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防具の装着

「これを装着してやるから腕を出してくれるか?」

「……」

 防具の装着を理由に、可憐な体に触れたいのだが、アールヴの返事は?


「嫌か?」

「いえ、お借りするわね」

 そう言うとアールヴは俺の手から、防具を受け取り、自分で身に着けてしまう。

 せっかく俺が時間を掛けて丁寧に優しく、腕を擦る様に着せてあげようと思ったのに、残念だ。


 腕貫は両腕と足にも、脛当(すねあ)ての代わりに、そして左手には手甲、一応弓の邪魔に成らない物で、革の外側に細かい鎖が編み込まれた物だ。

 手袋も指が出る様に切り落として渡そうかとも思ったが、弓の精度が落ちてはかえって危険な気がして、迷ったが素手のままで良いだろう。


 装備を身に着けたアールヴに手を差し伸べるも、ベンチから一人で立ち上がってしまう。

 どうも、直接に触れる事を嫌っているのだろうか? 昨日、俺の腕を取った時も服の上からで、直接肌には触れていなかった。もしかして嫌われてる?

 少しショックでは有るが、依頼を達成すれば報酬が待っている、その時にはたっぷりと触れるはずだ。想像しただけで涎が(よだれ)出そうになる。


 安全地帯から外に出る扉に向かい歩き出し、もう一つの渡し忘れていた物をアールヴに渡す。

「七十六階層から八十階層までは特殊で、今までの階層の魔物が色々と出てくる」

「それで鞭を?」


 アールヴは首を傾げながら確認してくる、まぁ鞭なんて使ったことが無いのかもしれない、あまり一般的な武器ではないが、多種多様な魔物から身を守るだけなら便利な武器だと言える。

 但し攻撃力は大した事は無く、魔物を倒すのは難しいだろう。


「フィールドで弓には制限が有るからな」

 弓はボス部屋以外のフィールドでは、水平より下方のみで、狙いを外しても着矢地点が地上で射手から十m以内と定められている。流れ矢での事故を防ぐ為の決まりだ。


「そうね、狙いを外す事なんて無いのに、面倒なのよね」

 何気に凄い事を言うな、自信家なのだろうか? でも昨日はボスも含め、一矢も外して無いんだよな。


 俺達は安全地帯から出て、フィールドに出た。目指すは真っ直ぐボス部屋だ。

 だが、深い階層で冒険者が少ないせいか、魔物との遭遇が多い。しかも多種多様と来ていて中々に戦い難い。


 面倒に成って来たので、持って来た魔石の中から音の魔石を取り出し、二ヶ所ほど小さな穴を開け、腰に入れる。人の耳では何も聞こえないが、魔石からは音が出ている筈で、これで聴力の良い魔物は音を嫌い近寄っては来なくなる。

 ダンジョンに入って魔物を遠ざけるとか、意味が無い事をしている様に思うが、出来る限りの安全性の確保と、階層攻略目的だから仕方ない。


 大分魔物は少なくなったが、それでも近付いて来る魔物は居る。

 黒いスライムが飛び出してきて、それをアールヴが鞭で追い払う、俺も手を貸そうかと思ったが、前から大きなクマが現れた。ちょ、ちょっとまて。

「アールヴ、そこの大きな木に登れ」

「えっ、ええ」


 アールヴも俺の掛け声に、熊を目にしたのか素直に指示に従う。

 するりと木に登ると、太い枝に乗り上空を警戒するアールヴ、木の上までは黒スライムが襲って来ることは無さそうだ。

 その代わりに、俺が熊と黒スライムの両方を相手する形に。

 アールヴの登った木を中心にして、円を描くように走り逃げながら指示をだす。

「悪いが、上から弓で何とかしてくれるか?」

「分ったのね」


 アールヴは直ぐに武器を持ち替えて矢を放ってくれる。

 俺は熊を気にしつつ、飛び掛ってくる黒スライムを避けると、高速で動く黒スライムが矢で胴体を貫かれ、魔力の残照となる。


 残るは熊だけと思い走りながら振り向くと、片目に矢の刺さった熊が暴れている。

 一旦立ち止まり、刀を両手で持ち直し構え直している内に、更に矢が放たれ、暴れる熊の鼻に一本……、そして額に一本矢が突き刺さり、それが致命傷だったのか熊は倒れて静かに成った。熊は魔力の残照となり、消えて矢と魔石が残る。


 アールヴはとても頼りになる、キャバクラを辞めさせて冒険者に誘うか?

 弓を使わせたら誰にも負けないんじゃないだろうか、高速で跳ねる黒スライムを射落とし、熊の硬い頭部すら打ち抜く威力、精度は練習の賜物かもしれないが、威力は弓の良さ? いや強い弓だとしても、それに見合う力が無ければ弦が引けないだろう。見た目の細さとは裏腹に相当な力を秘めているのだろうか?


「助かったよアールヴ」

「どう……いたしまして」

 矢と魔石を拾いながら礼を言うと、アールヴは木から下りながら何でも無い事の様に返してくる。

 もっと自慢げに、胸を反らして偉そうにしても良いのだが、そう言う子ではない様だ。胸を反らしてくれれば、良い目の保養に成ったのに、おしい。


 若干息苦しそうでは有るが、まぁ無理も無い、俺が慌てさせたのも有るが、アールヴにとって七十六階層は初めてだろう、よほど前の階層で魔物を倒し、魔力の残照を多く浴びていなければ、階層が進む毎に厳しくなる。


「希少なお酒の魔石は、ママへのお土産にしたいんだがいいか?」

「ええ、いいのよね」

 良かった、倒したのはアールヴだから、断られたら如何しようかと思っていた。


 これでママに喜んでもらえるだろう。

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