寿司屋の一平ちゃん 第3話
その日はある特別な日でした。
真っ暗な部屋の中で嬉しそうに駆け寄ってくる愛犬のコルフォード。「なぁ二人は何処に行ったんだ?」ワンワン! 興奮気味のコルフォード。
突然クラッカーが鳴った。パッと明かりがついた。
「パパお誕生日おめでとう!」一瞬頭の中が真っ白になった。自分の誕生日も忘れてしまう程俺は廃れて忙しかったのかと悲しい気持ちになったが、花澄の笑顔を見ていると幸せな気分になる事が出来た。
「貴方今日はお酒呑まなかったのね?」
「いや、誕生日だったとはすっかり忘れていたよ。帰り道やけにカップルが沢山居るなとは思ってはいたけれどお前達にケーキを食べさせてやりたくてね」
「花澄楽しみにしていたのよ。親孝行がしたいからママ今日はパパを絶対喜ばせる仕掛けをしようねって」
天井には飾りが彩り苦労の跡がうかがえる。これ程までに家族に愛されていた事を知って涙を禁じ得なかった。
「花澄クリスマスケーキを買って来たぞ。一緒に食べよう」
「うーんパパ私ケンタッキーのチキン三つも食べちゃった。でも甘い物は別腹なのー」
どこでそんな言葉を覚えたのか知らないがとにかく花澄の笑顔が見れて華那の気遣いが嬉しくて泣いてしまった。
「パパ何で泣いているの?」
「うん?嬉し過ぎてね。いつもゴメンな。お酒ばかり呑んでお前の事全然可愛がってやれなかったのに」
「だってパパは世界に一人だけの私だけのパパだもの。お酒呑みたい気持ち少し分かるよ」
花澄も泣いているようだった。華那が言う。今日は御馳走を用意したから楽しみましょうよ。家族と呑むお酒は楽しいものね!
「パパお酒好きなだけ飲んでいいんだよ。今日だけは特別!」
「いやお前たちの優しさと思いやりでそんな気も失せたよ。さぁケーキを食べよう」
「ねえ貴方、このもみの木綺麗でしょ。花澄と二人でデコレーションしたの。パパは今日だけは早く帰ってくる。絶対!って言ってね。優し過ぎて困った子だわ」
全くそうだ。俺なんかには出来過ぎな娘だ。
その日は大袈裟かも知れないが、人生で一番嬉しくて優しい気持ちになれた気がした。




