シイ
第三章は未修正に付き若干読み難くあります、後日修正予定。
設定、世界観
地球と良く似た異世界だが科学水準は低く、いまだ電気の無い時代。
但し、神の創りしダンジョンが存在し、魔法も存在する世界。
そして植物や動物に食べ物等は地球とほぼ同じだが人種だけは人間以外にもエルフやドワーフに人魚族が存在する。
俺はミミィちゃんと食事デートの約束をしていた。
お洒落な店に行った事の無い俺だ、見栄張って知らないお店に連れて行くより知ってるお店の方がミミィちゃんとの話に集中できる。
その分は何時も行き付けの食事処に数日前に行き、席予約と特別メニューを頼んでおいた。
俺は少し早めに待ち合わせ場所に居た。
待ち合わせ時間の五分過ぎ位にミミィちゃんが走ってきた。
「ごめんねノーバン、待った?」
「いや俺も今来た所だよ」
親しき仲でも冗談でも「待った」的な事は言ってはならない。この世界の常識だ。
心無い冗談は相手を酷く傷付けてしまう。
女性は出かける前の仕度に時間がかかるもの、当然のことだ。
「ミミィちゃん、ワンピースも良く似合ってて、とても可愛いよ」
「ありがとうノーバン」
遅刻の話を終わらせる様に話を切り替えミミィちゃんちゃんを褒めた。
ミミィちゃんちゃんは長めのワンピースに太い帯を左前辺りでリボンにして留めている。ワンピースと帯で作ったリボンがとても女の子らしく可愛い。良く似合ってる。
ミミィちゃんは「有難う」と言いながら、俺の左腕を軽く抓って来た。痛気持ち良い。
人目は無いけど自分の働くお店の前だ、恥ずかしく照れ隠しに抓ったのだろう。
ミミィちゃんちゃんは、抓った手で俺の左の手首の上辺りを掴んで来た。
俺は良く分らないが掴まれた左手を軽く腰に当て固定し、ゆっくり歩き出した。
ミミィちゃんは恥ずかしそうに俯きながらも、上目遣いに俺を見ながら付いてくる。
「ノーバン今日は何をご馳走してくれるの?」
「高級店は知らないから行き付けのお店なんだけどいい?」
「この前テイビトさんとマエコちゃんと行った所?」
「あぁうん、分っちゃったか、俺のお勧めのお店なんだ」
「いいよミミィもあのお店は美味しいと思ったから」
喜んでくれるようだ良かった、プライドの高い子とかだと安いお店に連れて行っただけで機嫌を損ねるが、ミミィちゃんは良い子のようだ。大好きだ。
お店に着き店主と挨拶を交わし予約した席にミミィちゃんを案内した。
椅子を少し引きミミィちゃんを座らせ俺は向かいに座った。
「ミミィちゃん今日は特別メニューを頼んで有るんだ」
「特別なの?嬉しい、楽しみだね」
何だか「特別」って言葉が期待値を上げてしまったようだ、喜んで貰えるだろうか?
