十四話!追いかけられる友人side多田
四時限目が終わると、遊が、誘ってくる女子を断っているところだった。俺は少し時間ができると思ったので、机からラノベを出して、読んでいた。文字を追っていたとき、遊が近づいてきた。女子を追い払い終わったのだろう。
「空太、飯食い行くぞ」
遊がそう言う。俺が答えようと、口を開きかけた。
その時。タイミングを見計らったように、三井が出てきた。
「おーそれ禁書じゃん。最近のバトル物でも、結構おもしろいよねー」
バトル物って言っちゃったよ。遊が食いつくな。確実に。
「おう! やっぱそう思うよな! 禁書は超能力バトルでも、一級品だよな!」
案の定遊が食いついた。
「じゃぁさー昼飯の後、ラノベ談義しない? 不本意ながらこいつも入れてさ」
遊とデートとして、ラノベ談義をするらしい。え?俺が指を指されているって事は俺もか。
「おう、わかったぜ。空太もいいよな?」
今まで一言もしゃべっていなかった俺に振ってくる。いや、喋ろうと思ったら他の人が喋ってるだけだよ?
「おう。わかった。じゃぁ、飯に行くか」
さすがにこれ以上待たせたら、そばにいる健介と勇次郎が可哀想だ。
食堂に入った俺たちは、昨日と近くの席に座った。昨日の席はもう女子に占領された後だった。二日連続で同じ場所に座れるのはなかなか無いんだよな。
「よし、じゃぁ食うか」
遊が言う。
「おう、そうだな」
勇次郎が答えると、俺たちは飯を食い始めた。
昨日と同じように談笑をしながら、食べていたとき、北条が来た。まぁ確かに学校の中で昼休みはチャンスだろう。長いし。
そう思っていると、北条がこちらへ近づいてきた。そして、
「遊君! 一緒にお弁当を食べましょう!」
今俺たちで食っているのが見えないのか。入れて的なことを言うのが普通だろう。
「いえ、俺は空太と健介と勇次郎で飯食っているので、今日は遠慮しときます」
遊が丁寧な物腰で、言い返した。まぁ、周りに人が結構いるし、大勢の中先輩にタメ口を使うのは、厳しいだろう。
「そんな、キモオタとマッチョとガリ勉なんか気にしないで、結構かわいい私と、一緒にお昼を食べた方が、目の保養になるわよ!」
おい。この人自分で自分のことかわいいって言っているぞ。公衆の場で。大声で。痛いな。しかも俺のことキモオタとか言っているし。酷いな。マッチョは褒め言葉な場合もあるが、勇次郎は軽くキレてるな。言わずとも、健介もキレてる。まぁ、俺もだが。遊も不快感を露わにしているな。北条は気づいていないようだけど。
「いえ、僕は空太と健介、勇次郎と食べる方が楽しいので、残念ながら先輩のご期待に添うことはできません」
全力で引いているのがわかるほどの畏まりぶりだな。
北条が少し残念そうな顔をしてから、
「じゃぁ、食べ終わった後、校舎を回りましょ!」
まぁ、このくらいが妥当だろう。もう遊は予定があるわけだが。ラノベ談義という遊の能力バトルオタクに全力で拍車をかけるような予定が。
「いえ、この後も予定がありますので……」
そう遊が言うと、北条はトボトボと教室に帰っていった。その後俺らは何事も無かったように、弁当を食べた。