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ギルドカードの没収

 準備を整えた俺とアールヴは、八十六階層のボス部屋に足を踏み入れた。


 部屋の中は、若干意味合いは違えど四角四面で五十m四方の広さ、そして足元には毛足の短い草原が広がっている。

 俺とボスの目が合い、ボスは牙を剥き出しにして、ゆっくり歩き始めた。


 ボスは猿と熊を合わせた顔に犬の鼻、狸の様な体に強靭で大きな爪と牙、どう見てもイタチで無いだろう魔物、確かグズリとか言ったか。

 俺は様子を伺い、アールヴと距離を取る様に離れ、ボスを威嚇(いかく)する。


 俺とアールヴの距離は二十m以上離れ、俺とグズリの間が十m程に詰まった時、急にグズリが走り加速して来る。

 近付くグズリの体が徐々に大きくなる、いや大きさは変わらない筈だか、そう見えた。

 距離が約五mまでになり、その大きさが分る、一m五十cm以上は有るだろう、人と変らない大きさに、狸の様な体格、そして大きな爪と牙、恐怖を感じ更に大きく見える。


 如何避けるか迷う俺をよそに、アールヴの放った矢がグズリの腹部に当たった。

 白い霧とともにグズリの動きが一瞬だが遅くなり、俺はグズリの突進を避けて位置を入れ替える。どうやら氷の魔石付きの矢を使ったらしい。

 グズリは一瞬、アールヴに目を向けたが俺に向き直り、俺が半歩後ずさった所で、アールヴの矢がグズリを再び襲う、今度は二矢続けて氷の魔石付きだ、これは期待できるだろう。


 少し油断した、グズリを覗き込もうと、重心を前に移そうとした所に、太い前足、鋭い爪が空を切る。

 危ない危ない、あと数cm前に出ていたら血を流していた所だ。

 どうやら寒さに強い系なのか? 氷の魔石の効きが悪い。こんな事ならリーチの長い槍でも持って来れば良かった。

 相手の攻撃は左右前足の爪と鋭い牙の三つ、一つを盾で受けても残り二つが有る、接近戦で攻撃するにはリスクが大き過ぎか?


 俺は考える時間が欲しく少し距離をとる、グズリは持久力が無いのか氷の魔石の影響なのか、追って来たりはしなかった。少しの時間でも助かる。

 その間にもアールヴの弓は飛んでくるも、もう氷の魔石は付いてない、そしてグズリに刺さる事無く体表で弾かれた矢が地に落ちる。



 少々想定外だが、まだ火の魔石を持っている、体が大きい分は当て易い気はするが、イタチ科と言われるだけあって、攻撃に転ずる一瞬の動きは早い、普通に投げて当てられるか難しい所だ。


 ならば一つ布石を打つまで……、剣を鞘に収め、右手に火の魔石二つと光の魔石一つを握り締める。

 グズリから目を離さずに、ゆっくり移動し、グズリとアールヴの射線の間に入り込む。

 通常の戦闘では弓師の射線に割って入る事はない、アールヴも今頃は不審に思っているだろうが仕方ない。背中を矢で貫かれない様に祈るばかりだ。


 俺は光の魔石だけを目の前の頭上に軽く投げ上げて、落ちて来るに合わせ、盾でグズリに向かって光の魔石を盾で打ち出す。

 その時、左目は閉じて右目を細め、盾に顔が隠れる様にした。

 次の瞬間、まばゆい光が部屋の中を照らす、それでもアールヴだけは俺の影に入った筈だ。

 更に数瞬後、光が収まった所で、盾を下し、(くら)んだ右目に代わり、左目を開けて火の魔石二つをグズリに投げつけ、間髪要れずに短剣を抜いて待ち構えた。


 だがグズリは闇雲に走り回り壁に激突して止まった、そこへ短剣を突き刺し魔力の残照と成って消え、残照の一部は俺とアールヴの体と、ギルドカードに吸い込まれる。


 請負人である俺が、依頼人アールヴの火力を当てにした結果、苦労したのだと反省した。

 依頼人は依頼人だ、いくら強くても当てにしてはいけない。


 戦闘が終わり魔石を拾う、あれだけ苦労しても土の魔石しか残さない。

 彼方此方(あちこち)に散らばった矢を拾い集め、アールヴの元に歩み寄る。


「今日は終わりにしよう」

「ええ、そうね」

 矢を渡しながら疲れ気味に力無く言ってみたが、アールヴは先日の様な我侭は言って来ない、少し安心した。


 何時もの様にアールヴと同伴で店に入り、席でゆっくりと今後の予定を話し合う。

 一応、何処かで休みを挟むかと確認したが、アールヴが続けたいと言うので、それに合わせる事にする。とても頑張屋でますます好きに成ってしまう。



 俺は最近の日課とも言うべき午前の装備の手入れの為に、通常よりは遅め、だが待ち合わには早い時間に、冒険者ギルドを通りダンジョンへ向かおうとした……時に止められた。


「ノーバン、待て!」

「久しぶり、ギルド長」

 面倒な相手だ、冒険者ギルドの長で、俺が単独で深い階層に潜っている事を知る人物。

 まぁ一人で深い階層の魔石を換金してたら、嫌でも目に付くのだろう。

 俺は腕を引かれてギルド長の部屋に連れ込まれたが、何も心当たりが無い、何の話だろうかと少し不安になる。


「ノーバン、何で呼ばれたか分るよな?」

「いや、全然?」

 何も話さずに、「分るよな?」と言われても困る。って言うか、その前にお茶くらい出せと言いたい。


「まぁ座れ」

「ああ」

 クソッ! 座れと言う事は長話する気満々じゃねぇか、俺は暇じゃないんだよ。


「最近、若い娘を無理矢理連れまわしてるそうだな?」

「はぁ!? 俺が……ぁ!」

 急に変な事を言うから何かと思ったが、アールヴの事か? だが無理矢理とは酷い言いがかりだ、勘弁してほしい。


「どうやら心当たりが有るらしいな?」

「さぁな! 有り過ぎて分らないと言ったら如何する?」

 売り言葉に買い言葉じゃないが、少しイラッと来て余計な事を言ってしまった。


「ギルドカードの没収だな」


 その言葉に、自分の血の気が引くのが分った。

いつも御愛読有難う御座います。

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