表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/33

二十五話、二年前そのさん

 俺と遊は二人で階段を登っていた。現在地は遊の家。階段を登った先には、遊の部屋があった。遊がドアを開け、二人ではいる。俺が気まずそうにしていると、

「まぁ、適当に座ってくれ」

 と、微妙にいつもと違うような雰囲気で遊が言ったのだった。

 俺は何故遊と二人でここにいるのだ? 確かに遊に誘われたからだ。だが、その場で断ることもできたはずだ。何故俺はついてきたのだろうか? 無言の部屋で、俺は自問自答した。

「ああ、俺と沙羅の件だ」

 遊が言った。俺は無言を貫き通す。なにせ、喋ることがない。今から遊ぼうよみたいな雰囲気は微塵もなく、重い空気だけがその空間には漂っている。

「どう思っているんだ? 俺らのこと」

 遊は率直に聞いてきた。なら、俺も思ったとおりに、オブラートを何十にも重ねながら、答えようか。

「おめでとうって思っているよ。傍からみてもいいカップルだと思うな。お幸せに」

 自分でもわかるほどに月並みな言い方だった。遊は、「そうか」とつぶやき。

「おまえはこれでいいんだな?」

 と、言った。背筋になにか怖いものが駆け登った感覚がして、体感温度が二度程度下がった気がした。何故遊がこんなことを言うのか、それはわかっている。わかっているが、返答に値する解は何処にもない。作るしかない。解を。

「これでいいと思っているよ。なにせ、女子にモテモテな遊と、男子からのアイドル的な人気者の沙羅じゃないか。俺が出る幕なんてないし、二人が俺と仲良くしてくれるので、もう感激で胸がいっぱいだよ」

 オブラートに包みすぎて変な台詞になったな。と自覚しながらも言った。

「おまえ自身は俺らの関係がこれでもいいんだな?」

 なんだろう、なんか、今回は声に怒気が入ってたと思った。なるほど、もうこっちのことはバレてるのか。でも、いいじゃないか。もう終わったんだ。おまえに俺の好きな子をとられて、終わったんだよ。生活だって、おまえ等がいないと、一層わびしい者になる。なんだ俺は? 寄生虫か?

「あぁ、そういうことだ」

 心の葛藤は無視した。気にしたら喧嘩になる。ぶつかり合えない。何故だろうか。

「そうか……」

 遊は寂しそうにつぶやいた。その顔は……後悔の色が見えた。わかっていると考え、俺は話す。

「おまえが気にする必要はねぇよ。おまえは十分リア充っぽいんだ。自覚を持て。俺になんか気にするなよ」

 明確に二人で差がでた瞬間だったと、俺は思った。俺はもう向こう側には行けないし、遊はこっち側にはこない。上辺の人間関係が続き。卒業への道をとる。そして、二人はこれからも一緒に歩き、俺は一人で孤独に歩く。








 朝日が射し込む窓。時計の針は6時を刺している。

「胸糞悪い夢だったな……」

 誰もいない部屋。一人つぶやく。時間的には二度寝もできる時間だ。悩んだ。もし寝たら? これから先をもう一度見たいのか? いや、向き合わないといけない。その後を、思い出すことにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