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転生師  作者: 桂慈朗
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(0)序幕

 あなたは、魂の存在を信じるだろうか。


 そう。良く知られている、あの魂である。


 例えば、「肉体としての生命活動と意識は異なる」。そう考える人もいるかもしれない。しかし、生命と意識を分けて考えるとすれば、それを繋ぐものとして魂は存在しなくてはならない。


 見方を変えて、人間以外、例えば虫に意識があるかと考えると、その事実を証明することは難しい。だが、一方で虫の意識を証明するのと同じだけ、人の意識がなぜあるのかを説明するのも困難なのだ。


 双子であっても、考え方も違えば意識も別個にに存在する。だからこそ、魂は人を一個の独立した存在として認識する上では、無くてはならない概念と考えられる。


 ここから始まる物語は、そんな魂の在り様が生み出した戦いの軌跡。


 人が人である以上のことを求めた時、人類という種は滅びへの混乱に踏み出していく、そんな歴史のターニングポイント。


                   ◆


 東京、夜の喧噪は俺にとって心地よい面と悪い面が極端な形で同居している。


 俺の名は芦田祐樹。27歳、フリーター。


 好きでフリーターをしている訳ではないが、結果的にいつ来るかもわからないアルバイトを日々待っている存在。社会的な立場は非常に弱い。だが、自分がこの社会には受け入れられないものだという認識は持っている。

 そう、社会が悪いのではなく俺自身が悪い。いや、俺という存在を生み出した運命そのものの責任である。


 だが、もう社会を呪うなどといった子供じみた通過儀礼は乗り越えた。俺は生きなければならず、そのためであればどんなことでもやってみせる。


 ただ、それでも孤独は辛い。人と触れ合いたくなる。特に夜になると、その思いが嵩じてしまう。昼間は家に引きこもっているにもかかわらず、夜になると奇跡を信じて街を出歩くのだ。


「うぅぅ。サブい」


 今日は、新宿の街を一人放浪している。まだ、冬の寒さが少し残っている季節。だが、東京という街はその季節感をほとんど感じさせてくれない。唯一感じられるのは数多く行きかう人々の服装。

 時間は、22時を回っている。この時間あたりから俺は街に出る。人込みを避けなければならない俺にとって、中心街はちょっと厳しい。だから、ほとんどは街のはずれで一夜限りの相手を探す。

 東京はいい。こんな俺の相手を出来る女性が、見つかる時があるのだから。


 ワンナイト・ラブ。


 言葉としては洒落ていても、実情はお寒いものである。それは、孤独の隙間を埋めるために、俺が誰かを利用する行為。しかも、大部分は拒絶以上の拒否感を示される。喧嘩になることも珍しくない。だが、俺が負けることはない。負けようがないのだ。


 同じ店にはほとんど行かない。同じ相手にも絶対に会わない、会ってはいけない。


- さて、そろそろ金の心配もしないといけないところだが。


 そう考えつつも、この放浪を止めるつもりはない。一晩限りの強烈なつながりを求めて。

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