二十五話、二年前そのさん
俺と遊は二人で階段を登っていた。現在地は遊の家。階段を登った先には、遊の部屋があった。遊がドアを開け、二人ではいる。俺が気まずそうにしていると、
「まぁ、適当に座ってくれ」
と、微妙にいつもと違うような雰囲気で遊が言ったのだった。
俺は何故遊と二人でここにいるのだ? 確かに遊に誘われたからだ。だが、その場で断ることもできたはずだ。何故俺はついてきたのだろうか? 無言の部屋で、俺は自問自答した。
「ああ、俺と沙羅の件だ」
遊が言った。俺は無言を貫き通す。なにせ、喋ることがない。今から遊ぼうよみたいな雰囲気は微塵もなく、重い空気だけがその空間には漂っている。
「どう思っているんだ? 俺らのこと」
遊は率直に聞いてきた。なら、俺も思ったとおりに、オブラートを何十にも重ねながら、答えようか。
「おめでとうって思っているよ。傍からみてもいいカップルだと思うな。お幸せに」
自分でもわかるほどに月並みな言い方だった。遊は、「そうか」とつぶやき。
「おまえはこれでいいんだな?」
と、言った。背筋になにか怖いものが駆け登った感覚がして、体感温度が二度程度下がった気がした。何故遊がこんなことを言うのか、それはわかっている。わかっているが、返答に値する解は何処にもない。作るしかない。解を。
「これでいいと思っているよ。なにせ、女子にモテモテな遊と、男子からのアイドル的な人気者の沙羅じゃないか。俺が出る幕なんてないし、二人が俺と仲良くしてくれるので、もう感激で胸がいっぱいだよ」
オブラートに包みすぎて変な台詞になったな。と自覚しながらも言った。
「おまえ自身は俺らの関係がこれでもいいんだな?」
なんだろう、なんか、今回は声に怒気が入ってたと思った。なるほど、もうこっちのことはバレてるのか。でも、いいじゃないか。もう終わったんだ。おまえに俺の好きな子をとられて、終わったんだよ。生活だって、おまえ等がいないと、一層わびしい者になる。なんだ俺は? 寄生虫か?
「あぁ、そういうことだ」
心の葛藤は無視した。気にしたら喧嘩になる。ぶつかり合えない。何故だろうか。
「そうか……」
遊は寂しそうにつぶやいた。その顔は……後悔の色が見えた。わかっていると考え、俺は話す。
「おまえが気にする必要はねぇよ。おまえは十分リア充っぽいんだ。自覚を持て。俺になんか気にするなよ」
明確に二人で差がでた瞬間だったと、俺は思った。俺はもう向こう側には行けないし、遊はこっち側にはこない。上辺の人間関係が続き。卒業への道をとる。そして、二人はこれからも一緒に歩き、俺は一人で孤独に歩く。
朝日が射し込む窓。時計の針は6時を刺している。
「胸糞悪い夢だったな……」
誰もいない部屋。一人つぶやく。時間的には二度寝もできる時間だ。悩んだ。もし寝たら? これから先をもう一度見たいのか? いや、向き合わないといけない。その後を、思い出すことにした。