表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/177

特別な物

 同伴で入店しなければアールヴに恥をかかせる事に成ってしまう、当のアールヴも同伴でなければ遅刻に成ると分っているようで、怒ってはいるものの何も言わず一緒にお店に向かう。

 こんな時、何て話しかけたら良いのか、まったく思い付かない。


 結局、機嫌が直らないままに入店してしまったが、アールヴは更衣室で着替えて来ると、ホステスの顔に成っていた。そう、優しい笑顔を向けてくれる。

 入店後は、何時もの様に楽しく話が出来、俺自身も怒らせた事を忘れてしまう。


 数時間をアールヴと楽しく過ごし、俺は帰る事にする。

 そして帰り際の精算の時ママに、今日の戦利品である希少なお酒の魔石をプレゼントした。

 戦利品とは言え、ダンジョンから魔石を持ち出す時に、冒険者ギルドで税金を払わなければ成らないのだが、それがお酒とタバコの魔石は税金が高い、流通相場の半分以上が税金と言っても良いほどだ。

 そして持ち合わせのお金も多くなかったので、魔石の半分以上を税金として収めて、残りを持ち帰りプレゼント用にした。

 まぁその甲斐有って、ママには喜んで貰え、俺も幸せだ。


 但し、ママに顔を合わせた事で、余計な一言も貰ってしまう。

「ノーバン、アールヴちゃんを傷付けたり、手を出したら先日分の報酬は無しよ」

「えっと……手は……」

「メッっよ!」

「はぃ」


 多分、俺とアールヴが同伴出勤してくるし、アールヴからも一緒にダンジョンに潜ってると聞いたのだろう。

 それにしても手厳しい、ただ曖昧(あいまい)な言い方で「手を出す」とは、何処からを言うのか? 手を握る位は良いだろうか?

 そして「傷付けたり」とは精神的になのか、肉体的になのかも分り難い。

 だが「怪我をさせるな」と言われなかっただけマシだろう、ダンジョンに入る以上は、怪我をする危険性は常に有るのだから。


 キャバクラで飲んだ後は、真っ直ぐ家に帰り早々に寝た。



 そして翌日は朝十時頃には家を出て、ダンジョンの施設内のロッカーに行き、自分の借りているロッカーから武器と防具を出して手入れする。

 相手がダンジョンの魔物で、血糊(ちのり)が残る事無く魔力の残照として消えてしまうが、まったく手入れをしなければ刃物系の武器は直に切れなくなってしまう。


 そして今日の予定も考えて、それに合わせた武器や防具も用意しておかなければならない。

 今日は八十階層から攻略して、昨日と同じ進みなら八十三階層まで攻略できるだろう。

 だからと言って、八十三階層を攻略するまで頑張るとかの無理はしない、あくまで必要な装備を見繕(みつくろ)う為だけの予想でしかない。頑張りと無理は近い所に有る、見極めが肝心だ。


 装備の手入れも終わり、八十階層の安全地帯に下りて、パンと干し肉を食べているとアールヴが現れた。

 まだ待ち合わせに大分早い時間だ、やる気が伺え(うかが)る。


「おはようアールヴ」

「おはよう御座います、ノーバンさん」

 軽く挨拶を終えると隣に腰を下ろしたアールヴに、昨日と同じく腕貫と手甲に鞭を渡す。

 俺も装備品の手入れをするから分るが、アールヴの弓も良く手入れがされている。

 弦に、ほつれや(かす)れ等の痛みは無いし、弓の部分もササクレ等無く、握りの部分も綺麗だ。


「弓を大切にしているんだな?」

「ええ、エルフにとっての弓は特別な物なのよね」

 アールヴは弓を大切そうに、両手で抱かかえながら教えてくれる。

 俺もドワーフが打ったとされる本物の刀を大切にしているが、それと同じだろうか?


 俺達は八十階層のフィールドに、足を踏み入れた。

 この階層までは昨日と同じく、多種多様な魔物が出てくるから、音の魔石を使い多くの魔物を遠ざけて進む。


 今日はスライムに多く出くわす、スライムは聴力が低いのだろうか?

 そもそも昨日か一昨日に雨でも降っただろうか? それくらい多くのスライムに会う。

 ダンジョンの外で雨が降ると、地下を雨水が浸透してくるのか? スライムは繁殖しやすくなる、だがダンジョンに潜る事の多い俺は、天気をあまり気にしない。


 そして、深い階層に出るスライムは、色が濃く強さも油断出来ない相手で、体当たりを防具も無い所で受けよう物なら、骨折させられる位だ。

 その分、倒した後に残る魔石には魅力が有る、黒スライムは浅い階層ではコーラだが、深い階層では黒ビールの魔石を残す。労力に見合う価値が有る。

 紫陽花(アジサイ)程の大きさで跳ね回るスライムは、通常弓には不向きな相手と言われているが、アールヴは鞭を弓に持ち代え何匹も倒してる。


 少し時間は掛かったが、無事ボス部屋の前に辿り着いた。

 だがココが意外と難関で、アールヴを守りながら如何戦うかを考える。

 念の為に、戦闘で使えそうな魔石を、取り出し易いポケットに幾つも準備した。


「アールヴ、ココのボスは一mを優に超えるハイエナが、五匹同時に襲ってくる」

「部屋が狭いのかしら?」

「いや、五十m四方の部屋で、誰かがチョッカイ掛けていなければ、部屋の反対端近くから走って来るはずだが…………」

「誰かの後なら、近くに居る可能性も、って言う事かしらね?」


 アールヴと良く打ち合わせをして、俺が先に入り、五秒後にアールヴが入る様にする。

 今日の俺の武器は、ステンレス製の太刀で、昨日の鉄製の物より切れ味は落ちるが、刃渡りが九十cmは有るだろう長物を持って来た。

 純度の高い鉄やステンレスはドワーフの国から輸入されてくる、どちらも人間の国では加工は出来ても製造する事が出来ないと聞いている。

 そこにはドワーフならではの技術が有るのだろう。


 太刀を構えて、臨戦態勢のままボス部屋へと入る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