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第1話 イルス・テラス

 ん、あ~、聞こえてるよな?

 オレだよ、アルバシス・シュランツ。

『聖冠団』第一部隊隊長兼副団長という長ったらしく、重々しい肩書を持つ青年だ。

 自分で青年って……てか、青年ってどのくらいの年の事を言うんだろうな。

 因みにオレは23歳。


 さて、オレがこんな話をする為に外伝を作った訳じゃないんだよ。

 三年前の事件についてはもう本編で語られた。

 これは過去の物語ではない。

 これは、今現在から未来にかけて起こる事件。


 あ、この外伝ではオレがナレーションを務める。

 要するにオレが主人公だ。

 前回の番外編では、ロアールさんがナレーションをやっていて、微妙な感じになったらしい。

 今回はその反省を踏まえて、より微妙な感じにするつもりだ。

 まぁ、とにかく本編とは勝手が違うが勘弁してくれって事だ。


 ……そういや、さっきから本編本編言ってっけど、もしかして本編を知らない?

 それならせめて『総力戦ゲーム編』だけでも読んでおくべきだぞ。

 いや、そこから読んでも話が解らないから、最初から読んだ方が良いな、うん。

 ん?判ったか?そうだ、番宣だ。


 とまぁ、色々言いたい事はあるだろうが、物語の始まりだ。




 Sacred Flame of Darkness Another Story ~The Enlistment Incident~




 サブタイトル長いなぁ、なんて事を思いつつ、オレは廊下を歩いている。

 一応暇じゃない。つーか、超が付くほど忙しい。

 団長が殆ど仕事しねーから、オレにそのツケが回ってくる…。理不尽な世の中だよな。

 まぁ、そんな事より、今は色々と不幸な条件が重なってんだ。

 毎年この時期は色々と忙しいんだが(何故かは聞かないでくれ)、なんと、『聖冠団』は新部隊を結成し、それに合わせて入隊試験を行うのだ。

 しかも面接官はオレっていう…。(勿論団長と他隊長達も付き合わせるが、基本オレがやる)

 はぁ、誰かオレに十回程殴られてくれ…。


「副団長、おはようございます!」

「ああ、おはよう………すまん、ちょっと殴られて貰って良いか?」

「えぇっ!?そ、それは……命令ですか?」


 ちょっと頼んでみたけどやっぱダメだよな。

 ていうか女の子に頼むのがダメだったか。


「め、命令なのでしたら……お願いします!」


 おぉ……マジか。

 この子マジか。

 顔真っ赤にしてそんな事言わないでくれ……。

 オレの良心に剣を突きたてないでくれ……!


「じょ、冗談だよ。副団長ジョークだ」


 とりあえず苦笑して誤魔化す。

 これがミナスかルアに見られてなくて良かった。

 問答無用で制裁される。


「オレ忙しいから!冗談に付き合わせて悪かった!」

「い、いえ、こちらこそ申し訳ありません!」


 コイツ第六部隊の中でもルア派だな。

 ガッチガチの真面目タイプ。

 ミナス派ならこんな性格でやっていけるわけがない。

 かといって、ミナスを嫌っている者が居る訳ではない。

 彼女は案外面倒見が良い。


「じゃあまた」


 とか言って、オレはきっと彼女の顔を忘れるだろう。

 団員が数百人いるのに一人一人顔を覚えられないのだ。(流石に自分の隊の者の顔と名前は覚えるが)

 名前……聞いてないな、そう言えば。


「あー、えっと……まずは各部隊長から第七部隊の隊長と副隊長の推薦の書類を回収しねぇと―――――っ!!」


 オレはその場から横に数歩分ジャンプする。

 すると、後方から剣が飛んできて、俺が居た場所に突き刺さる。


「さすが副団長!」

「お前……」


 振り返ると、先程の少女がニッコリと笑っていた。

 この剣はまずあの子が投げたと考えて良いだろう。


「何すんだよ。最近寝不足でイライラしてんのに……」

「それは申し訳ございませんでした!ですがこの目で副団長殿の実力を確認したくて……」


 とりあえずスパイとかそういうのじゃないようだ。

 いや、これが演技だとするのならば、オレは騙されている。


「アレ刺さってたらどうするつもりだったんだよ」

「刺さるかもしれなかったのですか?」

「いや、そりゃねーけどさ」


 あんな素人みてぇな攻撃が当たる訳が無い。

 寝ていても……はさすがに無理だが、目を閉じていても躱せる。


「本当に申し訳ありませんでした」

「………そういや、名前は?」

「はい!第六部隊所属、イルス・テラスです!まだ胸はあまり出てませんが成長中です!」

「ふーん、お前の名前は覚えとくよ」


 良い意味でも、悪い意味でも。

 いや、悪い意味の方が大きいかな。

 つーか、訊いてねぇ事答えたぞ。

 良いんだけどあんまし興味無い。

 いや、そりゃあオレだってそういうのに興味はあるが、今この状況では興味無いという事だ。

 決してホ〇という訳ではない。


「な、名前を……ありがとうございます!」

「んじゃ、オレ忙しいから」


 そう言って俺はその場を去った。

 はぁ、別にストレス溜まりはしなかったけど、解消もしなかった。

 イルス・テラスか……。

 変な奴だったな。


「副団長……やっぱり、カッコイイなぁ」


 イルスはオレが去ってからそんな事を呟いていた。

 かなり小さい声で、聞こえないように言ったのだが。

 オレには聞こえていたが(・・・・・・・)











 団長室。


「団長、リストで来たんで後は頼みます」

「え~、アル君やっといてよ~」

「無理言わんで下さいよ。オレだって忙しいんですから」

「だよね、それじゃ、今すぐ決めるからちょっと待って」


 そう言ってオレから書類を受け取る。(さっき各隊長から集めて来た)

 各隊から約5人ずつ。

 プロフィールとか顔写真とかその他諸々で、第七部隊隊長と副隊長を決めるのだ。

 能力が全員一緒なので、そういった所でしか選べない。

 だが一応、今の所の候補を決めるだけで、変わる事もある。

 それにしても今すぐ決めるとは……?

 実は、光の速さで仕事もできるのか?

 もしできるのなら団長と言えども一発殴ってやろう、そう思った時、団長は書類を全て上空に放り投げた。


「団長!?」

「か~ら~の~」


 団長は適当に手を伸ばし、二枚の書類を取った。


「こっちが隊長で副隊長ね、オッケー?」

「オッケーな訳ねぇだろぉぉおおお!!!」


 ちょっとだけスッキリした。

 にしても、この団長バカなんじゃねーか?

 仕方なく、オレは床に散らばった推薦の書類を拾い集める。


「ん?」


 ある一枚を見てオレは眉を顰める。


「どったの?アル君」

「なっ、ちょっ」


 オレから書類を奪い取る。


「はっは~ん、アル君はこういう女の子がタイプなのか~」

「違います。顔に見覚えがあっただけです」


 そう、その女の子。

 それは、先程オレに刃物を投げつけてきたちょっとおかしい子。

 肩の上で切り揃えられた青い髪に、自称成長中の女の子。

 そういえば、容姿の説明はしてなかったな。まぁ良いや。それはまた今度。

 話しが逸れたが、その女の事は、イルス・テラスだった。

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