小麦色の少女
子供達から有益な情報を得たら、そろそろお昼だ、皆で安全地帯へ帰る事にする。
帰り道は子供達の狩を見ながら、話の出来てなかった子と話す。
数人の女の子が子供達内輪の話をしてくれ「四階層の東を狩場にしている背の高い男の子がボスに挑む仲間を集めてる」とか「北では太った子がボス部屋を覗いたらしい」と他にもボスの熊に挑もうとしている子の情報を教えてくれる。
本当に子供達の情報網は侮れない。
帰り道に狩をする子供達は上手く連係が取れて良い動きだ、俺の教えた事を理解し自分達の物にしている。
大人もだが子供達は特に、連係と言う物を教えないとスライム等の魔物を見つければ我先にと攻撃を仕掛けてしまう。
スライムだって自分の近に居る仲間が人に襲われれば、集まり逆に人を襲う。
一匹のスライムに襲い掛かれば、逆に集まったスライムから猛襲を受ける。
それでも一、二階層のスライムが相手なら逃げ出せるだろうが、四階層のスライムともなれば難しい、動けなくなるまで攻撃を受けてしまう。
これが大人の領域である五階層以降なら、命が絶たれるまで攻撃される事になるだろう。
俺が教えた連係は簡単で、先ずは役割分担、周りを見て索敵する者、石を投げて隠れたスライムを誘き出したり牽制する者、待ち構え近付いて来たスライムを木の棒で迎え撃つ者、そして皆を纏め判断し指示を出す者。
それ以外にも魔物を倒し得られた魔石はPTで等分する事も教えた。
言う事を聞かないハミ出し者は居るかも知れないが、子供達の中で一つの決まりとして引き継がれて行くと思う。
何度も戦闘を見ながら安全地帯へと戻り、子供達に「ボスと戦う時は家族の許可を得る事」と「四階層ボスより五階層の魔物の方が恐ろしい」と注意を促し手を振って別れる。
親兄弟に内緒で子供達だけでボスに挑まれる事が一番怖いが、言う事は言った。
成長してその時が来ればボス狩りの相談を受けた家族が付き添う筈だ。
今日会った子供の多くと話が出来た、男の子も女の子もだ、だが一人だけ少し色黒で細身の可愛い少女と話が出来ていない。
その子は少し変わった子で、良く本を読み口数が少ない大人しめな子なのだが、フィールドを歩けば皆の先頭に立ち木の棒で魔物を迎え撃つ元気な女の子だ。
本を読んでる所を見掛けたのはダンジョン施設の地上二階部分の図書館で、文字の読み書きが出来ない人が多い中で本を読む子供なんて珍しいと思った。
図書館で絵本の絵を見に来る子供は居るが、文字ばかりの本を開いて居る子を見たのは初めてだ。見た目では分らないが良い所のお嬢様だろうか?
でもフィールドで会えば木の棒でスライムを倒す元気の良い女の子で、とてもお嬢様とは言えない姿をしている。
肌の色は日に焼けた様な黄金に輝く小麦色、髪は肌より濃い茶系色、綺麗な真っ直ぐで長い髪を緩く背中に纏めてる、目は細く黒に近い焦げ茶色の瞳をしていて、首が少し長く更に美しい細身を際立たせている。
今日は光沢の無い黒い服を着ていて、光が当たれば表面の細毛により白へと色を見せ、光の遮られた部分はより一層の黒へと色を変えて体の線を浮き彫りにさせている。
少女の体の線は細く手足も細い、だが小さなイチゴを隠し持っているかの様に胸の下に微かな影を作り出す。
細い体の中に唯一肉付きが良さそうなのはお尻の辺りか? 曲線の美しい茄子を逆さに腰下から二つ突き出させ、滑らかな線が太腿へとスベリ落ちてゆく。
結局、美しい姿に見惚れていただけで何も出来ずにいた。
子供相手に照れて話し掛けられなかった訳じゃないし、何かを意識している事も無い、ただ距離と間が合わなかっただけだ。……そう思う事にした。
その美しい少女に避けられてるなんて事は無いと思いたい、何度かチラチラと目線は合っていたのだから。
子供達と別れてからエレベーターに乗る、一緒に乗っても良いのだが、子供達と一緒に地上階の人が多い所まで出れば、また噂が増えるだけだ、少しは注意しないとな。
地上一階のダンジョン施設に戻り、ロッカーへ武器だけを仕舞い外に出た。
まだアールヴとの待ち合わせ時間に余裕は有るが、急いで昼食を食べに行く。
今日は少し高いが冒険者ギルドから近いお店で昼食を摂る。
客は多いが味は微妙な所だ、何時もの食事処が如何に美味しいかが分る。
どうもギルド近くのお店は、味よりも量と立地で勝負しているようで、客の入りと味が一致してない。
たいして美味しく無い料理を味わう事無く作業的に食べて、急いでダンジョンへ戻った。
自分のロッカーから武器を取り出し八十九階層へ下りれば、すでにアールヴが待ち構えている。
「おはよう、アールヴ」
「おはよう、ノーバンさん」
俺が遅刻した訳じゃない、昨日今日はアールヴの本業が休みだから早くに来たのだろう。
今日もアールヴと楽しいデート……、いや階層攻略に行こう。




