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アールヴの誘惑

 テキーラの魔石、確かに七十五階層ボスの魔石だ。

 俺は驚きの表情を隠せないままに、アールヴを見つめてしまう。


「私の体を見ていて、ボスが倒れる所を見逃したのよね?」

「えっと……、まぁそんな感じかな? いや、アールヴが倒してくれると信じていたから、そっちは見る必要が無かっただけだ」

「……そう言う事にしておいてあげるのよね」

「ありがとう」

 テキーラの魔石を渡しながら、言い訳をすると、信じてくれた……訳じゃ無いようで、少し怒っている様に見えた。


 そしてボスに放った矢は、焼けて黒い灰に成り、残った鏃を(やじり)拾い上げ……熱っ!……火傷したかもしれない。

 一応手袋はしていたから酷い事には成っていない筈、と思いたい。

 今度は冷ました鏃を拾い上げ、アールヴに手渡した。


 ボス部屋を出ての帰り道、アールヴはボスを倒した高揚感に浸る事無く、静かに部屋での質問を再度してきた。

「先程の魔石が何か、教えて貰ってないのよね?」

「あぁ、あれは火の魔石だな」


 出来れは忘れて欲しかった、何せ八十九階層以降でしか出ない魔石を使って、七十五階層の敵を倒すなんて、反則的な方法としか言いようが無い。

 だがボスは倒れ、矢が灰に成っていた事実から、嘘を付いても無駄な事は分ってる、目を合わせない様に、そして小声で答えるも、しっかりと聞き取った様だ。


「それじゃぁ、もっと先の階層に行けるのよね?」

「いやぁ、如何だろうな?」

 俺が行くだけなら構わない、それが俺の仕事で日常とも言える、だが問題はアールヴを生きて返さないと、ママからの報酬が貰えない事になってしまう。リスクが大き過ぎる。


「七十五階層ボスの行動パターンを知っていて、倒し方まで知っていたのよね?」

「そう……だったかな? たまたまじゃないか?」

 いやいやアールヴは本当に抜け目が無い、下手な言い訳が通じるとは思わないが、何とか誤魔化したい。


「まだココは危険だから、続きは安全地帯に入ってからで良いか?」

「良いけど、私は忘れないのよね」

 どうにも思っていた印象と違い、アールヴは手厳しい。



 そして、安全地帯に入って直ぐにアールヴは話し掛けてくる。


「ノーバンさん、お願いよぅ、私を連れて行って欲しいのよね」

「俺は……、アールヴ……を……連れて帰りたいんだ」

 危ない危ない、甘い声に惑わされて、もう少しで負けてしまう所だった、ママの報酬の件が無かったらと思うと……。


「ノーバンさんって、少し変なのよね?」

「そうか? 普通だろう」

 また何か変な行動をとってしまったのだろうか? 心当たりが無い。


「他の冒険者のお客さんは、少し甘い声でお願いしたら、二つ返事で言う事を聞いてくれたのよね」

「あぁ、その事か、でも有り得ないだろう、自分の命もアールヴの命も掛かっているんだ、気安く連れて行くとは言えないな」

 っと口では言うが、アールヴの顔を見れない、それほどまでに魅力的な女性だ。

 俺もママからの依頼と報酬の件が無ければ、甘い声に乗せられた事だろう。


「それでも男性なら……、良い所を見せたいとかぁ、我侭を聞いて仲良くなりたいとか思うものなのよね?」

「良い所を見せようとしてアールヴに死なれたら、何にも成らないと思うがな?」

 もう少し、まともな良い人かと思っていたが、アールヴは意外と悪女的なしたたかさだ。

 恐ろしい、俺にはママからの報酬が待っている、今、落とされる訳にはいかない。


「ノーバンさん、私はね……、死を覚悟してダンジョンに挑んでいるの、仮にダンジョンで死んでもノーバンさんの事を恨んだりはしない、だから連れて行って欲しいのよね、お願いよぅ」

「い、いや……」

 答えに迷っていると、アールヴは俺の腕を取り自分の胸に引き寄せる。

 こ、これは柔らかい物に、いや、それほど柔らかくは無いか? でも小さな膨らみに当たっている……まだ熟しきれてない青いマンゴーの感触……、報酬の先払いだろうか? それとも交渉の席に付ける為の行動だろうか?


「そうだなぁ、その覚悟に(こた)えて報酬次第では、好きな階層まで連れて行ってやる」

「ありがとう、ノーバンさん」

 いやぁとうとう誘惑に負けてしまった……、が交渉が終わった訳ではない、そもそも俺の腕を自分の胸に押し当てるだけの覚悟を、自分で自覚しているのだろうか?

 そして自分でもダンジョンに入り自力でも頑張っている、何とか助けてあげたと思ってしまう。


「だが俺への報酬は安くは無いぞ」

「こう見えてお金なら、それなりに貯めてるの、好きな額を言って良いのよね」

 うぅぅん、何か勘違いしている様だ、何も報酬がお金とは限らない。

 先程の悪女振りとは違い、報酬に関しては真っ当な事を言う、まぁ自分から変な事は言い出し難いのだろう。


「そうだな、お金には困ってないから、それ以外でも良いか?」

「えっ、ええ、私に払える()なら?」

 払える物ならか、言葉では「物」なのか「者」なのか分らないが、まあ良いだろう。


「そこは心配無い、アールヴにしか払えない()だから」

「そう、何でも言って欲しいのよね」


 何でもとは言われても、いざ言葉にして言うとなると凄く緊張する。

ノーバンの望む報酬とは?

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