十話!待ちかまえられる友人
走った。凄く走った。北条を振り切るため、全速力で俺たちは走った。体力がない俺が着いていけるはずもなく、後半は息も切れ、歩いているような状態だったが、車が通りづらい道を通ったことがよかったようで、やり過ごすことができた。
昨日より、ギリギリに近くなった校門を通ると、
北条がいた。
遊は驚いた顔をし、俺は呆れてる。凄いと思うけどさ。凄いけどさ。犯罪すれすれじゃないのか、とため息混じりなことを心の中で呟く。
「さぁ、遊君! 私と一緒に登校してよね!」
はたして、校門から、げた箱までの道のりを登校と言うのかは、甚だ疑問だな。
「もう登校って距離じゃねぇだろ……というか遅れるぞ……」
遊がため息混じりに呟く。まぁ、確かにギリギリだし、ここにいても仕方がない。というか、北条は入学式で見かけなかったから先輩だろう。敬語は……ストーカーに敬語は使わなくていいな。うん。軽く遊と目配せして、
俺と遊はまた逃げた。
昨日の3倍のスピードで朝の支度をする。担任に小言を言われたりしたが、気にしたら負けだ。内心に響かないといいな。
昨日の続きのラノベを読もうとしたら、三井維織が、話しかけてきた。
ちなみに三井維織は、遊平和公平協定の中で権力が強く、軽く(?要検証)オタクが入っているので、情報収集をかねて、俺によく話しかけてくる。
「朝、校門凄かったねーどうしたの?」
「先輩?の北条って奴が、いきなり遊にアタックしだした。以上」
「これはやっかいなライバルがまた増えましたねー。また、工作しないとだよ」
裏工作の先導の4割近くが三井がやっている。地味に凄い。
「え?何かあったの?」
佐々木が話に入ってきた。
「先生に睨まれているから、後でな」
そう言って、俺は読書を開始した。
今日のHRは特に語ることもなく、せいぜい文化祭の説明程度だった。場所の細かい割り振りは来週の火曜らしい。激戦が予想される。
「それで、朝、なにがあったの?」
佐々木が俺に再び聞いてくる。後ろの席の三井が、
「朝、北条先輩がさー遊に果敢なアタックをしたらしくてねー」
「え?」
そりゃぁ遊がモテるのを知らないなら、こんな反応か。あのストーカーっぷりを見せつけたらどうなるのかね。
「ああ、朝は大変だったぞ」
遊が来た。それにより、女子の笑顔度が三割上昇!これが『リア充』効果ニコポか。何か違う気がするけど。
「ちなみに、遊の言家まで押し掛けてきた。走って逃げたけど」
俺が付け足した。
「強敵だねー」
「私の遊君に……」
二人とも遊に聞こえない声量で呟く。
「にしても、朝大変だったねー遅れたのはそれが原因ー?」
「半分はな」
遊が素っ気なく答える。
残りの半分は俺が遅いんですね。遅くてすいませんでしたね。話題そらすか。
「というか、遊、北条はどうすんの?」
聞いとかなきゃまずいだろ。
「逃げる!」
無計画だなーと思ってたら、チャイムが鳴り出した。午前中の授業が始まる。急いで準備をしなければ。