下
笑い続ける僕に釣られるように、気付けば先輩も笑い声を上げていた。
二人きりの教室に、暫くの間、笑い声が響き渡る。
漸くひと息を付いたとき、僕は目尻に溜まった涙をそっと拭った。
「そろそろ帰りましょうか」
すっかり軽くなった水筒を鞄の中へとしまうと、僕は席を立った。
先輩がイスをしまったのを確認すると、僕らは放課後の校舎をぺたん、ぺたんと歩いていく。
先輩が玄関の開いてくれたので、僕は急いで靴を履き替え、玄関を抜ける。
先輩が玄関を閉めたのを確認すると、僕たちは再び歩き始め…そして、校門の前で僕は後ろを振り返った。
僕の後ろには人影はなく、ただただ夕日を浴びた校舎が、ひっそりと佇んでいる。
そこへはっきりとした声で、僕は今日も約束をする。
「先輩、また明日」
その時、確かに僕の目には、嬉しそうな、悲しそうな顔で微笑む先輩の姿が見えた気がした。
校門を潜ると、ふっと肩が軽くなるのを感じた。
僕は重くなった足取りで、一人きりの帰途を進みゆく。
久しぶりに書いた小説は折角なので時期に合わせた内容にさせて頂きました。
鳥頭も此岸にいられるうちに、さらに小説を書き溜めていきたいと思います。
最後までお付き合い頂きまして、ありがとうございました。