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第一章 灼熱の火山 ver.6


 更新がかなり遅れたことをお詫び申し上げます。


 実に71日間投稿できずに、

 「この作者はやる気ないなぁ」

 などの感想は覚悟しておりましたので…。


 ではでは、前書が長くなっても…ですので

 本編へどうぞ!!



 ソウルとラドムは、大きな広場に出た。空には、もくもくと黒い煙が立ち上っていた。

「あ、あれは!?」

 二人が頂上に着いたとき、いつもより大型のけむくじゃらの魔物がウッドを持ち上げ、地面に叩きつけた。ウッドは、そのままぐったりと動かなくなった。

「あははは!! 無様だねぇ。何が息子のため? 口だけの父親ってのも酷な息子さんね」

 長髪を金色に染めた一人の女がウッドを嘲笑った。

「く、くそっ!! 許さねぇ!!」

 ソウルはラドムの肩を振り払い、魔物と女に向かって走り出した。

「ん? まさか息子さん??」

 女は走ってくるソウルに気づき、驚いた。

「あらぁ気の毒ね。あなたの父親は今死んだばかりよ」

「うるさい!! お前らだけは、絶対に許さない!!」

 ソウルは電光石火の速さで敵の前まで詰め寄った。ソウルは剣を両手で握りなおすと、高く跳び上がった。女はソウルが高く跳んだのを確認すると、女も同じように跳び上がった。ソウルは女の行動に驚愕し、まんまと空中で腹に鋭い拳を入れられた。ソウルは剣を取り落とし、後ろに落ちていった。体中の神経が麻痺しているかのようだった。

「ソウルさん!!」

 ラドムは大きな声で叫んだが、ソウルは声を出すこともできなかった。そして、背中から地面に墜落した。ソウルは何も感じることができなくなった。痛みさえ忘れてしまうほどの衝撃を受け、体が動かなくなった。

「ソウルさん、しっかりしてください!!」

 ラドムはソウルの元まで駆け寄り、ソウルの意識を確認すると、敵に向き直った。

「お前は……一体誰だ!?」

「あたしはガリスト。まあ自己紹介するまでもなかったみたいだけど」

 ガリストと名乗る女は長い髪を顔から払いのけると、手に力を集め始めた。次第にガリストの手には何かのシルエットが浮かび始めた。そしてシルエットが解け始め、一本の大きな鎌が姿を現した。

「!?」

「驚いた? なら次はもっと驚かせてあげる!!」

 ガリストは鎌で空を切った。ビュンという音とともに空間に大きな切れ目ができると、そこから突風が浮きこんだ。それにいち早く気づいたラドムは一歩後退し、ソウルの腕を肩に回してかがんだ。

「やるわね。この風の影響をあまり受けない低い位置に身を潜め、二人分の体重で風を無効化しようって寸法ね。なら、これはどうかしら?」

ガリストは鎌に額を当て強く念じた。すると風が収まり、その代わりに鎌が黄色い光を帯び始めた。

 ガリストはその鎌でもう一度空を切った。ラドムはソウルを背負ったまま身構えたが、今回は空間に切れ目が現れなかった。そしてラドムが油断したそのとき、楕円形を描いた目に見えるほど強い風がラドムたちに直撃した。

 ラドムとソウルは空中に投げ出され、ソウルの体はラドムの手から離れそうになった。しかし、ラドムは身動きの取れない空中で、巧みに体をひねりソウルを受け止め、地に落ちた。ラドムは背に強い痛みを感じたが、立てないほどではなかった。

 しかし、すぐには立ち上がれずその場で痛みをこらえた。ソウルも今の衝撃で目を覚ました。

「あれ? 俺死んでなかったの?」

 ソウルはキョロキョロとあたりを見回し、状況を把握すると身が引き締まった。

「じゃあ、あたしはこれで帰るわ。あとはあんたに任せるから。あっ、そうそう。ひとつ忠告しといてあげる。アセイルシックルを受けた兵隊さん、自分のこと気にしたほうがいいわよ」

ラドムははっとして自分の手を見た。両手は真っ赤に染まり、気づけば腹部からも大量の血が流れていた。どうして気がつかなかったのだろう。ラドムは腹部を押さえ、やっと痛みを感じ始めた。

「ラドム、大丈夫なのか!?」

 ソウルはラドムのポーチから傷薬を取り出して、軟膏をラドムの皮膚の切れ目に塗った。

「友情っていいわね。あたしとあんたじゃうまく行きそうにないから」

 ガリストは魔物に向かってそう言うと、風に吹かれて消え去った。ソウルにはなぜか、魔物が残念そうな表情をしていたように見えた。

 それよりもウッドは?どこへ行ったのだろう?さっきからウッドの姿が見当たらなかった。嫌な予感がする。ソウルは雑念を振り払おうと頭を激しく左右に動かした。今は戦いに集中しなければならない。

