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天使と狐と人間と [仮題]  作者: 七枷静樹
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出会い

  ピピピッピピピッ

  薄暗い部屋に音が響く。

  その部屋は机やベッド、本棚といった必要最低限の家具しかなく大きさの割りに広く感じられる。

  その部屋の中で一番幅を取っているベッドの上では部屋の主である少女が寝息を立てている。

  歳は14、5歳くらいか。

  少女が呻くような声をあげながら寝返りを打つと、腰に届く程に伸びた瑠璃色の髪が乱れる。

  (音が聞こえる。なんて冷たい音なんだろう)

  ボーッとした頭で考えていると音は止まって急に静かになる。

  布団の暖かさに幸せを感じていると、また音が鳴り出した。

  (どうしてこの幸せを邪魔するんだろう)

  そんな事を考えながら目を覚ます。

  枕元にある時計のアラームを切ってからカーテンを開いた。

  降り注ぐ太陽の光と天使が国を覆うように張る結界の淡い光に目を細目ながら窓を開け、清々しい風を浴びながら伸びをした。

  思わず猫の様な声が漏れた。

  暫くの間外の景色を眺めていると、視界の端に何かが見える。

  気になって目を向けると、一対の翼を持つ天使が白い羽根を撒き散らしながら飛んでいた。そして、その天使を追うようにもう一人の天使が飛んでいる。

  三対の翼を持つ、天使の中でも最上位の熾天使だった。

  戦闘でもあったのかな?

  天使は悪魔や感染した生物を変異し凶暴化させるベアトリアウイルスの入ってこれない、結界を張ってある国へ避難してくる事がある。

  今日はウイルス感染した生物か、それとも悪魔がでたのかな?

  そんな事を考えていると、少し離れた住宅街から黒い球体二つが天使達をめがけて飛んできた。

  熾天使は難なく躱すが、二翼の天使は避けられずに直撃した。

  球体が飛んできた方を見て驚きを目を見開いた。

  公爵の格好にコウモリの様な大きな翼を持つ悪魔がいたからだ。

  人型で公爵の格好をした悪魔は強大な能力を持ち、数いる悪魔のなかで最上位だと言われていてる。そして、その強さは熾天使と同等されていた。

  熾天使と同等とはいえ悪魔が動いている。多少動きづらそうにしているけど攻撃をするくらいは問題なさそうだ。

  どう動くのか見ていると、すーっと地面に吸い込まれるように消えていった。

  天使達へ目を向けると、二翼の天使は羽ばたき一つすることなく落ちていた。

  「まさか、気を失っている…?」

  そう声に出したとき熾天使が追い付いた。

  安心して息をついた瞬間、熾天使が殴り付けて、その場に浮遊した。

  速度を上げて落ちてゆく天使。

  間もなく激突する音と共に落下地点である公園から土煙が舞い上がる。

  熾天使は土煙の中心へ光弾を数発撃ち込むと、反応がない事を確認してから結界を抜けて天界のある雲の上へと戻っていった。


  身体が動いていた。

  パジャマ姿のまま部屋を飛び出し、転がるように階段を降りて玄関へ。適当な靴を履き公園へと走る。

  公園は森に囲まれていて木々の間にぽつぽつと家が建っている。

  まだ六時過ぎという事もあるが悪魔が街中に出たからか、窓から顔を覗かせている人はいても外に出ている人は私以外はいなかった。

  森を抜けてすぐに花壇に囲まれた公園にたどり着いた。

  土煙はまだ薄く残っているが、見えない程ではなくすぐに天使を見つける事ができた。

  右目の辺りや左腕、右腿からの出血が酷いが他はちょっとした切り傷や擦り傷といった比較的軽い傷だけのようだ。

  あまり身体を揺らさないようにして背負うと小走りで家へと向かう。

  天使を背負って走る姿はとても目立つ筈なのに窓越しの瞳に気付かれる事はなかった。


  家に着いて止血と傷の手当てをしようとベッドに寝かせて思わず見とれてしまった。

  人間にすれば私と同じ14、5歳くらいで、ミディアムに切られた薄い金髪に桜色の唇、色白で華奢だがうっすらと上下する胸は私より大きく、同じクラスの子達と比べても大き目だ。

  少女から大人へと変化しつつある身体を包むのは白いノースリーブシャツにに青のネクタイ。その上にノースリーブで膝丈のサマーコートに青色でチェック柄のプリーツスカートを穿いている。

  左手首には白と赤で彩られたブレスレットを着けていた。

  傷に目がいき、慌てて手当てを施す。出血の酷かった右目の周りや左腕、右腿にはガーゼを当て包帯を巻き、他の傷は消毒や絆創膏で十分だった。

  天使であることを示す翼は所々羽根が抜け落ちている事を除けば怪我などはなかった。

  「今日学校を休もう」

  そう呟きながらリビングへ。

  トーストだけといういつもより寂しい朝食を取って、担任の先生に電話を入れた。

  先生は国を護ってくれる天使なのだから、傷が良くなるまで学校は休んで看病するように。また、困ったことがあったら学校も協力するとの校長の言葉を伝えられて電話は終わった。

  自分の部屋に戻ったら目が覚めている、なんて事はなく本を読んで過ごた。

  結局この日は起きる事なく、ソファーに横になって余っていた布団を掛けて眠りについた。

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