脱衣姿
ダンジョンに入り一人で狩をして戻る俺を待っていたアールヴ、そして綺麗な足元、いやアールヴの足は服で見えていない、アールヴの周囲だけ地面が綺麗に成っていた。
申し訳ない気持ちと自己嫌悪、こんなに美しい女性を待たせるなんて俺は馬鹿か。
挨拶を済ませ急いで門を潜り玄関を開け――振り向くと、そこにはアールヴの顔が有る、が目は赤く少し腫れている様に見える、寝不足か?
そしてアールヴを居間へと上げて、お茶の準備をする。
お湯が沸くまでに、「昨日の治療は痛かったか?」とか「帰った後、発熱は無かったか?」と「今日の体調は?」等、確認の意味も含め、少し緊張を解す為に話しかけた。
そしてアールヴの答えは「治療も我慢出来ない程ではない」と「発熱も無く、体調も良い」との事だが、「我慢出来ない程じゃない」とは「かなり痛い」と言う事だろう、治療の痛みは体の内側から走るから、とても痛い事がある。
アールヴさえ良いと言えば、何時でもお酒を出せる様に準備だけはしておいた方が良いだろう、飲み難ければ少し強引に、口移しで飲ませたって良い。どうせ家の中は二人きりだ……ふっふふふ。
アールヴの少し薄い唇に、情の厚さは感じられないが、コスモスの花の様に可憐で美しく、見ているだけで唇が――いや、心が引き寄せられてしまう。
アールヴの唇を見詰めながら少し考え事をしていると、お湯の沸く音で、妄想の世界から現実に引き戻された。
俺は台所へ行くと枇杷のお茶を淹れ、余ったお湯でタオルを濡らすと、爪を立てて熱さを凌ぎながら、いや凌ぎきれてはいないのだが、そこは根性で何とかタオルを絞った。
居間に戻ると自分の前にはお茶を、そしてアールヴの前にはお茶とタオルを差し出す。
「どうぞ」
「ぁ、ありがとうなのよね」
アールヴは「ありがとう」と良いながら首を傾げている。
そしてタオルで手を軽く拭くと置いてしまいそうになる。
「目にゴミでも入ったんじゃないか? 赤くなってるぞ」
「ぇっ、 ぁりがとうなのょね」
アールヴは顔に手を当てた後、恥ずかしそうにタオルで自分の顔を拭い目閉じ? 瞼の上にタオルを当てた。
タオルを目に当てる為か少し上を向いたアールヴからは、新緑色の少し長い髪が藤の花の様に垂れ下がり何とも美しく艶かしい。
アールヴがタオル置くまで髪や首筋に見惚れていただろうか、そしてタオルが折り返されて置かれると視線はアールヴに、そして置かれたタオルへ自然と向かう。
アールヴの顔も気に成ったが、もっと大切なのはタオルの方だ、アールヴが帰った後、あのタオルで俺の顔も拭かせて貰おう。
二人で静かにお茶をすすり、一息ついてから治療を始める。
「今日は左腕の治療をしよう」
「ええ、お願いなのよね」
アールヴは「お願い」と言いながら申し訳なさそうに小さく頭を下げた。
治療とは言えアールヴの体に触れるのだ、俺にとって幸せ以外の何者でもない、申し訳なく思わなくても良いのに。
アールヴが左腕の袖を捲り始めたので声を掛ける。
「悪いが上着は脱いでくれるか?!」
「ぇぇ……そう言うのなら、」
俺は疑問系ながらも語尾を強める事で強制する様に「脱いでくれと」言い放った。
アールヴにも俺の強い意志が伝わったのか、不安とも不思議とも疑問とも思える顔をしながらも納得してくれた。
昨日の治療が肘より先だけだった、当然今日も肘から先の治療だと思うだろう、その通りなのだ……が、アールヴの脱衣姿も見たいし白い二の腕を見ながら治療をしたい。
そして今日は薄くて白いスケスケの肌着かもしれない、っと思う期待が無い訳でもない。
アールヴが上着の袖の紐を解き胸の釦に手を掛ければ、俺の体は自然と引き寄せられて前屈みに、そして目はアールヴの指先に釘付けに成ってしまう。
そんな俺の顔をアールヴは見詰め返して来たと思ったら――背を向けてしまう。
少し惜しい気もするが、それはそれで良い、今度は更に近付きアールヴの項を、そして上着を滑り落ちさせる肩に見入ってしまう。
やはりアールヴは美しい。
美しい後姿に見惚れている俺、そしてアールヴが向き直り――驚いた様に「ヒャッ!」っと言って体を仰け反らせた。
いや、実際に驚いたのだろう、俺も驚いたのだから。
無意識の内に体が前へ前へと出ていた様で、振り向いたアールヴの顔が凄く近かった。いっその事、唇が触れるほど近付いておけば良かったと思うほどだ。
アールヴは少し身を引いて距離をとり、服を畳んで脇に置いた。
そして俺と目が合うと、恐る恐ると言った感じに、ゆっくりと左手を差し伸ばして来た。
その手を取り、治療を始めようとして気付く、あれ? 何の準備もしていなかった。
アールヴが服を脱いでいる間に準備をするべきだったか? いや、そんな事は無い、俺がアールヴの脱衣姿を見逃すとか意味が分らない。絶対に見逃す筈が無い。
「ぇ……っと、りあえず診察から始める」
「……そうなのょね?」
俺は苦しい言い訳とも取れる事を言いつつ診察を始めた。