ミミィちゃんは猫人で魚好きだけど今日のメインからは外してるしドキドキだ。
店主が大きいお盆で一遍に持ってきた。出来る店主だ。
俺とミミィちゃんの料理は飲み物も含め全て同じ物だ。
店主は大きい厚手のナプキンも三枚づつ置き、首からと膝の上にかけ、もう一枚は口回り用でも替えにもとテーブルに置くよう説明してくれた。厳重だ。
料理がテーブルに並べられた。
「わぁ凄い!特別メニューだけ有るね、ありがとう」
「お礼を言うのは俺の方だよ、有難うねミミィちゃん」
あまり口に出しても気分を害するから「先週は慰められた」とは言わないが伝わるろう。
食事は楽しい気分で味わいたい。
料理のメインは肉厚のレアステーキだ三百グラム以上は有る、その周りに白身の焼き魚の身を一口づつに解した物を配してもらってある。
別の器に野菜サラダと温かいコンソメスープが用意され、ご飯は少しだけにしてある。
グラスにはティーレモネード、レモネードを作る時に水や炭酸水ではなく薄めの紅茶で作ってもらった。
「ミミィちゃんちゃん食べよう」
「「いただきます」」
しばし無言で味を楽しみながら食べた。いや美味しさに無言になってしまった。
「美味しいねノーバン」
「ああ旨い、誘った俺も驚いている」
「あははノーバンったら」
本当の事だ、俺も驚いた普段からこの店は旨いと思っていたが今日は手間隙掛けたようだ。
いつも、俺には有り合せで俺が急かすから手抜き料理でも旨いのだ。手間隙掛けるとこうなるのか。
「店主!ありがとう凄く旨いよ!」
「ありがとよ」
俺は素直に店主にお礼を言った。ミミィちゃんと楽しい一時が過ごせる。
「どれも美味しいけど特にお肉が美味しいし、焼き加減が最高だよノーバン」
「自信は無かったけど喜んで貰えて嬉しいよ、ミミィちゃんにはレアの方が好い気がして表面を強く焼いて内は肉々感が残るようにして貰ったんだ」
数日前に店主とメニューの事で散々揉めた、特に焼き加減で肉はしっかり焼かないと駄目だとか言われた、だが良い部位の熟成肉で厚焼きだ、焼き過ぎたら勿体無い。
俺の好みも有るが、ミミィちゃんの普段の好みや綺麗な歯が肉々しさを求めてる気がしたからレアにしてもらった。
「ミミィの好みを分ってくれてて嬉しいよノーバン」
「ミミィちゃんの綺麗な犬歯? には魚も良いけどレア肉も良いと思ったんだ、ミミィちゃんの可愛いく綺麗な歯も好きだよ」
「もぅ後で抓り一回だからねノーバン!」
何故だろう?何処が悪かったのか分らない。猫人に「犬歯」が悪かったのかな?「猫歯?」って言うのかな? 反省。
ミミィちゃんは顔を真っ赤にしている、それほど怒っているのだろうか?
その後、怒ったと思えないほどミミィちゃんの機嫌は良く、楽しく会話しながら食事をした。よほど料理が気に入ったのだろう。
食事も終わりティーレモネードをゆっくり飲んでいてふと思った。
「ミミィちゃんはラナキュランスの様だよね」
「えっ?! 急になに言い出すのノーバン」
「あ、いや今何となく思った事が声に出てた、ははは」
自分でも驚いた、声に出したつもりは無かったのだが、聞こえるくらいの声だったようだ。
「ラナキュランスの様ってどんな感じ?」
「ミミィちゃんはラナキュランスの花の様で、良い意味で華やかでとても魅力的なんだ、俺にとって」
「嬉しいけど恥ずかしいから抓り三回プラスだからね! ノーバン」
理不尽だ喜んでもらえたのに抓り三回とは、でも俺にとってはご褒美だ。
でも、それを言ったら本気で怒られそうだから言えない。その時は痛そうな顔をする。
ティーレモネードを飲みながら、ミミィちゃんと静かに見つめ合いながら時間まで、ゆっくり無言で過ごした。嫌な無言ではない、目で通じ合うかのような良い雰囲気の無言の空間だ。
「そろそろ行こうか」
「うん、ごちそうさま」
「店主、「ごちそうさま」」
店主に挨拶し勘定して、荷物に成るからと預けていた魔石を受け取り食事処を出た。
店をでて暫くして、ミミィちゃんに腕を強めに長く一回抓られた。
「ミミィちゃん痛い、何かしたっけ?」
「もぅ!忘れたの?食事中の事!、ノーバン、ミミィになら良いけど褒め言葉の後に『俺にとって』なんて言ったら駄目なんだからね!!」
すっかり忘れていた、言われて思い出したよ。ミミィちゃんに言うのは良いなら何故俺は抓られてるんだろう? 女心は分らない。
ミミィちゃんなら親しいから何言っても良いと言う事なんだろうけど。
「覚えてるけど冗談で言ってると思ってた」
「これで三回分ね、後一回残ってるのよ」
「そうだっけ?」
「もぅ!『バッチン!』これで許してあげる」
ミミィちゃんちゃんにお尻を強く叩かれた。お尻は叩かれるより叩く方が好きなんだが、ミミィちゃんに叩かれたと思うと少し痛気持ちいい。
叩かれた後も数秒お尻に手の感触を感じていたが、叩かれた痛みでそう感じただけかもしれない、ミミィちゃんが俺のお尻になんか興味あるはず無い。
スナックに戻る時にはスナックの客に会う可能性も有るから、手は繋がずただ並んで歩いてスナックに向かった。
「いらっしゃいノーバン」
「おはようママ」「おはよう御座いますママ」
お店のママが出迎えてくれて俺たちも挨拶をした。開店の二十分前位だ。
「「「ミミィ大丈夫?」」」
お店の女の子達がミミィちゃんに駆け寄り、皆して俺を蔑む様な目で見ながらミミィちゃんを連れ去ってしまった。ミミィちゃんを着替えさせるのだろう。
「ママ、カウンター内いいかい?」
「よろしくねノーバン」
俺はカウンターの中へ、色々な魔石の入った箱を一番奥へ置くと魔石の種類と数を書いた紙をママに渡す。
「これ税金分ね、他はいつも通りサービスで良いのよね?」
「あぁそれで頼む助かるよ」
お酒の魔石を納品している時にカウンターの一番左の席に少女が座って居るのが気に成っていた。見た目から十五、六だろうか? お店の子の妹か何かかな?
