Prologue
ご覧いただきありがとうございます!夕餉湯気です。
今回は本命の投稿となります!
本作は、絶対的な力を持つ元最強貴族(龍)が、お茶と煎餅のレシピのために無双するハイファンタジー作品です。
クールでマイペースな主人公のギャップを楽しんでいただけたら嬉しいです。
面白いと思っていただけたら、ぜひブックマークや評価(☆☆☆☆☆)で応援していただけると執筆の大きな励みになります!
それでは、本編をお楽しみください!ぺこり
異世界ラザイアというのは大小様々な大陸、島々からなる星だ。
当然、多様な種族の国家が存在するが、その中央に位置する広大な原野は、数百年にわたりどの国家の版図にも入ることはなかった。
その最たる原因は、そこに陣取る独立家系——『ヴァンガーテ家』の存在である。
人の形をとり、公爵を名乗る彼らは、その実、人知を超えた最高位のモンスター——『龍』であった。
彼らは国を造らず、王を戴かず、ただ己の一族とその領地のみを守り続けてきた。
数万の軍勢が幾度となく侵攻しようとも、ヴァンガーテ家はたった数人の力と緻密極まる戦術によってそれを容易く退けた。
世界のあらゆる脅威や野心を無慈悲に粉砕し続けた彼らは、周囲の国々から化け物と恐れられていたが、その優秀な領地采配と人材教育の手法は後世の密かな憧れとなっている。
どんな大国も侵すことのできなかった不敗の領域。
しかし、その歴史は呆気なく終わりを迎えることになる。
異界より召喚された『勇者』と、神の加護を受けし『聖女』が戦争に参加したのだ。
壮絶な戦いの末、ヴァンガーテ家はついに排され、歴史の表舞台から完全に姿を消した——と、表向きの歴史には記録されている。
国家の偉大なる勝利。勇者と聖女の功績。
市井の人々は彼らを讃え、祝祭を上げた。
だが、その誰もが知らなかった。
ヴァンガーテを排した偉大なる『勇者』と『聖女』が、功績を讃えられるどころか、その強大すぎる力を恐れた国家の上層部と暗部によって、都合のいい道具として利用されているなどとは。
そして——世界を震え上がらせたヴァンガーテ家には、たったひとり(一頭)の「生き残り」が存在していたことも。
***
「……うーん、やっぱり苦味が出ないんだよな…」
風が静かに吹き抜ける街道の傍ら。
木々の木漏れ日が入る岩場の上で、ひとりの青年が一人ごちていた。
漆黒の衣服を身に纏い、酷く静かで底知れない雰囲気を漂わせた青年の名は——
レジウス・シント・モール・ヴァンガーテ。
かつて世界を震撼させたヴァンガーテ龍公爵家の最後の生き残りであり、指先ひとつで世界のあらゆる事象に無条件で亀裂を入れ、崩壊させる絶対能力【罅】の所有者である。
レジウスは手に持った素焼きの湯呑みから立ち上る湯気を眺め、微かに目を細めた。
そのままポケットから取り出した薄茶色の固形物——かつて聖女からもらった「センベイ」と呼ばれる異世界の菓子を口へと運ぶ。
ボリッ、と乾いた心地よい音が静かな森に響いた。
途端、彼の静かな顔が綻ぶ。
「ん〜!絶品!やはりセンベイは至高の菓子だ〜」
レジウスが求めているのは、かつて自身の元を訪れ、仲良くなった聖女が振る舞ってくれた、完璧な焼き加減のセンベイと最高のリョクチャと呼ばれる飲み物。
あの日、「もっと詳しい製法や焼き方のコツを教えてくれ」と頼もうとしたまさにその瞬間、彼女は連れ去られてしまった。
「……全く。一体どこにいるんだ…?」
世間では「国家の危機」だの「勇者と聖女の失踪」だのと騒がれているらしいが、レジウスにとってはどうでもいいことだった。
彼が旅に出た理由はただひとつ。
自分に美味しい煎餅とお茶の味を教え、その製法を教える前に奪われた聖女を探し出し——「レシピを聞いて助ける」。それだけである。
プロローグをお読みいただきありがとうございました!
センベイとオチャをこよなく愛するレジウスの旅が、ここから始まります。
次回(第1話)は、街道を進むレジウスの前にさっそく「邪魔者」が現れ、彼がその異能【罅】をどう使うのかを描いていけたらなと思っています。
初めての連載小説なのであちこちおかしい部分があるかもしれません。感想等でお教えしていただけると幸いです。
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それでは、また。ぺこり




