子供は褒めて伸ばす?
静かな時の中で本を読む、本には少女の体について詳しく書かれている、時間を忘れるほどに集中し読んでいた。
本を夢中に成って読んでいると窓際に座る少女が立ち上がり、それに伴い本の上を掠れた影がユラリと踊る。
慌てて顔を上げて横を見れば、少女は椅子を戻していた。
椅子を綺麗に揃えた少女は、半歩踏み出した所で俺と目が合い、笑顔で軽く手を振ってくれる。
つられて俺も手を振り返――右手では体を捻ないと掌を少女に向けられない、慌てて本を右手に持ち替え、左手を胸の前に回し自分の笑顔の横で手を振った。
何をやっているんだ俺は! また碌に話もせずに見送ってしまった。
これで何度目だろう?
いまだに名前すら知らない少女、次こそは身長や体重に体の各寸法を聞きいてみたいものだ。
少女を見送った後にそろそろお昼なんだと気付き、俺も席を立ち本を棚に戻して図書館を後にする。
その足で冒険者ギルドのゲートを抜けて、何時もの食事処へと向かった。
適当な席に座って料理を頼んで、しばしの間お茶を飲んで待つ。
料理を持って来た店主は、料理だけではなく余計な一言まで置いてゆく
「ノーバン、女連れの時は出入り口近くに座れ」
「今日は一人だが?」
何を言ってるんだ店主は、俺の近くに女性の霊でも見えてるのだろうか?
「昨日の夕方だ、皆がお前に飛び掛りそうな目で睨んで居たんだぞ!」
「俺を睨んだところで女にもてる訳でもないだろうに、暇な奴らだ」
昨日の事を今日言うのか? 昨日は俺がさっさと店を出てしまったからか。
「大丈夫だ人は睨まれた位じゃ死にはしない」
「だと良いがな! 喧嘩するなら外でやるんだぞ店が潰れる」
「相手に言ってくれ、俺は喧嘩を売ったりはしない」
「お前のその態度が喧嘩を売っているんだがな」
店主のお小言を聞いた後だが料理の味は何時もと変わらず旨い、安心した。
昼食を食べて再びダンジョンへと戻って来た。
今度は装備を整え四階層へと下りて東に向かう。
確か子供達の情報だと「四階層の東を狩場にしている背の高い男の子がボスに挑む仲間を集めてる」だったか。
それらしい子供を捜し歩きながらボス部屋の近くまで行けば、俺の周りに子供が集まって来た。
「「「ノーバン」」」
「おう、ガキ共、元気そうだな」
そして何時もの様にチョコレートを餌に話しかける。
「チョコが欲しい子は居るか?」
「「「「はい、は~い!!」」」」
所詮は子供だ、すぐ餌に食いつく。
子供達と話をしてみれば「先日、ギルドの大人に話しかけられた」と言っていた、一応俺の進言にギルド長も動いていてくれたらしい……が、子供達の話には続きが有り「胡散臭いから誰も話さず逃げてしまった」と……。役に立たん奴らだ。
四階層のボス熊を倒し子供達にチョコを渡して、ボスが復活する間に背の高い男の子に稽古を付ける。
勿論、他の子も集まって来るから、順番に剣筋を見てゆく、そして装備も見てやるが剣や盾を持つ子供は居ない。本番まで温存らしい。
ボスを狙うだけあって皆、剣筋はまぁまぁで力も走る速度も十分と言った所だろう、成長した部分や良くなった所を少し褒めて、弱い部分や足りない所を指摘する、褒め三割に指摘が七割と言った所か。
子供は褒めて伸ばすのが良いと言うが、ここはダンジョン、調子に乗れば死に直結する、褒めてばかりじゃ育つ前に死ぬのが落ちだ。
一通り子供達の動きを見た後、手持ちの短槍を持たせて振らせて見た。
短槍でも大人用ともなれば子供には相当重たい筈……だが良い音を立てて振っている、中々見込みが有りそうなのでボス討伐の際は俺も付き合うと、約束をして別れた。
そしてもう一ヶ所「北では太った子がボス部屋を覗いたらしい」と聞いていたので、そちらも見て回ったが、まだまだボスに挑める力量ではなかったので、厳しい稽古を付けた後でキツク脅しを掛けておいた、もしかしたら嫌われただろうか?
子供達の中には女の子も数人居たが、今日は少ししか話をしてない、女の子と長く話せば、つい甘くなってしまう、その甘さのせいでボスに挑まれても困る。本当は男の子よりも未来の美女と多く話したいのに、ままならないものだ。
子供達と別れて安全地帯に戻った、まだ夕方前と言うには早過ぎるが、昨日はアールヴを待たせてしまった、まさかとは思うが今日は早くに切り上げ家路についた。
どうやら早くに切り上げて正解だった様だ、途中でアールヴに出逢う。
「早いなアールヴ」
「そうかしら?」
出会えた事の喜びと驚きに、思った事を口に出してみたが、何とも素っ気無いアールヴの返し。
少し冗談めかし、ニヤリと口角を上げて早く来た理由を間接的に聞いてみる。
「そんなに俺に会いたかったのか?」
「早く治療をしてほしいだけなのよね」
分っていた……が「お店に居る時の様な御世辞は無いのか?」っと思ってしまう。少し冷たいんじゃないだろうか? それも照れ隠しとかなら少しは救いも有るが、その様にも見えない所が残念だ。
自然と肩も頭も、そして気持ちさえも下がってしまった、はぁ。




