二話!視線が注がれるのは友人
ギリギリとは言えないが、比較的遅い方のグループに入った時間で登校した僕と遊は、校門に入った。
遊は歩いている人の7割近くから挨拶される。女子8割男子6割ほどだ。別学年を含め。入学一ヶ月で。
日頃、遊を妬ましいと思うことは多々あるが、登校の時間ほど、『リア充』という言葉を実感するときはない。
俺も同学年の男子の一部とは挨拶する。だが、隣にいる遊を見ていると、『リア充』とは遠い世界のものなんだと実感する。月とすっぽん。
俺らは靴箱に入り、上靴を履く。多少遅れ気味なので、少し急ぎ足で歩く。
教室にはいると、降り注がれたのは視線だった。遊への。俺と遊両方へ注がれた視線もないことはない。だが、殆どは遊単体に向けられたものであり、女子の7割は、話をしながらも、遊を意識する。遊が
「おはよう」
と言った。つられて俺も、
「おはよう……」
と小声で言う。だが、俺の声がかき消されるくらいの大きさで、クラスの人たちからは、
「おはよう!!!」
と返ってきた。
俺と遊は席が遠いので、入り口で分かれる。軽く別れの挨拶をして、席に着く。何もすることがないと、周りの噂話を聞いてしまうのが、『非リア充』と言うものだろう?俺だって例に漏れずそのタイプだ。
鞄の中の教科書類を机に移しながら、周りの話を聞いていると、俺みたいな奴が何で、遊と一緒にいるのか。という毎朝恒例の噂が聞こえてくる。約3週間も聞かされれば嫌でも慣れ、初期の頃は傷ついていた俺の心は、今では鋼鉄の鎧に守られているようだった。
よくよく、周りの噂を聞いていると、いつもとは違う噂が聞き取れた。なんでも、3年生の先輩の朱音と言う人が、今朝、誰かにぶつかったようだ。
遊じゃねぇか。
まぁ、俺には関係がない。そう割り切り、朝のHRの前にある朝読書に備え、ラノベを机から出した。