別れ
人の多い町を目指して歩くも、始めの数日は出ては家に戻ってしまった。
次の数日で煙の登る所を探した。山の中腹から。
山裾に集落の様な数本の煙を見付けた。
田畑は見えたが村と言えるかどうかも怪しいくらいに家が少ない。
若い農夫婦に声を掛けてみた。
「こんにちは」
「こんにちは、見掛けない顔だが何処から来たんだい?」
手を止め挨拶に答えてくれた。
「山の上のお爺さんと住んでたんですが‥‥その、急に一人になってしまって‥‥」
「ああ山の上の‥‥どうしたの? お爺さんと喧嘩でもした?」
お爺さんの事を知ってるらしい?
「お爺さんは亡くなってしまって‥‥」
「それは何と言ったらいいのやら、で如何するの?」
「町に行ってみるつもりです」
「そう? ‥‥その前にお爺さんの住んでた家に案内してくれるかな? どんな生活をしていたのか見てみたいし」
「構いませんが」
またしても戻る事になってしまった。
若い農夫を連れて家に戻った。
農夫がお爺さんの家を見るて‥‥。
「たまに来て管理してやろう」等と言うが出ていく俺には関係ない。
畑の野菜を煮て食べて寝てしまった。
翌朝早くに家を出たが一つ伝え忘れがあった。
お爺さんのお墓の場所だ。
あれ? 俺は自分が知ってるから気にならず忘れたが、農夫は何故聞いて来なかったのか?
気になって隠れながら家の近くに戻り、静かに農夫の様子を見ることにした。
農夫は家の中から金目の物を持ち出し、納屋からは農具と背負い籠を畑からは野菜を採り集めた。
それらを背負い籠に入れて山を降りる農夫。
良い人そうに見えたんだが、まるで泥棒じゃないか?
再び俺はお爺さんの家に戻った。
お爺さんの大切にしていたお婆さんの形見と言っていた髪飾りも無くなっていた。
悔しい。俺のせいだ。知らない人を引き入れたから。何時までも迷い町に出なかったから。
翌朝、お爺さんの住んでいた家に火を掛け‥‥家を出た。もう戻る場所は無い。
お墓に手を合わせ何度も謝り旅立った。
迷いを断ち切った俺の足は速い。
もう先へ進むしかないんだ。戻る場所は無い。
数日分の食料はあるが野宿は怖いし寒い。
出来れば何処かに泊まりたい。
焦る気持ちが足を前に出させる。
決心すれば早いもので僅か半日ちょっとで村に辿り着いた。
過去の経験から若い者は避け、お爺さんやお婆さんを探して声を掛けた。
「こんにちは」
「こんにちは、何処のボウズだい?」
「あの山から下りて来ました」
「ほぅ?」
再び深く御辞儀をして自己紹介から始めた。
余計な事は言わず必要な事をかい摘まんで話すと、老夫婦は涙を溜めて聞いてくれた。
その村は自分の育った山奥と違い平地で田畑が多く、家々は離れているものの田畑の先には家が見える。
都の近くでは更に家が増えると言う。いったい如何程の人が暮らしているのだろうか。
数日、田畑の手伝いをしながら世話になり、簡単な道具の手入れも教わった。
そして数日分の食料と僅かばかりのお金を貰って再び旅に出た。
それからも村を転々と旅を続け都を目指した。
色々な事を教わり色々な物を貰った。
これらの恩を返せる日が来ると良いのだが‥‥俺が大人になり自立してお金を稼げる頃まで生きているだろうか?
こうして外の世界を見て回ると病人や怪我人が多い。自分の産まれた村も病気でほぼ全滅した。
生きているだけでも幸運だと改めて思わされた。
そしていよいよ都に近付き、人が増え家が増え馬車や荷車がも増えてきた。
そして小さいながらもお店があった。
都にはあんなお店が軒を連ねてると聞いたけど‥‥信じられないな。
都の話は噂は沢山聞いた。
誰でも稼げるとか、悪人ばかりだとも、大大店が在るとか、人の川があるとか、凶暴な動物がいてそれを狩る者がいるとか? 子供は拐われ売られるか、丁稚奉公として働かさせられるんだとか?
何が本当で何が嘘かも分からないけど早く行ってみたいと心が踊る。浮かれる気持ちをしずめ今日の屋根を探し始めた。