俺は左から二番目の定位置に座りたかったが、席が空いてるのに少女の隣に座るのも気が引けてカウンターの右端に座った。
少女と離れた席に座ったらママが小声で話しかけてきた。
「ノーバンあの子はノーバンのお客様なのよね」
「え?まだ開店前だよね?」
「そうなのよね」
「まぁいい話してみる」
「お願いねノーバン」
ママが了承しているなら時間前だろうと見成年だろうと平気だろう。
いや、少し話をして家に帰すつもりだ。少女だから送らなければならないか?
「こんばんは、お嬢様」
「ノーバンさんだね?」
「ええそうですノーバンです、お嬢様、遅い時間ですから家まで送りますね」
「いえ、今日は頼みがあって来た」
どうしたものか、話をしたら更に遅くなってしまう。
少女は艶の有る白紫の髪を後ろで一本に纏め、少しふっくらして項を隠すだけの長さだ。
髪は纏めているが全体的にふっくらしてる、柔らかそうで触ってみたい。
「家の方が心配します、今日は送りますから、後日改めてお話しましょう」
「いえ一人暮らしで家に心配する人は居ないよ」
え?っと思いママを見てしまった。ママは「な~に」と言わんばかりに首を傾げている。
少女が一人で暮らせるのか疑問も有るが服も肌も髪も綺麗だ。何か違和感がある。
お金持ちの子で別荘か何かでメイドでも居るのだろうか?
上半身は少しゆったり目の七部袖のシャツに薄めのジャケットで、下は厚手の膝丈のスカートでヒダは有ると言うより、自然に出来る感じだ、思わずカウンター下の足を見てしまった、服装から家柄を予想する事も大切だ。下心は無いと思う。
「家は何処かな? お嬢様」
「お嬢様でも無いし、依頼を受けてくれないなら家は教えられないよ」
いま一つ話がかみ合ってない様な気もするが、話を聞くまで帰る気が無いらしい。
薄い橙色の瞳で真っ直ぐ見つめながら答えてきた。目がクリクリしていて可愛い。小動物のようだ。
「そうだ、おじちゃんがチョコレートをあげるから、今日は帰ろうね」
「いや、うん? チョコレート?」
「そうチョコレート美味しいよ、家に帰ったらプレゼントするよ」
「いや欲しいが貰いたいのじゃなく自分で採りたい」
うん? 言ってる意味が分らない。欲しいならあげるのに。
「いやプレゼントだよチョコレートは只であげるから心配しないで」
「いや熊を倒したいのだ、それが依頼だ」
少女が何か言ってる、少女からしたら熊は二倍とはいかないが巨大に見える筈だ。
手や顔は少し日焼けしていて健康的で元気そうな子だが熊は危険だろう。
「もしかして、何かおじちゃんの噂を聞いてきたのかな?」
「ノーバンさん、もしかしてアタシの事を子供だと思ってないかい?」
「思っていますよ、お嬢様」
こんな可愛い少女でエルフでも無ければ子供としか思えないだろう
背伸びしたい年頃なのだろうが、夜の街は危険だ、送らねば。
「こう見えてアタシは大人だよ、お酒だって飲めるんだ」
「うん? グラスを少し良いかい」
まさかと思い少女の飲み物の香りを確かめてみた、お酒だ。ママを見た。
ママは目線を外して知らぬ顔をしている。
女性に歳を聞くのも、どうかと思うし対処法が思い浮かばない。
「ママ!」
「大丈夫よ、その子はノーバンが思っているほど子供じゃ無いのよね」
ママは何だか遠まわしな言い方をしたがお酒を出してる以上は大人なのだろう。
「何となく大人な事は理解した、童顔って事かな?」
「これだからエルフは……、また説明しなきゃ成らないじゃないか」
エルフ?俺が来る前にママと何か話をしたのだろうか?
