伝説は行く
伝説は行く
彼の名はグレアム、このゲームでは知らない人はいないほどにのプレイヤー(廃人)である
いつでも最初にレベルキャップ(その時点での最高レベル、アップデートによって最高レベルは上がっていく)に到達し、新ダンジョンを誰よりも早く踏破してwikiにあげている
そんな彼を一躍有名にしたのが魔族の城攻略である
そのダンジョンはPTでの攻略が普通となっているのだが、彼はその卓越した攻撃回避能力とモンスターの視界把握により敵の背後から忍び寄り時には一撃で倒し、時には無視して素通りするというどこのMGSだと言いたくなるような事をMMORPGでやってのけたのである
そしてさらにはボス戦においてはアイテムやスキルを効率的に使い、なんと一人でボスを倒してしまったのだ
その動画が某動画投稿サイトに投稿された時にその事実が発覚し、それを挑戦と受け取ったGM陣が魔族の城の難易度をさらに上げるという暴挙に出た
しかしそれをも難なくクリアした彼は「GMの敵」として有名になったのだ
そんな彼は今、初心者用のエリアでノンビリとくつろいでいた
彼が次に目的にした事、それは初心者を育てる事である
自分はもうGMに敵視(良い意味で)され、このままでは自分のせいでゲームの難易度が上がってしまう
その事で一番苦労するのは他のプレイヤーであり、その中でもゲームに不慣れな初心者たちであると彼は考えたのだ
このままではこのゲームは過疎化が進んでしまう!
そう考えた彼はインするときには(レベルキャップに到達した後に)初心者エリアに入り浸り、永遠と指導をしたり説明をしたりして一日を過ごしているのである
「さて、今日のえも……生徒は誰にしようか」
彼にも好みはある
暑苦しい男にするくらいなら綺麗な女にした方が何百倍もましに決まっているからだ
※ ※ ※
草原の中、シエラはポップしてくるモンスターを待ちながら空を見上げていた
このエリアにいるのは今は自分ひとり、マークとムーチョンは今はまだオフラインと表示されている
「暇ですねー」
最近はずっとマークと一緒に狩りを楽しんでいたりムーチョンとチャットをしていたのでシエラはちょっと寂しくなっていた
「そこの君、ちょっといいかな?」
その時突然、後ろから話しかけられた
どうやら誰もいないと思い込んでいたのでマイクの出力を切り忘れていたらしい
「はい?」
この前イキナリ声を掛けられたときにちょっと危ない目にあっていたシエラは声の主から少し距離をとってそちらをみた
そこにいたのは黒い鎧を着たグレアムという一人の戦士だった
彼を知らない人物はこのゲームの世界にはいないと言ってもこのゲームを始めたばかりの彼女には彼が誰だか分からないが
「いや、どうやら暇しているらしいので私と一緒に狩りでもどうですかってね?」
「狩りですか?」
「えぇ」
明らかに初心者の装備ではない人にそう言われても怪しさしか生まれないのだが
高レベルの人がこんな初心者用エリアでレベル上げをするなんて聞いた事が無い
「えっと」
「あぁ気にしないで下さい。私は最近、このゲームでやることが無くなってしまって、初心者の援護を主な活動にしているんです」
オンラインゲームでやることが無くなるほどやりこんでいるという事はただ一つ、シエラは最近ムーチョンによって教えられた知識から一つの単語を持ってきて
「あぁ!廃人さんですね!」
と言った
グレアムは本体に500の精神ダメージを受けた
しかしそんな事でへこたれる彼ではない、彼は英雄なのだ、その程度の精神攻撃で屈するようでは魔族の城を誰にも気が付かれずに切り抜けることなど出来るはずが無い
「ははは、そうとも言われる事があるね」
現実でもゲーム内でも
「ただ、そこまでこのゲームだけにのめり込んでいるわではないよ?」
他にも18禁ゲームやアニメにものめり込んでいるからである
「ちゃんと働いているからね」
マビノギで
「あ、そうなんですかー」
「そうそう。ただちょっと他の人よりもゲームが好きで寝る時間を惜しんでるってだけだよ」
これがゲームの英雄の実態である
現実の英雄も寝る時間を惜しんでいたようだが何故こうまでも違うのだろうか
「じゃああれですね?引きこもりでもないんですね!」
純粋な言葉により英雄は本体の精神に999のダメージを受けた(カンスト)
しかしそんな事でへこたれる彼ではない、彼は英雄なのだ
「あ、あはは。ところで狩りをしないかい?」
「あ!すみません!友達が来たのでそっちに行きます!ではでは~」
たったったっと走っていくシエラ
それを見送る英雄
彼は今日、久々の惨敗と言うものを味わった
しかし彼はこの程度ではへこたれない!彼は英雄なのだから!
「今日は、もう寝るか」
と考えていると目の前にフレンド希望のウィンドウが開いた
そこに書いてあった名前はシエラ
彼は進む英雄だから!
彼は今日、一つ大きなものを手に入れた気がした
「あ!マークさーん!」
「よう、初心者エリアでレベル上げしてたんだろ?どうだった?」
「一人で暇でしたがなんか途中から面白い人が出てきて話してました!」
「へー、そりゃよかったな」
「はい!」