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目的の場所

 刃渡り九十cmは有るだろう太刀を構えて、臨戦態勢のまま八十階層のボス部屋へと入る。


 近くにハイエナは居ない、部屋の中を見渡すと五匹とも遠くから走ってくるのが見えた。

 アールヴが入っても狙われない様に、左の壁際に沿って走り、ハイエナを誘う。

 ハイエナは、まだ遠いが刀が振れる様に壁から少し離れる、そしてアールヴが入って来た。

 左手には弓が、右に矢を三、四本手にしている、あれで矢を番えられるのだろうか?


 アールヴに一瞬気を取られたが、ハイエナに目を向け立ち止まった、走りながら迎え撃つのが難しいほどに五匹の統率が取れている。魔物のくせに面倒な。

 左右と上、後ろと動ける位置取りへ、体制を整えて迎え撃とうと待ち構える……だが矢が飛んで来て、次々とハイエナに突き刺さった。


 俺は唖然として倒れるハイエナを見ている……が一匹残っていた、気付いた時にハイエナは飛び掛って来て目の前に居た、避けるだけで精一杯だ。

 それでも何とか足を残し、ハイエナの腹に踵の(かかと)一撃を食らわせる。

 そして一瞬動きの止まったハイエナに、一太刀浴びせて倒した。

 危なかった、アールヴの弓に見惚れて反応が遅れてっしまった。


「アールヴの弓の腕は最高だな」

「射手を見ていない相手に当てるのは簡単なのよね」

 そうだろうか? 距離も二十m以上は有ったし、走る獲物に四秒と掛からず、四匹を仕留めてる、簡単な事では無いだろう。


 ハイエナは少人数で倒すのは大変な相手だが、アールヴと一緒なら、また戦っても良いかもしれない、何せ魔石も五つ出る、しかも高級ワインの魔石だ。


「アールヴ、もう一度ボスと戦ってみないか?」

「遠慮しとくのよね」

 あら、あっさりと断られてしまった。残念。

 魔石と矢を拾いボス部屋を後にして、早々に安全地帯へと戻って来てしまった。

 アールヴは高級ワインに興味は無いのだろうか? まぁ俺もワインの味は良く分らないが、ママにプレゼントしたら喜びそうなんだよなぁ。


「早く次の階層に行きましょうね」

「あ、あぁ、でも、そんなに急ぐなって」

 ママへのお土産の事を考え、少し歩みの遅くなった俺をアールヴが急かす。


「だって、やっと行けるのよね」

「次の階層がアールヴの目的の場所だったか?」

「そうなのよぅ、忘れちゃったのかしらね?」

「いや、ちゃんと覚えてるよ」

 本当は覚えてない、だが嬉しそうだし機嫌を損ねるような事は言いたく無い。

 だが少々浮かれ過ぎて危ない気がする。俺が気を付けながら見守るか?


 八十一階層へ下りると、アールヴは俺より先にフィールドに出て、(ムチ)を仕舞い弓を手にしている。どうも冷静さを欠いているらしい。

 しばらく進むと三十cm位の小さな魔物が見えてきた。そして何を考えてかアールヴが矢を番えてる。


「待て待て! 打つなよ」

「えっ! あ、そうなのよね」

 危ない危ない、魔物の位置まで二十m以上は有る、矢を放っていたら規定違反で罰せられる所だった。まだ安全地帯から遠くない位置で、人目も有るし尚更だ。


「あまり焦るな、あの高い木に行くまで弓は禁止だ」

「…………」

 どうも早く魔物を倒したいらしく、何を考えているのか返事もしてくれない。

 この階層では、長居したくは無いが、魔物を狩り納得するまでは無理だろうなぁ。


「アールヴが木に登ったら、俺が囮に(おとり)成って魔物を引き付けてやる」

「それなら、我慢するのよね」

 どうにか納得してくれたようだ。

 今度は俺が前に出て、大きな木の元に歩き着くやいなや、アールヴは木に()()()()弓に矢を番えた。もう何と言って良いのやら、頭を抱えたくなって来た。

 まぁ約束だから、囮役になり魔物を呼び寄せるか。


 だが八十一階層の魔物は少々面倒だ、何せ小さくて素早い、しかも体が細いときている。

 囮役の俺も大変だが、矢を射るアールヴも当てるのは難しかろう。

 近くの(しげ)みの中に小石を投げ込むと、三匹の魔物が顔を出して、消えたと思ったら茂みの中を走る音が「カサカサ」と近付いて来る。


 この階層の魔物はイタチだ、ただ良くは分らんが色や大きさに、バラツキが大きい。

 聞いた話ではオコジョやフェレットにミンクと色々な種類が居ると言うが、俺には、どれがどれなのか分らない。


 そして膝下位の茂みとは言え、小さな体で中を走られたのでは、目視する事すら困難だ。

 幸い大木の近くは草の育ちが悪いのか茂みも薄くなっている、避ける事は出来るだろう。

 一応、太刀は構えるが、避ける事に専念する。


 飛び掛るイタチを避けると、俺の背後に矢が打ち下ろされて魔物が射抜かれた。

 俺の背中には冷たい汗が流れ、体が一瞬震えた気がする。

 気を取り直して、作業的に小石を投げて、後は避ける事に専念した。

 しばらくしてアールヴから声が掛かる。


「もう、矢が無くなるのよね」

「わかった」

 軽く二桁は倒しただろう、魔石が彼方此方(あちこち)転がっている。

 俺は魔石を無視して、矢を拾い集め、そしてアールヴが魔石を拾い集めた。


「そんなぁ……ノーバンさん、もう一度お願いなのよね……」

「あぁ構わない」

 アールヴも少しは落ち着いた気はするが、まだ様子を見るか? 話し掛けるタイミングが難しい。


 階層を進んでも良いのだが、何故かアールヴは「もう一度」と言うし、階層を一気に進めてきたせいで、アールヴの動きも重く感じていた事もある。

 少し上の階層で、スルリと登った木と似た様な木に、今日は……「胸やお尻が育ったのか?」と聞いてみたい位に違いが有った。

 まぁ一瞬で登られてしまうより、時間を掛けて登ってくれた方が、下から見る分には楽しめるわけだが。


 この階層で多くの魔物を倒し、魔力の残照を体に取り込ませるのも良いかもしれないか? 少しはアールヴの体の動きも良くなるだろう。


 矢を渡すと、アールヴはお尻を突き出しながら木に登り「いいわよ」と声を掛けて来た。

 つい見とれてしまったが、落ちない様に見詰めていただけで、下心は少ししかない。


 そして先程と同じ様に魔物を狩り、矢を打ち尽くす。

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