名して交わされた。
「良かったなシイ。あとはシイの努力しだいだ」
「ありがとうノーバンさん、これから宜しくお願いします皆様」
「「こちらこそ宜しく」」
俺達は商家と冒険者に挨拶して商家を出た。まだ日は高い。
両手剣はシイに持ってもらった、シイなら鍛冶師だから特別許可で持ち歩いても平気だ。
「シイ、剣も有るから冒険者ギルドに付き合ってくれ」
「かまわないよ」
シイは少し首を傾げていたが、冒険者ギルドに連れて来た。
俺が「剣も」と言ったから他にも用事が有る事に首を傾げたのだろう。
「ノーバンだがギルド長に会いたい」
「少々お待ち下さい。確認いたします」
受付の女の子は俺の事を噂で聞いているのか、名前を言ったら引き気味に受け答えをしてくれた。が、用が有るのはギルド長にだ。気にはしない。
俺とギルド長は古くからの知り合いで、お互い面倒事を押し付けあう仲だ。
少し待ち、その間に剣をギルドに預け、預り証を受け取った。
面会許可が出たので二階のギルド長室へ向かった。
「ようギルド長、元気か?」
「あいにく元気だよ」
ギルド長は挨拶しながらシイに目を向けている。
取り合えずソファーに腰を下ろした。
「俺の妹のシイだ」「ち、ちがう」
「妹?お嬢さんは違うと言ってるようだがノーバン?」
「妹の様に可愛い俺の依頼人だ」
「なるほど、確かに娘として欲しいくらい可愛いな」
「こんにちは、シイと申します」
俺とギルド長のオヤジ話にシイは呆れている様だ。
「シイ、胸にしまっている物を出してくれないか? 俺が手を入れて手探りに出しても良いが……」
「いや自分で出す。何する気だい?」
どっちの意味の「何する気」か分らなかった。シイに対してか、手紙で何するか。
蔑む様な目だが、身長差で少し上目遣いだ。とても可愛い。
俺はシイから竹筒を受け取りギルド長に筆を借り、あて先を「シイの親」と書き差出人を「シイ」と書いてギルド長に渡した。
「大事な物だ。開けないでくれよ。それをドワーフの国に届けて欲しい」
「な!ノーバンさん、駄目だよそれは。どうせ届かないし高いよ」
シイはとても焦っている様だ。
「丁度ドワーフ国に護衛依頼が有る。明日の出発だ。ついでだ、安くしておく」
「宜しく頼むよ。依頼人は俺だ。料金も俺が払うから依頼人か受取人以外には奪われるなよ」
俺は暗にシイに渡さない様にギルド長に言う。
この町はダンジョンの町で武器は多く必要だ。武器職人の多いドワーフ国と深い交流がある事は知っていた。頻繁に行き来がある事もシイに言わなかっただけだ。
「駄目なんだノーバンさん。それを送ったらアタシは国に帰れなくなるから」
「今の気持ちと最近の事を書いただけの手紙だろ? 大げさだよシイ」
「本当に駄目なんだよノーバンさん」
シイが手を伸ばして来たから、俺は抱き止めた。
「そんなに帰り難かったら帰る時には、俺が一緒に帰ってやる」
「そ、それは……もしかして……プロポーズ?」
「うん? 心細いなら付いて行ってやるとは言ったが、プロポーズって何だ?」
「…………もう!……ノーバンさんの馬鹿!バカ、馬鹿、馬鹿ぁ!!」
シイの言っている事が分らない。何処を聞き間違えたらプロポーズに聞こえるんだ?
シイは俺の胸を何度も強く叩いた後、走って部屋を出て行ってしまった。
シイに悪い事をしてしまっただろうか。でも、こうでもしないとシイは親に連絡しないと思うし、今を逃したら後は無い気もする。
「良いのかノーバン?」
「ああ、後で機嫌を取るさ」
俺は手紙の配達料をギルド長に払い、世間話をしてからギルド長室を出た。
まだ帰るには早い時間だ。受付で両手剣を受け取りダンジョンに潜った。
俺は数日シイの怒りが収まるのを待ってから、謝りに行こうと思い日々を過ごしていた。
土曜日に何時も通りスナックで飲んでいると、シイが現れた。噂で俺が土曜日はココだと知っているのだろう。
シイは数日前に買ったドレスで着飾っていた。とても綺麗で何時もより大人びていて夜の蝶かと思うほどだ。
「シイ、びっくりした。今日は大人っぽくて綺麗だよ」
「ノーバンさん……、ありがとう!『チュッ』」
シイは、すぐにお店を出て行ってしまった。
……俺はしばらく放心していた、シイが頬にキスしてくれたのだ。
俺は我に返って店の外を見てみるがシイの姿はもう無かった。
諦めて自分の席に戻った。
しばらくシイの事を考えていた。何に対してのお礼だったのか?
