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寿司屋の一平ちゃん 第2話

 時を遡る事、一平が脳内出血を起こす前。  


 銀座の一等地に寿司処一平はありました。

 一平は現代様々な理由で使われなくなった伝説の握り「本手返しの一平」との異名をとり、客が途絶える事の無い超の付く人気店であった。その店の店長が一平でした。


 丁度、全国展開しようと言う話が持ち上がり、高度である本手返しを機械に寄って行うと言う前代未聞のプロジェクトが持ち上がり、これまた伝説となっている日本で五指に入る人工寿司握りの機械工場、高木本家機械所と契約が済んだ所でした。


 その時の一平は一日二時間しか寝ておらず、食事もせず躍起になっていた。自然と酒量も増えて、酔っ払ったまま会議に出席し居眠りしてしまう事もありました。そして店では評判を落とさない為に常に最高級のネタとシャリを使い、官僚や芸能人がお忍びどころか、わいわいがやがや集団で「一平さん大物のお客さんだから頼みますよ」等と言われ「うちの寿司はいつも最高ですよ!どこにも負けやしません」と息巻いていました。


 だがそんな生活が長く続けられる筈も無く、過労で倒れ病院に担ぎ込まれました。診断は「軽い脳梗塞」との診断で一平は医者を信用しない男だったので、気にも留めず薬だけ貰い定期健康診断等は「している暇は無い」と断り続けていました。そしてその時は来ました。脳の血管が破裂し脳内出血。幸い一命は取り留めたが、寿司職人の命である利き腕の人差し指、中指、薬指に麻痺が残りました。


 「金木さんこの程度で済んだのは本当に奇跡です。神様に感謝して下さい」医者にそう言われましたが、最早絶望の淵に居た一平の耳には届きませんでした。それから一平はますます酒に耽溺し出しました。寿司処一平は閉店を余儀なくされ、高木本家機械所に払うべきお金は土地を売って何とか工面し、ネームバリューの無くなった一平に高木本家機械所は見向きもしない様になりました。生き馬の目を抜く大都会、東京の風は冷たいと言うが、寿司の握れない寿司職人など誰も必要とはしていないのでした。

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