 ソウルは数歩はなれたところに落ちていた剣を拾い上げた。なぜか剣の柄が熱い。しかし、大きな力がそれを伝わってこっちへ来るのがわかる。

ソウルは剣を一振りした。剣についていた土があたりに散らばった。最後にもう一度剣を握り なおすと、ソウルは一目散に走り出した―――


 魔物は大きな腕をソウルに向けてなぎ払うように振った。

「あぶない!!」

 ラドムは大声で叫んだ。しかし、ソウルは冷静さを保っていた。一度大きく跳んだかと思うと、空中でひらりと敵の攻撃をかわし、魔物の腕を踏み台にして、もう一度大きく跳ね上がった。

 魔物の腕は硬く、ソウルはそんな感触を確かめながら跳んだ。自分の身長の何倍もある魔物の顔まで跳んだのだ。

「これでも喰らえ!!」

 渾身の一振りは魔物の顔を両断した。たくさんの血が飛び散り、魔物は赤く充血していた目を強く閉じた。

 以前の彼ならできないことだった。自分の感情を抑えきれずに、心のままに動いていた彼には。そのことを自分の手に怪我をしてまでも、ラドムは教えてくれた。

魔物は一瞬動きが鈍った。ラドムもその瞬間を見逃さなかった。

「追撃です!!」

 剣を宙に弾ませて逆手に持ち替え、魔物の心臓めがけて渾身の力で剣を投げた。いつかソウルが、彼にやったことと同じように。

 二人は、知らず知らずのうちに、互いに互いがいろいろなことを教えあっていたのだ。それは、彼らが互いに信頼し、尊敬しあってこそできることだった。そう、二人は「友情」というかたい絆で結ばれていた。

 見事に剣は、魔物の心臓に突き刺さった。血しぶきが上がる。ソウルは魔物の顔に一蹴り入れ、宙返りで優雅に地面に降り立った。

 魔物は地響きを立て、後ろ向きに倒れて動かなくなった。火山の山頂が静まり返った。ソウルは剣を地に突き刺すと、手についた砂を払ってラドムに近づいた。

 そして手を差し出した。ラドムも血で染まっていた手でソウルの手をつかんだ。強い握手が 彼らの絆を深めた。お互いが、最高のパートナーだった―――


 ソウルは何かを思い出したようにあたりを見回した。

「お、親父!!」

 ソウルは、遠くで不自然に横たわるウッドのそばまで駆け寄ると、父親を抱き起した。……何かが違う。何だろう?

「ソウ…ル。ちょっと見ない間に……大きくなったな」

 ウッドは静かに手を伸ばした。ソウルはその手をしっかり握った。しかし、その感触にも普段の父親ほどの力強さは感じられなかった。

「何寝ぼけたことを言ってんだよ。早く……帰ろう」

 ソウルの目は涙ぐんでいた。

「お前の目は……母さんそっくりだ……」

 ウッドはソウルの手を離し、息子の頬をさすった。

「さあ、早く帰ろう」

 ソウル自身もわかっていたのかも知れない。ウッドはすで動ける体ではなかったことを。ただ、わかりたくなかっただけなのだ。ソウルの目からは、涙が溢れていた。涙が頬を伝う。ソウルは、よりいっそう強く、父親の手を握った。

「いいか、よく聞けよ。お前は、……普通の人間ではない……」

 ソウルは、そんなことでも言われると思っていた。それなりに覚悟は決めていた。だが、信じることはできなかった。

「もう何がなんだかわからない……」

 ソウルは、困惑しきった。

「今はそれでいい。これから、自分の本当の仲間を見つけ、世界を救え……。本当の仲間は……ある石を持っている・・。その石を頼りに、世界を救え。その剣は…俺からのご褒美だ」