「アタシはドワーフ種のシイだよ、ドワーフは幼く見えるだけで大人だ」
「え?ドワーフ? 髭は? 斧は? 逞しい体は? いや冗談だろ?」
ドワーフと言えば鉱山近くで武器を作る種族の筈だ。
鉱石を掘ったり武器を作る為に逞しい筈だ。
「どんなイメージを持っている? ドワーフは幼く見えるだけで人間と変わらないよ」
「初めて見た……かも、見ても気が付かなかっただけかもだけど……」
「そこのエルフには話したんだよ二度手間だ、エルフのせいだよ」
「ママ」
「あら、ごめんなさいなのよね」
何となく種族的にエルフとドワーフは仲が悪いのだろうか?
「噂を聞いて依頼に来たなら報酬の事も聞いた筈だ、帰った方が良い」
「報酬は女の体だろ、何か問題でもあるのか?」
いやいや問題だらけだろう、見た目が少女だ俺を犯罪者にするつもりか。
熊がどうとか言ってたしまた、五階層へ行きたいとかの話しだろう。
「自分の事を大切にした方が良い、可憐な花を散らす事も無い」
「可憐かどうかは分らんが、アタシの体じゃ不満かい?」
「そんなことは無いシイの体を好きにして良いと言うなら、どんな依頼でも受けよう、だが君が後悔するだろう」
大人だと言っていたし「好きにして良い」と言う言葉の意味は伝わる筈だ。
「なら交渉成立だ、一緒に四階層のボスを倒しに行って貰おうか」
「たった其れだけの為に子供が出来たらどうする?」
好きにするの意味が伝わっていなかったのか?
だが話の流れから、俺が条件を出して、シイが条件を飲む形に成った。受けるしかない状況だ。頑張りとか覚悟とか報酬とかの問題ではなくなった。
「種族が違うから子は出来ないだろうし、出来てもアタシ一人で育てるから迷惑は掛けない」
「それがシイの覚悟か?」
「どうだろうな。アタシは自分の武器で熊が叩ければそれで良い」
何か変な回答が返ってきた。「叩ければそれで良い」とは逆にそれ以外はどうでも良い様な言い方だな。
「武器とは何を使って熊を叩くんだ?」
「自分で作った両手剣と刀と槍の三種類だから、三日間で三回は倒したい」
なるほど少し分った。自分の作った武器を試したいと、だがスライムでは物足りないから熊を相手に試したいのだろう。
「話は分ったがダンジョンに入った事は有るか?」
「心配無い。熊を叩きに三回ほど挑んだが、一撃も入れられず、防戦だけで逃げ帰った」
なるほど自分でも頑張ったが一人では不可能だったと、これで覚悟、頑張り、報酬の全てが揃った。
「分った、その依頼受けよう」
「ありがとう助かる」
話し方は確かに大人なんだよな、でも見た目が少女だ。しかも可憐だ。
「依頼は何時から始めようか?」
「早ければ早いほど良い」
「では明日からで、報酬は日払いで良いか?」
「それでかまわないよ」
「明日の午前十時にダンジョン入り口の受付で待ち合わせよう」
「わかったよ、よろしく頼むよ」
あっさり報酬の話も受け入れているが良いのだろうか?
「ママちょっとシイを送ってから、また戻ってくる」
「はい、シイちゃん送り狼には気をつけるのよね」
「アタシの方は報酬の前払いと思えば問題ないよ」
ママはからかっているのか変な事を言っているが、シイもまた変な回答を返している。
少しシイの未来が不安になってきた。男と言うものを教えなくては、変な意味ではなく。
面白いと思って頂けたら下の☆を押して頂けると創作意欲に繋がります。
宜しくお願いします。




