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気が付いた事。《羞恥の始まり》

はぁ、まさか香恵さんがよりによって今日に帰りが遅いとは。


仕方ない、帰ったら俺が佳奈を病院に連れていこう。


佳奈は大丈夫って言ってるけど首から下がピクリとも動かないのに大丈夫なんてありえるか。


そして家に着くと鍵を開けて家に入る。


「ただいまー。」


荷物を置くために一旦自分の部屋に行ってから妹の部屋の前へ。


そしてそこで一つの不安が頭を過ぎる。


まさか死んでないよな?


その考えが浮かんだ途端に体中の血の気がサァーっと引く。


「か、佳奈っ?起きてるか?」


「え、う、うん!起きてるよ!」


佳奈の声。


たったそれだけの声で俺は息が詰まりそうなほどの恐怖から解放され、


「はあぁぁぁ。」


と大きく息をつき安堵した。


「入るぞ、いいか?」


「...う、うん。」


ガチャと扉を開くと当然佳奈はベッドの上。


俺の方に顔を向けずに真っ直ぐ天井を見ている佳奈の顔は少し赤く感じる。


「大丈夫か?」


「う、うん...大丈夫だよ。」


「...まぁ、それならいいけど。昼、何か食べたい物あるか?」


病院は昼ごはんを食べてからでも大丈夫だろう。


「う、うーん、お昼は...ねぇ、親子丼が食べたい。」


「親子丼か、分かった。じゃあ、作って......く......る。」


「......お兄ちゃん?」


「.....................。」


俺の思考は完全に止まっていた。


そして少しの間をもって何とか頭を回転させるが、どうしても辻褄が合わない。


だってどう考えてもおかしいのだ。


佳奈は動けず、この家には佳奈以外の人間は俺以外には来ていない。


なら何故、俺が学校に行く前にはなかったはずの佳奈のノートが机の上に広げられているのかと。


「...お、お兄ちゃん......。気づい、ちゃった?」


佳奈の声に恐る恐る振り返ると佳奈は顔を真っ赤にして、今にも泣きそうな顔をしている。


「......やっぱり、そうなんだな。」


「.........うん。」


佳奈の声に朝のような元気はない。


まぁ、これだけ俺を心配させてくれたんだ、怒られると思っているのだろう。


「...はぁ、安心しろ。俺は別に怒ったりしない。」


そう、怒ったりなどしない。


確かに、こんなめちゃくちゃな嘘を付いて人を心配させるのは悪い事だ。


だが、それでも。


それでも佳奈がこんな事をしたのには何か事情があったのだろう。


佳奈はとてもいい子だ。それは誰よりも俺が一番良く分かっている。


そして、今の俺は怒りなどよりも嬉しさが勝って怒る気にもならないのだ。


佳奈が何の病気でもなかった、それが何よりも嬉しくて仕方ない。


「...お兄ちゃん......ごめんね...。」


「いいよ、気にするな。」


謝る佳奈に近づいてその頭を撫でる。


「...ごめんね。...動けないからって、もう中学生なのにお漏らししちゃって...。」


「...............は?」


ゆっくりと着ている布団をめくると佳奈の寝ている下のシーツはびっしょりと濡れていた。


.........うそ......だろ?


どこまで本気なんだよ...。


「と、とりあえず、タオルを持ってくる。」


そう佳奈に言い残してから部屋を出た俺は頭をフル回転させ、これからの俺が取るべき行動を探した。


動けないというのが演技だと気がついている事を打ち明ける選択肢はこの状況では妹の羞恥心と覚悟を考えれば既に却下。


それ以外の選択肢を必死に探すが、俺の頭で考えられる残された選択肢はたったの一つ。


気付かないフリをしてこの状況を乗り切る。それ以外にはなかった。


「タオル持ってきたぞ。」


「...うん、ありがと。ごめんね。」


「だから気にするなって。動けないんだから仕方ないだろ。」


..............さて、まぁ、俺が気付かないフリをするのは別にさして難しい事ではない。


問題は......、


「どう...しようか。香恵さん帰ってこないから俺がやるしかない訳だが......。」


「...............いいよ。」


「えっ?!」


「...お、お兄ちゃんになら、見られたり、触られたりしても...別に嫌じゃ...ないよ。ちょっと......恥ずかしいけど。」


「......そ、そうか。」


とてつもなく緊張し、心臓のバグバクが止まらない。


いくら妹とはいえ、もう15歳。


流石に何も感じないなんて言いきれるはずがない。


というか、もういっそのこと俺が気がついている事を喋ってしまいたいくらいだ。


「............。」


佳奈は顔を逸らして俺に見えないようにしているが、見えている耳は真っ赤に染まっている。


...............だぁあ、くそっ!


こんな態度でやってたら余計恥ずかしいわ!


もう考えるのは辞めだ。


俺は妹の体には興奮しない。


俺は妹の体には興奮しない。


俺は妹の体には興奮しない。


頭の中でひたすらにそれを繰り返し自己暗示をかけると男としてではなく兄としての態度へと切り替える。


「じゃあ、取り敢えず風呂行くか。」


「...う、うん。」


「持ち上げるぞぉ。」


そう言ってから朝食の時と同様、お姫様抱っこで佳奈を持ち上げ、部屋を出て脱衣場まで運ぶ。


「じゃあ、脱がすけど構わないな?」


「ぇ......うん。」


本人の了解を得たところで取り敢えずは服とズボン。


全く体を動かさない佳奈の服を脱がすのはかなりコツがいるものの、四苦八苦しながらもなんとか脱がす事が出来た。


さて、あとは下着だ。


たしかナイトブラって言ったっけ?


