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寿司屋の一平ちゃん 最終話

 そして次の日全く自分の浅はかさに気付かされる言葉を妻から一平は打ち明けられました。


 「私があのお土産の秘密に気付かないとでも思った?例え不格好でも、あれだけの舎利を炊ける人間は貴方しかいないもの。大体あんな下手くそな寿司屋存在するかしら?」

 ケラケラ笑いながら華那は言いました。

 妻の目は誤魔化せなかったかと一平は頭を掻いた。「それにしても人差し指と中指と薬指、それも利き腕の、それが麻痺しているのにどうして握りが出来たの?そんな力有る筈ないのに……」

 

 実はと一平は事の顛末を話しました。


 「アメリカの神経内科の医師とその友人であるポーランドに住んでいる日本人の寿司職人、二人に頼み込んでリハビリしていたんだ。一平さんの為ならとわざわざ来日してくれて、俺の家で一日中住み込みで握りのリハビリをしてたのさ。それでこれならと親指と小指だけで『タテ』と『ヨコ』なら可能性がありますよ。頑張りましょう!と深川さん、かなり繁盛している回転寿司の主任兼店長に言われたんだ。名門財団で最高の環境の中リハビリの研究をしている名医ファフナー医師も『何回も反復練習していれば麻痺している指が動く様になる可能性はあります。ただしオペが必要ですが』ってね」


 「そうだったの……じゃあもちろん……」

 「ああ、アメリカに行く」

 「分かったわ。貴方の決心は。でも条件が一つあります」神妙な面持ちで華那は言った。

 「私と花澄も連れていく事!」

 これには一平もビックリした。「お前そんな……今は渡航費用だって馬鹿にならないし入院になるからお前の受けるストレス、それに花澄の学校だって……」

 「貴方は余計な事を考えないでリハビリとオペに備えて!私達、そんなに弱いかしら?貴方の事何時も見て来て頑張り屋で負けず嫌いな貴方がこのままで終わる筈ない物!」「お前……ありがとう」一平は涙ながらに礼を言った。そしてオペを受けた一平は奇跡的とも言える程の期間で麻痺の七割は回復に向かっている、と言う診断を受けました。


 「華那、花澄ちょっとこれを食べてくれないか?」

 そう言って差し出されたお寿司。シャリはピカピカに光り、形はまるで機械が握ったかのように精巧無比

の美しいフォルムでした。


 「美味しい!!」華那と花澄は驚きの声を上げた。ネタとシャリの間には空気が無く、シャリとシャリの間には程よく空気が入っていてパラリと口の中で解けるのです。


 「パパ凄いよ!またお店だそうよ。私アメリカで友達も結構沢山出来たからここに住みたいな!」

 一平は驚いたが、日本の一流店の寿司にはまだまだ及ばないけれどもSUSHIならば通用するかもしれない。「華那……」「分かってるわ。また寿司職人に戻りたいんでしょう?いいわ、アメリカで力試し、しましょうよ!」「ああ、頑張るぞ!人生も仕事もこれからだ!」


 その後寿司処一平アメリカ店はチェーン店が出来る程大繁盛したのでした。

 現地の人にはIPPEIちゃんと呼ばれ愛されているそうです。


fin. 

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