表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/177

特別な魔石

 アールヴがイタチの魔物を狩り、矢を打ち尽くし声を……。

「どうして……」


 木から下りガックリと(ひざ)を付いて落ち込むアールヴに、手を差し伸べる……が、左右に首を振ると自力で立ち上がる。


 本来なら目的の階層まで連れて来たので、依頼の達成という事で良いのだろうが、本当の意味での達成とは言えない。

 おそらくアールヴの望む物は、階層の攻略ではなく、命の魔石だろう、自分の病気を治す為に。


「アールヴ、もし良かったら、九十一階層を目指してみないか?」

「どうして?」

 当然そう言う返事に成るだろうと予想はしていた、だが安全を確保しないとゆっくり話も出来ない。


「そうだな、少し木の上で話すか?」

「ええ、そうね」

 大分落ち込んでいる様で、何かを考える事すら手放しているように思える。

 まぁこれだけ落ち着けば、いや、落ち込めば、俺の話も聞けるだろう。


「アールヴは、何か特別な魔石を求めてるんじゃないのか?」

「ええ、そうなのよね……、命の魔石が欲しくてギルドにも行ったのだけれど『貴族様の予約で一杯だ』と、それでも執拗(しつよう)に話を聞く内に『八十一階層以降で手に入る』と……」

 やはり命の魔石か、だがギルドも不親切だ、いや話からして冒険者ギルドじゃなく、商業ギルドで話を聞いたのか? それなら売買の話も、ダンジョンの話が曖昧なのも分る。


 このダンジョンで出る属性の魔石は、土、水、火、風、命、氷、音、光、の八種類で八十一から八十七階層までは土の魔石しか出ない、だが領主が自兵を使ったり、ギルドや商人を通して買い上げ、領内の農村地帯へ配り、豊穣を祈願するらしい。


 そして水の魔石は、低階層でも沢山出る為に、安く飲料用として取引される。

 火の魔石は調理や冬場の暖に、風と氷の魔石は夏場の涼に、光の魔石は夜の灯に、音の魔石は虫除けや旅での獣除けに、そして命の魔石は怪我の治療や贈呈物として、貴族に多くが消費されている。


 命の魔石の効果は大きくないが、貴族は何が有っても顔に傷は残さない、幼子の居る貴族では、庭師やメイドまでもが命の魔石を持って見守ると言う。

 但し、実際に使う事は少なく、その殆ど(ほとん)が数ヶ月で魔力を失い、新しい物と交換される。


「確かに八十一階層以降と言えば、そうなのかもしれないが、命の魔石なら正確には九十一階層以降だな、八十一階層から属性の魔石が出ると言われていて、少々勘違いしている者も少なくないが、八十七階層までは土の魔石しか出ない」

「……そ、それじゃぁ……、ノーバンさん! 連れて行ってもらえるのよね?」

 アールヴは少し離れた別の枝で、(すが)る様な今にも泣きそうな顔で、見詰めながらお願いしてくる。本気なのか演技なのかは分らないが、そんな顔をされて断れるはずが無いし、そもそも俺から切り出した話だ。


「まっ、報酬の為なら連れて行くさ」

「ありがとう、ノーバンさん」

 あれ? 今度は「少し考えさせて」とは言わないんだな、まぁ追加報酬を要求した訳じゃないから当然か。


 アールヴと話が付いてからは、音の魔石に穴を開けて腰に付けた。

 八十一階層から八十七階層までは、イタチ科の魔物しか出て来ない、そして音の魔石の効果は抜群で、魔物は近付いて来ない。


 そしてボスもイタチ科だ、小さく素早いとは言え、俺が囮に成ればアールヴの放つ矢の敵じゃない、簡単に攻略できる。

 それでも今日は余計な狩をしたし、アールヴもまだ少し落ち込んでいる感じだ。

 八十二階層のボスを倒した所までで切り上げる。



 最近の流れ的にシャワーと食事を済ませてから、アールヴと同伴出勤する。

 そして今日、数は少しだが高級ワインの魔石をママにプレゼントした。

 まぁ数個だし魔石一つでグラス一杯分だから、本当に気持ち程度だが、とても喜んでもらえて俺も嬉しくなる。

 そして俺は遅くならない内に帰宅する……が、アールヴがまだ仕事だと思うと、何とも言えない気分になってしまう。


 朝を迎え、昨日と同じ様に、ダンジョンの施設に入り装備の手入れと準備をして、アールヴを待ってからダンジョン攻略を進める。今日は八十三からの攻略だ。

 フィールドでは音の魔石のお陰でほぼ戦闘が無く順調では有ったが、徐々にボスが強くなる。


 昨日のボスは、フェレットやオコジョと言われる者らしい小さな敵であったが、今日は大型のイタチが相手で毛皮も硬いのか、深い階層の魔物ゆえなのか分らないが、アールヴの弓を持ってしても一矢二矢では倒せない。

 俺も攻撃はアールヴに任せれば良いと思い込み、今日の装備は左に盾で右手に短剣と、刀ほどの切れ味も長さも無く、少々時間が掛かってしまった。


 それでも装備を換えに戻るのも面倒で、そのまま攻略を続け、八十六階層のボス部屋の前まで来てしまった。

 確かココのボスもイタチ科と言う話だが、猿と熊を合わせた顔に犬の鼻、狸の様な体に強靭で大きな爪と牙、どう見てもイタチで無いだろう魔物だ。

 確かクスリだかグズリとか言ったか?

 むしろ他の階層で見かけるハクビシンの方がイタチに見える、でも、そう言う事でもないらしい。

 どうにも分類をする学者やギルドの考えが、俺には理解出来ない。


 八十六階層のボスとも成ると、アールヴの弓が何処まで効くかが分らない、念の為に魔石を渡しておいた方が良いだろうが何を渡すか? 

 アールヴには、俺とボスが近くても打てる様に、効果範囲が局所的な氷の魔石を三つ渡し、自分でも取り出し易いポケットに数種類の魔石を移す。


 準備を整えた俺達は、ボス部屋に足を踏み入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