まだ成長盛り。そんなに胸は大きくない佳奈だがもう付けているようだ。


というか、前に佳奈が香恵さんに、


「このナイトブラは胸の成長に良いんだよ!」


なんて話しているのをついうっかりと聞いてしまった事があったっけ。


「......ぁ...。」


とまぁ、そんな事を考えながらもきっちりと自己暗示を繰り返しながら躊躇うことなくペペィッと残りの下着も脱がせて衣類を洗濯機へと放り込んだ。


佳奈は小さく声を零すが勿論気にしない。


気になんてしていては理性がもたない。


ズボンを軽く巻き上げて佳奈をお姫様抱っこしたまま、風呂場へと入り、椅子へと座らせる。


が、もちろんここでも体の力を抜いている佳奈だ。


背もたれのない椅子に座る事は出来ず、あまりしたくはなかったが、部屋でのベッドと同様、壁にもたれ掛かるように座らせた。


佳奈は俺と面と向かい、そして身体を隠すことも出来ぬこの状況にかなり恥ずかしそうにしている。


「お湯かけるけど、熱かったら言えよ。」


「うん。」


キュッとシャワーのコックを捻り、水がお湯になるのを待ってから佳奈の体へとかける。


「ん、ちょうどいい。温かい。」


「そりゃ何より。ついでだし髪も洗うか?」


「お、お願いします。」


なぜ敬語?


まぁ、いいか。


俺は佳奈と香恵さんがいつも使っているシャンプーを手に出してから佳奈の頭に付ける。


「そういえばこうやってお前の髪を洗うのも久々だな。」


「そうだね。お兄ちゃんが小学生の時以来だもん。」


「だな。まさかまたこんな時が来るとは思わなかったよ。」


なんて軽く会話してお互い気を紛らわせつつ、髪を洗い終わり、そして体へ。




おかしい。絶対におかしい。


確かに私の体はボンキュッボンとは言えないし色気もないかもしれない。


でもだからって、


「んじゃ次は体な。」


だからってここまで無反応とかありえない!


襲ってくれても一向に構わないけれど、お兄ちゃんの事だからそれはないだろうって覚悟はしてた。


でも、ここまで無反応で接されると恥ずかしがってた私の方がバカみたいに思えてくる。


現にさっきからもう恥ずかしさはどこかに行っちゃって私まで普通に喋っちゃってるし、こんなの私が考えてたシナリオと全然違う。


......仕方ない。本当はこの手を使うのは恥ずかしくて辞めようと思ってたけど......もう使う!


「お兄ちゃん。」


「ん?」


「私、肌を傷つけないように身体はいつも手で洗ってるんだけど。ダメかな?」


タオルにボディソープを付けようとしているお兄ちゃんに私渾身の爆弾を投下する。


さぁ、どうする?お兄ちゃん。


「あ、そうだったのか。じゃあ、俺も手でやったのでいいか?」


「え......あ、うん。」


嘘......でしょ...。


あまりの防御力の高さに絶望を覚えた直後、お兄ちゃんは手に出したボディソープを両手で馴染ませ、全く躊躇う素振りもなく私の肩へと塗りつけた。


「こんな感じでいいか?」


「...あ、うん。そんな感じ。」


ちがう、私が欲しいのはこんな感じじゃない!


で、でも、あれだよね。


肩とか腕は普通に触れるけど、胸とかになるとやっぱりお兄ちゃんも......。


なんて考えている内に肩の次に洗っていた腕が終わり、そしてあっさりと私の慎ましやかな胸をムニュンとお兄ちゃんの手が覆い隠した。


「...ぁん......。」


むぎゃぁぁあああああ!!!!


不意打ちすぎるでしょ、お兄ちゃんっ?!


あまりに突然の事につい声が漏れて慌てて口を噤み、恐る恐るチラリとお兄ちゃんの顔みてみる。


.........あれ?ちょっぴり顔赤い?


と思ったのもつかの間。


「んひゃっ、ちょ、ちょっとくすぐったいよ、お兄ちゃんっ...!」


胸のゾーンを惜しげも無くあっという間に過ぎて次はお腹にお兄ちゃんの大きな手がスルスルと這い回る。


特に横っ腹は突っつかれるだけでも辛いくらい肌が敏感なだけに、声を我慢するどころか、体をもじって逃げたい衝動に襲われる。


「...お、お兄ちゃんっ!...おなか、だめ......だめぇぇぇえ!」


こんなの絶対におかしい。


お風呂は今日の作戦の一番の攻めどころだった筈なのにお兄ちゃんはガチの真顔だし何で私が攻められてるのっ?!


それからもお兄ちゃんの鬼畜過ぎる攻めは幾度と続き、体を動かさない事に全力を尽くしていた私は貴重なお風呂イベントで大した実績を残すことも無くただただ綺麗になって行くのだった。


ブックマーク、評価などして頂けると嬉しいです。


今回はお風呂回。


妹視点を書いてる時が一番楽しかった……。

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