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怒ったアールヴ

 アールヴの了承を得た上で真っ直ぐ林を抜けて安全地帯に戻ったわけだが、何故か苛立ち顔で苦言を呈される事に成るとは……。


「ノーバンさん!」

「はひぃっ!」

 アールヴの怒気に気圧されて変な声が出てしまう。大分御立腹の様だ。


「林を抜けてくるより草原を歩いた方が早かったのよね、多分」

「悪い悪い、林を抜けた方が近道だと思ったんだ」

 林の中で魔物に()()()()からと言って怒らないでほしい、なにせ此処はダンジョンの中で、しかもアールヴも了承したのだから。


「もう!」

「……」

 二言三言お怒りの言葉を頂いたが俺が気落ちを装い(よそお)黙ってしまうと、苦言以上の文句は言って来なかった。

 少し怒らせてしまったが、その甲斐あって安全地帯に戻る頃にはアールヴの動きも軽くなり、八十八階層の魔物であるウリ坊に対しても、矢が刺さり攻撃が通るまで成った。

 これで明日からの階層攻略に少しは安心が持てる。

 完全なお荷物を抱えて攻略するのと、自分の身を守れて少なりとも戦える者と一緒に攻略するでは大分違う。


 ボス部屋からの帰り道、数え切れない程の魔物を狩った俺はとても疲れた。

「アールヴ、少し早いが今日は終わりにしよう」

「…………」


 まだ怒っている様で少し(ほほ)が膨らんでいるのが見て取れる。

 それでも言っている事は理解してくれた様で、一緒にエレベーターに乗り地上まで戻って来た。

 地上のダンジョン施設内にあるシャワーを浴びて再びアールヴと待ち合わせる。


 今日はアールヴの勤めるお店が休みで同伴出勤も無い、故にそのまま別れても良かったのだが、ダンジョンの施設内や冒険者ギルドを出るまでは男が多く、そんな中を若い女性一人で歩かせる訳にも行くまい。……と言うのは建前(たてまえ)で本音を言えば少しでも長くアールヴと一緒に居たいと思うチョッとした下心だ。


 だがアールヴはまだ怒っている様だし少し機嫌を直して貰いたい、それには美味しい食事か? いつもは同伴出勤と言う理由が有るから良いものの、今日はその理由も無い、どうにか上手く誘えれば良いのだが……何か食事に誘う理由か?


 逆の立場ならアールヴに「食事の後に私も食べて」なんて言われれば二つ返事で付いて行くのだが、同じ様に俺がアールヴを誘ったら? 絶対に有り得無いな。

 色々と考えてみたが、誘い文句の一つも思い浮かばない内に待ち合わせた場所にアールヴが来てしまった。


 取り合えずダンジョン出口の魔石検査ゲートを通る、このゲートは魔石を隠し持ち税金を払わずに持ち出す事が出来ない様にする為の物だ。

 そしてゲートを潜った後に、今一度武器や魔石の持ち物検査がある。

 持ち物検査では主に武器を持ったまま町を歩かせない為の物で、町の中では兵士や鍛冶師等、特別な許可を得た者以外の武器の携帯は禁止されている。

 第三者が持ち物検査をしないと、武器を携帯したまま町に出てしまう者が多いらしいから少し手間だが仕方ない。


 アールヴより先に持ち物検査を終えた俺は、今朝ほどギルド長に言われた事を思い出す。今日はアールヴの仕事も無いし丁度良い、誘ってみるか。

 冒険者ギルドの受付に「ギルド長に話がある」と「ノーバンだと言えば分る」と言い呼んでもらう事にした。

 だがギルド長が来る前にアールヴの持ち物検査が先に終わってしまう。


「アールヴ、少し待ってくれるか?」

「平気、よ! 一人で帰れるのょ、ね!」

 アールヴは鼻の上にシワを刻み言い方に少々(とげ)が有る、俺は半歩引いてしまうが、このまま別れたら明日も顔を合わせ難い。


「いや、俺は良いんだが冒険者ギルドの長がアールヴに話が有るそうだ」

「……何も悪い事なんてしてないのよね」

 ギルド長からの用件だと言われて少しは怒りの熱が冷えたのか? 鼻の上のシワと棘々しさが少しは消えた。

 それからしばらく話をして時間稼ぎだ「長に成るだけあって信用も有るし悪い奴じゃない」と「下手に怒らせてギルドカードを没収されたらダンジョンに入れなくなる」と「アールヴの事を心配していた」と……そしてやっと来た。遅いんだよ!


「待たせたなノーバン」

「ああ」

 本当に待たされた、少しイラッとしながら足早にその場を後にする、少々怒ってはいても若くて美人のアールヴと立ち話をしていた為に周りの視線が痛く、その上ギルド長まで来れば冒険者の目を引かない筈が無い。さっさと立ち去る。


 冒険者ギルドを慌てて出て来たが、ギルド長が俺の話を素直に信じるだろうか?

 そう思い渡世人の居る事務所に向かった。渡世人のボスにも話が有るし丁度良い。


「ボスが居たら呼んで欲しいんだが」

「呼んで来るから待っててくれ」

 そう言い残し一人の男が奥へと走り去る。

 待つか待たなかの間に渡世人のボスが顔を出す。


「悪い、冒険者ギルド長から話が有るそうだ」

「そうか?」

 俺の後ろにギルド長が立ってるしアールヴの事も目に映っているだろう、ギルド長からの話だと言っても疑う事無く渡世人のボスは頷いてくれた。


 後ろから小声で「俺はノーバンに話が有るんだ」と聞こえたが今は無視だ。

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