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第百三十話、斬馬刀

 馬の魔物に囲まれながら自分の油断を()いる。


 だが、手に持つ斬馬刀の名前は伊達(ダテ)じゃない! 馬の足より長い柄に、厚く硬い筋肉をも切裂く丈夫で切れ味の良い刃、馬を相手にしても折れも曲がりもしない頑丈な造り。(たよ)りになる相棒だ。


 斬馬刀と言うと大きな両手剣だと勘違いする冒険者も少なくないが、斬馬刀とは薙刀(なぎなた)を頑丈にした様な物に近い。

 だが頑丈にした分、重さが増して女性に使い難く(にく・がた)なってしまったのは難点だ。


 狙うは大きな目や内臓の詰まった腹と言った致命傷になる部分と、足の(ケン)等の足を奪う箇所。

 肩から胸、背中に太腿(ふともも)と尻にかけて筋肉の多い部分は硬く、いくら斬馬刀が斬れるとは言え俺の体力が持たない、的確に急所を狙うが、それはそれで集中力が必要だ。楽には倒されてくれそうにない。


 何とか十数頭のポニーを倒して音の魔石を手に入れたが、もう少し狩をして行くとする。

 その後、四百kg以上もある普通に大きな馬を相手にしたが、的が大きい分は戦い易いとも言える。

 だがポニーより動きは早く足が長い為に攻撃範囲も広い、特に後ろ足の蹴りは一歩分も伸びて来る感覚に襲われるほど射程がつかみ難い。

 必然的に俺は集中を余儀なくされ精神を削られる、戦闘が終わり完全に気を抜いてしまう。「ふぅ」


 今日は集中力の使いすぎか? 少し気を抜く位なら兎も角(ともかく)、完全に気を抜くなどダンジョンの中では有り得ないほど危険な行為だ。

 判断力が低下しているのかもしれない、時間的余裕は有るが戻る事にした。


 地上一階の施設に戻り、装備を外して俺も汗を洗い流し着替え直した。

 それでもまだアールヴより早いだろう、確認しながら今日の戦利品である命の魔石と音の魔石の入った革袋を手荷持つ。

 それから昨日イノシシを倒して手に入れた水の魔石と、個人的な在庫の光の魔石も少し持ってロッカールームを出た。


 手に持った以外にも、今日は火と風の魔石も手に入れているが、それはロッカーに置いて来た、外に持ち出すには高い税が掛かる、一応アールヴに聞いてみたが「命の魔石にしか興味が無い」との事だ、でも俺だけが得をしている訳じゃない、俺とてアールヴに食事も(おご)るし同伴出勤分のお金も出している、持ちつ持たれつと言ったところだ。


 ロッカールームから出た俺は、ダンジョン施設から冒険者ギルドへと続く広い通路にてアールヴを待つ。

 ダンジョンの出入りには必ず通るココなら、行き違う事が無い。

 待ち合わせと言うよりは、待ち伏せしている様に見えなくも無いが、人の目や(うわさ)を気にしたら負けだ。


 何かを考えるでもなく考えて居ると、アールヴが(うつむ)いたまま歩いてくる。元気が無さそうだが何か有ったのだろうか? いや! 俺への報酬の事でも考えているのだろう。 そうなら下手に聞かない方が良いな、今は余計な事は言わず最小限の言葉にしよう。


「アールヴは良い香りがするな」あっ!

「…………」

 余計な事は言わないと決めたそばから言ってしまったせいか? やはりアールヴの反応がおかしい、これ以上刺激しないようにしなければ。


「いや何でも無い……あっ! そうだ、ギルド長が待ってるんだった、早く行こう」

「ぇっぇぇ……」

 俯いていて目線すら合わせてくれないし返事する声も小さく、やはりと言うか元気が無い気がする。

 少し不安になり手を差し伸べるもアールヴは首を振って歩き出し、俺は仕方なく見守るようにして後を付いて行く。


 冒険者ギルドに着くとアールヴは立ち止まって振り返る。

 それを見て俺は一つ(うなず)くと、ギルドの受付で「ギルド長に用がある」と伝えた……あっ、自分の名前を言い忘れたが良いのか?

 俺の心配を余所(よそ)にギルド長は直ぐに顔を出して手招きしてくる。


 俺とアールヴはギルド長の後を追い、階段を上ってギルド長室へ。

 俺達が席に着くと、待ってたかのようにお茶が出された。

 俺一人の時はお茶も出さずにお小言が飛び出して来ると言うのに、若い女性が居ると()れか? それとも命の魔石の為の機嫌取りか? まぁどっちでも良いや。

 部屋が俺達三人に成るとギルド長が俯いたままのアールヴを(のぞき)き込む。嫌な予感しかしない、『頼むから今のアールヴに話しかけないで欲しい』っと俺が目で(うった)えるも通じなかったようだ。


「ノーバンに何かされたのか?」

「そ、そんな事じゃ無いのよね…………」

 俺はギルド長の余計な一言に、革袋を持って(わず)かに腰を浮かせて「キッ」と(にら)む。

 今度は流石に言いたい事が「魔石は要らないのか?」と言わなくとも通じたらしく、ギルド長はアールヴに(手の平)を向けた。

 アールヴは何かを言おうとしてギルド長の方へ向けた視線を、掌で(さえぎ)られ、再び視線を落とす。


 今はそれで良い、そう思いもするがアールヴの言った「そんな事じゃ」と言う言葉が何と無く引っかかる。

「何かされたか?」ではなく「此れからされる?」かも知れない訳だが、重さ的に違うのだろうか? 「された」にしろ「される」にしろ「そんな事」で済むだろうか? もっと重要な事が有る様な言い方だ。


 今はアールヴの想いを考えを知る事は出来ないが、先にギルド長との用事を済ませ、アールヴと二人きりに成れる場所でゆっくり話そう。

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