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悩める少女

「何でも言って欲しいのよね」

 何でもとは言われても、いざ言葉にして言うとなると凄く緊張する。


「では遠慮無く、アールヴ、君の体を好きにさせて欲しい」

「え? えっと……少し考えさせて欲しいのよね」

 ふむ、やはり長生きのエルフとは言え、見た目通り大人に成り切れてない年齢なのだろうか? いやいや確かお酒は飲んでいたから、少なくとも子供では無い筈だ。

 そもそも、「少し考える」と言われても一時間なのか数日なのかが分らない、ただアールヴに今は動く気配が無い、俺もこのまま待つしかないだろう。


 ここで考えているなら俺は狩にでも行きたいが、悩める少女? を一人置いて行く訳にもいかないよな。

 数時間は待っただろうか、アールヴが顔を上げて静かに話し出す。


「ノーバンさん……、決めました、私の体が目当てなら好きにして構いません……、ですが報酬は依頼達成の数日後にして欲しいのよね」

「ぅううん、俺的には早い方が、何なら前払いでも良い位だ、約束は絶対に守る」

 まぁアールヴが何故深い階層に行こうとしているのか予想は付いたが、依頼達成後に逃げられては只働きに成ってしまう。それは避けたい。


「それでは……、その、依頼達成後に、身を清める時間だけは頂きたいのよね」

「成るほど、確かに時間を必要とする理由も有る訳かぁ、もし逃げてもアールヴのお尻なら何処までも追いかけるからな」

 まぁ本当に逃げ出したとしても、逃げる先の予想は付いている、きっとエルフの国へ帰るだろう、追いかけるのは簡単だ。


「では交渉成立ね? 早速次の階層に連れて行って貰えるのよね?」

「今日はまだ昼飯も食べてないし、装備も整えなければ成らない。一度戻って明日からにしよう」

 そこまで急ぎ潜らなければ成らないほど切迫しているのだろうか?

 それとも、先の階層へ行ける思いから、嬉しさ一杯で全てを忘れてしまったのだろうか?


「そ、そうね明日からお願いなのね」

「それじゃぁ帰ろう」


 その後、エレベーターで一階まで上がり、ダンジョン内の施設を利用し、別々にシャワーを浴びてから町へと出た、すでに日は赤く染まり始めている。


「お腹もすいたし、食事をしよう」

「そ、そうね、結局、今日もお店を休むようなのよね」

 今すぐに、キャバクラへ向かえば如何にか出勤時間に間に合いそうでは有るが、倒れられても困る、食事に誘わなければ無理をしそうだし少し面倒を見るか。


 行き付けの食事処に入り……少し混んでいるが、店主に声を掛ける。

「手早く出来て栄養の有る物を二人前多めで頼む」

「食べ物なら、全てに栄養は有るもんなんだがな」


 何だかんだと良いながら、手早くチャーハンを炒めながら同時にベーコンエッグも焼いてくれたらしい。あまり待たずして料理が出て来た。

 オレンジジュースも二人分貰い、腹がへっていたせいで、無言で黙々と食べてしまう。

 食べ終わって満足感に浸りながら、目の前に綺麗な女性が居る事を思い出す。


「アールヴ、少し眠いか?」

「そんなことは無いのよね」

 どうだろう? 渡世人の所に情報が入ってくる位だ、朝からダンジョンに入っていたと思うし、深夜まで起きていられるだろうか?

 アールヴの顔を覗き込むが、見つめ返してくる、嘘を言ってる風にも見えないし眠そうな目もしていない、大丈夫そうか。


「それなら少しママが心配している様だから、お店に行こう」

「でも、もう遅刻で……その……」

「大丈夫、俺が何とかする」

「それなら……」

 確かにお店の開店時間を過ぎてしまっている、だがキャバクラには裏技が有るのだ。

 他には無いキャバクラ独自のシステムだろうが、何とかなる。

 遅くなったが、アールヴと一緒にママの待つキャバクラへと向かった。


「おはようママ」

「おはよう御座います、遅くなって……それとご心配お掛けして申し訳ありません」

「……いらっしゃいノーバン、それとアールヴは奥に行って着替えてらっしゃい」

 ママは少し驚いた様だが、怒る事も無くアールヴの背中を押して、更衣室へと向かわせる。


「ママ、悪い、今日はアールヴと同伴出勤なんだ」

「あら? 謝る必要なんて無いのよ、お店としては同伴出勤は大歓迎なのよ。お店としては、ね!」

 いや、大歓迎という割りに声に棘が有る様な? まぁそりゃママに同伴出勤を要求した俺が他の子と同伴出勤してきたら、気分の良い者じゃないだろうな。後で何か埋め合わせでもするか。

 同伴出勤なら一時間遅れまでは許される、とは言ってもその時間分の料金は俺に請求が来る訳だが、大した問題じゃない。アールヴの事を思えば。


 黒服に案内されるも、狭い所を希望して席に着きアールヴを待つ。

 奥まった角の一番狭い席で二、三人掛けのソファーに小さな四角いテーブルが有り、正面は前の席の背もたれしか見えない。


 アールヴが歩いて来るのが見えたので一度席を立ち、戸惑うアールヴを席の奥へと座らせ、ママに向けて手を合わせウィンクしてみせると、「仕方ないわね」と言わんばかりに頬を膨らませながら、そっぽを向いてしまうが、多分、OKと言う事だろう。


 普通は色々な意味でホステスが出入りし易い方で、他の客に顔を見られ易い席に座るが、今日だけは特別だ、これで少しはゆっくり出来るだろう、アールヴが。

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