頬にキスしてくれると分っていたら、シイの方を向いたのに上手くしたら……そんな事を考えニヤニヤしてみたり、また何のお礼か考えて真剣になったり。
隣にミミィちゃんが座った。今日は俺の左隣だ。いつもなら右隣に座るのにと思いながらも、まだシイの事が頭から離れない。
「ママ、ミミィちゃんに何か飲み物出してあげて」
「はい」
ママならミミィちゃんが何を飲みたいか分るだろう。
「ノーバン!」
「ん?なにミミィちゃん?」
不意に名前を呼ばれて反応が遅れた。
「何じゃないわよ。何時もなら何を飲むか聞いてくれるのに、どうしたの?さっきから、少女が見えた後から変だよノーバン」
「そ、そうかな?何も無いよ」
「ミミィが隣に座っても見てくれてないんじゃない?」
「えっとミミィちゃんの事は何時も見てるよ」
「何も無いわけ無いわよねノーバン?」
「ママ!」
ママが話しに割り込んできた。嫌な予感しかしない。
「ママ何か知ってるなら教えて」
「ノーバンは可愛い少女とキスしてたのよね」
ママは大事な部分を抜き取り、変に余計な事を言っている。
ミミィちゃんは俺の耳元で、囁く様にしつつ語尾を上げて怒りを表現しながら名前を呼んできた。
「ノーバン!」
「いや頬に軽くだよ」
お店の中でキスは駄目なのだろう事に怒ってる気がして、大事な情報を話した。
「それで、呆けていたの?」
「いや少し考え事をしていただけだよ」
少しだけ普段のトーンに戻った気がする。
「そう、ならミミィがもっと良い事してあげる」
「なんだろう楽しみだな」
ミミィちゃんもニコニコしながら「良い事」と言ってるし、頬にキスより良い事って、期待しない訳が無い。ワクワクする。
「こうよっ!」
ミミィちゃんは俺の太腿を強く抓ってきた。
期待とは全然違う行動に、俺は一瞬何が起こったのか分らないで居た。まるで恐竜に成った気分だ。痛みが遅れてやってきた、痛!
今日は右手で抓られ何時もより痛い。
「い、痛いよ……ミミィちゃん?」
「どうぉ!正気に戻った?」
「どうだろう」
俺は少しニヤニヤしながら曖昧な答えを返した。
「もうっ!ならこうよっ!!」
今度は太腿の内側を抓ってきた。先程より痛い、がミミィちゃんの手が俺の大事な物に僅かに当たってそれどころじゃない。
ミミィちゃんは気付いてない様に抓ったままだ。当たってるよ当たってる。
ミミィちゃんは一番左端の席だ。死角になって誰も抓ってる事は分らないだろう。
「ごめんごめん、ミミィちゃんの可愛さには誰も敵わないよ」
「……許してあげる」
抓ったままで手を引っ込められ抓られたまま引っ張られた感じになり最後まで痛い、今日のミミィちゃんは、ある意味積極的? 絶対サドだと思う。
やっと離してくれた。そもそも俺は何か許されない事をしたの?
その後は不思議と何時もの自分に戻り、ミミィちゃんと楽しい時間を過ごせた。
流石はミミィちゃんだ。何度でも通いたくなる。ミミィちゃんに会う為に。
今日は閉店までミミィちゃんと、楽しく美味しいお酒を飲んだ。
シイの思いに共感された方や少し感動した方はシイに評価、感想を送ってあげて下さい。
次章はエロに傾倒し話の進みは悪いです。
三章までとは違います。注意してお進み下さい。