 ソウルは、自分の父親が何を言っているのかさっぱりわからなかった。

「あの兵隊長さんもそうかも知れないな。なあ、ラドム」

 ラドムは遠巻きに見ていたが、静かにうなずいた。

「お前さんもちゃんとわかってるじゃないか……時ってものを」

 ラドムの目にも涙が溢れていた。

「息子のこと頼んだぞ」

 ラドムは、もう一度大きくうなずいた。

「い、いやだ!! 親父!! 死ぬんじゃないぞ!! 今助けを呼んでくるから…」

 ソウルは立ち上がろうとしたが、ウッドはその手を放さなかった。

「ソウル。ティセフに戻った時、村長から俺の預けた荷物を受け取れ。そこに俺の気持ちがすべて詰まっている。」

「なあに、お前なら大丈夫だ……。なんたって、俺が認めた自慢の息子だからな。ソウル……よ」

 その言葉を最後に、ウッドは動かなくなった。

 村の人気者であり、家族の迷惑者であったが、誰よりも自分の息子を信じた英雄、ウッドの最期であった。

「う、うわあああ!!」

 ソウルは大きな泣き声を上げた。その顔は、涙の跡で覆い尽くされている。。

「まだ、何にも話してないだろ!? なのに……なんで死んじゃうんだよ!!」

 ソウルは大きな声をあげた。

「俺の力が……俺の力が足りなかったからだ!!」

 ソウルは大声でそういい、何度も地面を殴り始めた。ラドムは、そんなソウルの肩に手をおいた。

「あなたには……」

 ラドムはそう言いかけたが、ふと妙な気配を感じた。そして、ラドムは、振り返った。やはり……。先ほど倒したはずの魔物が、よろめきながらこちらに歩いてくる。

「ソウルさん、逃げてください!!」

 ラドムはそう言ったものの、今のソウルには全く聞こえていなかった。魔物は、自分の心臓に刺さっているラドムの剣を引き抜いた。

 ラドムは地に突き刺さっているソウルの剣を引き抜き、ソウルの前に立ちはだかった。魔物は剣を一瞬引いた。ラドムは迷った。ここで、自分がかわせばソウルに被害が及ぶ。彼には、まだすべきことが……。ラドムは忠誠心が強いがゆえに、心は一つに決まっていた。魔物は二人に剣を向け、狙いを定めた。


 ソウルの背に生温かいものが触れた。ソウルはびくっとして、顔を振り向けた。

 ラドムの手だった。しかし、先ほどまでのラドムではない。服は血まみれで、顔色が悪い。目は充血して、この一瞬に何があったのかを物語っている。

「ラドム……?」

 ソウルは震えた声で呼ぶと、ラドムの手をとった。ラドムは何かを伝えようと、口を動かしたが、話す力さえ残っていなった。

 そして、ソウルは見た。魔物の心臓にソウルの剣が刺さっている。魔物は大きく吠えると、 ソウルたちに向って全速力で駆けだした。心臓を刺されながらも、形相はおぞましい。

 ソウルは恐怖で顔を歪ませ、目を閉じた。そのとき、鈍い音とともにすごい勢いで、ソウルの手からラドムの手が離れるのを感じた。

 ソウルははっと目を開いた。ソウルは自分の目を疑った。そして、それと同時に悲しみと怒りが体の中からこみあげた。

 魔物のなぎ払った腕がラドムに直撃し、ラドムが中に浮いた。そして、そのまま深い谷底へと落ちて行く。すぐにラドムの姿は見えなくなり、魔物はまた吠えた。

「ラドム!! う、うそだろ!?」

 ソウルは愕然としたが、今やるべきことはすぐにわかった。

 ソウルは剣も持たず、魔物に向かって走り出した。殺してやる。ずたずたの八つ裂きにして、斬り裂いてやる!!

 しかし剣も持たない彼は、魔物の腕に軽くはねのけられ、ゴロゴロと地面を転がった。手をついて立ち上がろうとしたが、目が回ってあたりの光景がめちゃくちゃになる。

 そのとき、思わぬ出来事が起こった。ソウルと魔物のちょうどの真ん中あたりの地面に亀裂が走った。そして、大きな音を立てて亀裂は次第に広がり、地面は真二つに割れ始めた。地が揺れている。

 ソウルは飛びのき、なんとか落ちずに済んだが、魔物は底の見えない地底へと落ちて行った。ソウルの剣は奇跡的にも、魔物の体から抜けていたため、ソウルの手元に戻ってきた。ソウルは剣を拾い、ウッドの亡きがらを抱え、その場を離れた。

 ウッドを安全な所に置くと、一段と揺れが激しくなり始め、その瞬間、ソウルの剣が輝き始めた。

「な、何だよ?」

 ソウルは剣を地に突き刺して揺れに耐えた。

 すると次は、ソウルの周りの地面が割れ、炎が噴き出した。ソウルは逃げ場を失った。何本もの炎の柱がソウルを取り囲んだ。

「ど、どうすればいいんだ?」

 噴き上がった炎は生き物のように、ソウルの周りを旋回し始めた。ソウルは迫り来る炎に怯え、動けなくなった。そして次の瞬間、炎が一度離れたかと思うと、ソウルを包み込んだ。

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 ソウルはこの世のものとは思えないほどの激しい悲鳴を上げた。


 不意にソウルを包んでいた炎がはじけて消え去った。

 そして、そこに立っていたのは……ソウルだった。しかし今までの彼とは違っていた。

 目つきが変わり、強い力を感じる。手にしていた剣も形が変わって、綺麗な銀色だった剣の刃身の部分が真っ赤に染まっている。刃の部分は銀色のままだったが、切れ味が比べ物にならない。その根元には、何かの文字が刻まれてあった。鍔は大きな翼の形へと変形し、鍔には紋章が映し出されていた。

 そして、もうひとつ彼が手にしていたものがあった。石。それも、ただの石ではなかった。手のひら程の大きさで、縦に長細く、両先はとがっている。うすい紅色で、ほのかな温かさで包まれていた。先ほど、ウッドが話していたものだろうか。

 その石は、静かに光り輝き、神々しさをあたりに漂わせていた。

 そう、これが魔石と呼ばれるものだった。ソウルが手にしたのは、朱の魔石。この魔石を通じて大きな力がソウルに宿った。

 ソウルが小さい頃に父親から聞いた、「お山の神さま」が―――




 こんなめちゃくちゃ不定期な更新ですが、


 末永くよろしくお願いします!!

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