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破骨

皆様の応援が書く力に成ります。

 アールヴの心無い言葉に肩を落としつつ、家の門を潜り玄関を開けた。

 居間に上がり眩しい光を和らげてからアールヴを誘う。

 アールヴが座るのを待ち、お茶と治療の下準備を始めた。

 すでに一度見せている為、隠す必要もなく気を使わなくて良い。


 今日は胸と同じ触り心地と言われる二の腕か? それとも未だ見せぬ色っぽいであろう足か? どちらからでも俺の幸せは変わらない。

 そう思い軽い気持ちで聞いた俺に対してアールヴの返しは……。


「今日は二の腕か? それとも足が良いか?」

「……背中を診てほしいのよね」

「は、背中?」

「ええ、お願いなのよね」

 少し恥ずかしそうにアールヴが言うも、俺は大分驚いた……が遅いか早いかの違いか? 何時かは診なければいけない訳だし背中の治療は早い方が良い。


 俺はアールヴの服を脱がせた、いや手伝いたかったが言葉だけの指示だ。

 だが今日のアールヴは上着だけじゃぁ無い! 肌着まで脱ぎ始めている。涎ものだ。

 欲を言えば俺の方を向いたまま脱いで欲しかったが、艶っぽい背中で我慢しよう。

 見ているだけで今にも良い香りが漂って来そうな背中だ。


 自分の胸元に脱いだ服を抱えるアールヴ、その背中に静かに近づく。


「少し触るが良いか?」

「ぇ、ええ」

 緊張して手が震えてる、そう俺の手が震えているのだ。

 うら若き女性の背中、それは採りたてのトマトの様に瑞々しい。

 肌に優しく触れればツルツル滑々、それでいて指を押し返す弾力。

 頬を背中に当てても良いだろうか? それとも舐めてみるか? 診察だと言えば許されるのではないだろうか? いや今は我慢だ、この先にも二の腕や膝下や腿の診察だって待っている、今アールヴに逃られる訳にはいかない。


 魅力的な背中に手を這わせ、背中に回された下着の紐の下に手を滑り込ませた。

「キャッ!」

「ただの診察だ、下着を脱がせたりはしないから安心してくれ」


 一瞬、俺の方がビックリした! 触診中に声を上げられるとは思ってもみなかった。

 その後も肩甲骨を撫で回し、背骨をの節を数える様に指を這わせ丁寧に滑らせてゆく。

 滑らかな肌の中、僅かに隆起する肋骨に触れて脇の下まで手を滑らせれば、アールヴは身を捩り、その曲線が何とも美しい。


 アールヴの体を十分に楽し――診察して理解を深めた所で治療に入る。

 背中はジックリと時間を掛けて治療しようと思う、俺の幸せな時間の為に――もだが、細身の女性の背中とは言え腕とは比較に成らないほどの広さが有る、そして何より病気の状態もある、それこそアールヴが二の腕や足よりも背中を優先させた理由だろう。


 皮膚線維腫と言っても皮膚にしか影響を及ぼさないわけじゃあない、骨の近くに発祥すれば骨にすら浸潤してゆく、腕にも手首等の骨と皮膚の近い部分も、そして足にも有るが、脊髄を伴う背骨ほど重要な部位ではない。

 そして肋骨や肩甲骨と皮膚に極めて近い部分に多くの骨が存在するのも背中だ。

 当然、骨周辺は念入りに触診し、病状の確認をしたし抜かりは無い。


 だが、色々と俺の予想を超えていた、アールヴの突然な要求から急遽背中を診る事になり、そして病状もだ、若いからこそ進行の早い病気も有ると言う事か?

 一度自分の部屋に戻り、先日鼬の魔物を倒して手に入れた土の魔石を持って来てから自分の手に魔方陣を書き始めた。

 今日は大きな三角形の各頂点に水と音と土を描き、中心に命を円で囲む様な魔方陣を書いた。


 音と命の何方を中心にするか迷いはしたが、音の魔石で破骨をするのは痛みと危険が大きいと思い、音の魔石は補助とし病気が浸潤されてしまった骨は破骨細胞を促す事で時間を掛けて丁寧に処置しようと判断した。そう、時間を掛けて……ふふふ。


 そして破骨細胞により失われる骨の修復に必要な鉄分やカルシュウムを補う為、今日は土の魔石も魔方陣に組み込んだ。とても命の魔石に含まれる物だけでは足りないだろう。

 当然の如く昨日と違う魔石を見たアールヴから質問を受け、土の魔石の説明すれば「やはりなのよね」と、自分の病気の進行度合いを理解していたと思わせる言葉を漏らしていた。そして一瞬、重く暗くなる空気。


「安心して良い、俺が治してやる」

「お願い……なのよね……」

 俺の言葉に対して、今にも泣きそうな、それでいて縋る様なか細い声でアールヴは「お願い」と言ってくる、これは「治さない訳にはいかない」と意気込みを新たにした。


 何度も左手で患部を確認しながら右手を翳して治療するも、骨への浸潤深度が見えてこない、見える筈が無い、如何したものか? 皮膚や肉と違い骨への進行速度は比較的遅いと思うが取り残しは文字道り命取りに成ってしまう、かと言って骨を削り過ぎて重要な器官に傷つける事も命取りだ。

 アールヴの神経を削らない様にと、自分の神経を擦り減らしながら治療を続ける。

 ほんの一時間が何十時間にも感じられ、後半はアールヴの肌を楽しむ余裕すら無かった。


「ふぅ、今日の治療は終わりだ」

「本当に有難うなのよね」

 あぁ、その一言だけで疲れきった俺の心が癒される。

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