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酒と決闘は首都の花

首都のとあるエリアに存在する酒場

そこには酒を出すと言うシステムの他に様々な特別モーションを設置している事から誰でも一度は入った事のある場所である

しかもログが流れることを気にせずに平気で一般チャットをするのが普通の場所で他人の会話が簡単に聞こえてくる、本当の酒場みたいなところなのだ

たまにヒソヒソと会話している奴もいたりとなんだか雰囲気も良かったりする


そんな酒場にシエラはいた

美女とマークの二人と共に一つのテーブルに腰掛けて話をしている

まぁ話題はもっぱらそこに座っている何も知らない初心者についてなのだが


「それでマーク、この超絶美少女初心者は一体どこで見つけてきたのよ!こんな初心者なかなか見付からないわよ!?今では『振りをした』初心者ってのが一杯なんだから!」


美女の名前はムーチョン

彼女はその手に持ったジョッキをテーブルに何度も叩き付けながらマークを睨みつけていた

その目は酔っているのかなんだか焦点が合っていない、本当に無駄なところに労力を使いまくったゲームである


「お前リアルでも酒飲んでるのか?どうしてそんなに絡んで来るんだよ」


「うっさい!こんな美少女と知り合いでありながら親友の私に報せない奴なんて東京湾にコンクリの靴をはかせて沈めてやろうかしら!もしかして私に知られないうちに手篭めにするつもりだったのかしら?まぁその気があっても、どうせ積極性の欠片も無い貴方ならこの子に手を出すなんてことは100年たってもありえないことでしょうけどね!」


「あぁん!?てめぇ喧嘩売るって言うんだったら利子つけてたたき返すぞ!?」


そこでなにやらメークが怒り出してテーブルに力強くジョッキをたたきつけ立ち上がる


「あぁら、やれるものならたってみなさいな!例え生産系ジョブだとしてもこれほどのレベルの差が覆せるのかしらぁ?」


因みにマークはレベル12対してムーチョンのレベルは75である

生産系のジョブを選択していても一応は戦闘系の能力値も上がっていくので低レベルでは相手にならないのだ


「やってみなきゃわからねぇだろうが!」


「じゃあその身の程って奴をその体に叩き込んであ・げ・る」


「キモイんだよネカマ!」


「あら!ネカマの何が悪いのよ!」


「「決闘だ!」」


ネカマを否定するような言葉をマークが使った事によってムーチョンもついに本気で怒り出した

そしてその発現を受けて周りでは「喧嘩だ喧嘩ー!」と騒ぎ出し、臨時的に賭けまで始まっていた

酒場では良くあることなのだが、ある時運営が何を思ったのか「だったら賭けのできるシステムを作ろう」と言い出してなんと酒場のマスターに申請すれば賭けが成立するようになってしまったのだ!本当に無駄なところに力を入れる運営である


しかしそんな喧騒の中、一人だけ事態を把握できていない人が一人


「ネカマってなんですか?」


シエラは一人だけ周りのテンションについていく事ができずにテーブルに座ったままそんな事をポツリと呟く

だがそんな一般チャットの言葉は周りの囃し立てる書き込みにより簡単に流されていくのだった



 ※ ※ ※



「おい、準備は良いかよネカマ野郎」


「こっちはいつでも準備万端よ童貞君?」


酒場の特設リングにて二人は相対していた

このリングは酒場のマスターに決闘が了承された場合にのみ現れるアイテムで中には二人だけが入る事が出来るようになっている

観客は周りを囲むように立ち見をしている


お互いに相手のリアルの生活を良く知る友達なので話す言葉には容赦と言うものが存在していない

本当であればゲーム内で現実のことや下ネタを話すのは違反なのだが、ここの運営は「こういう場面なら仕方ないでしょ」とここでだけ許可をしていたりする

それは運営としてどうなんだろうか?と疑問に思うプレイヤーも多数存在するのだが、そんな馬鹿な運営が好きな奴が沢山いるのでそちらの意見は中々反映されていない


「ではこれより決闘を開始します!私、今回のレフェリーを務めますGMのフェイトです!」


ここでイキナリリングの上に登場したのはGM

俗に馬鹿な運営の筆頭と呼ばれる人物でよく酒場でうろちょろしているのだが、一般プレイヤーに隠れるようにして存在して雑談しているので誰も気が付かない。そして決闘が始まるときになるとこうしてGM用キャラで出てきてレフェリーを務めるのだ

好きな事はプレイヤーを楽しませる事とプレイヤーを悩ませる事

いっつも変な行事を思いついては新しいマップの配置を遅らせると言う困ったチャンである

ちなみにムーチョンと中が良いとかいう噂が流れていたりもする


「今回のルールはお互いに獲物あり防具ありでさきにHPを無くさせた方が勝ちということになります、ただムーチョンさんはハンデとしてHPが3分の1となりアイテムの使用を禁止、マークさんにのみ使用を許可します。勝者に渡される商品は相手の持ち物の中から一つをランダムに手に入れることが出来ます!それでは!」


GMが手を挙げるとそれまで騒いでいた観客達は一気に静まり返る

そしてその手が


「はじめ!」


という言葉と共に振り下ろされると画面いっぱいにチャットが表示された



 ※ ※ ※



「はっはっはー!どうしたマーク、君の力はその程度かい?」


開始と同時にかけていったマークの攻撃をムーチョンは軽々とかわしていく

やはりレベルが違いすぎるのか一撃たりとも当たる気配が無い

そしてもう一つが経験の差であった、このゲームは攻撃の範囲判定がかなり厳しい

もし攻撃している最中でも敵が範囲外に逃げてしまったらそれだけでもうアウトなのだ、それを駆使して戦われてしまうと高レベルの敵でも倒せてしまう時があるほど


「ほれほれ~、こんどはこっちから攻撃だ~」


(っ!)


一撃、たったそれだけでマークのHPが5分の1が持っていかれてしまった


(どうする?どうする!?)


このままでは一撃たりとも当てられずに終わってしまう

相手はこちらよりも長くプレイをしていて腕はあちらが上、ついでにレベルもあちらが上

元から勝てるとは思っていなかったがまさかコレほどまでに差があるとは思っていなかった


(せめて一撃だけでも)


一撃だけでも当てないとかっこがつかない

自分のことを頼ってくれている少女に対して


まぁその少女は今、パソコンのタスクマネージャーを起動させて検索しているためにこの勝負を見ていないのだが


(しょうがない、こうなったら少し勿体無いけど……アイテムを使おう!)


アイテムは回復などの効果のあるものだけではなく、相手に状態異常を与えるものがある

さらに魔法のカードと呼ばれるものもあり、その何は低レベルの呪文が込められていたりするのだ


(まずは自分に対して補助を付ける)


最初にするのは戦士系スキルの一つの"マインドプラス"これによりこちらの物理攻撃の命中力が上がる、レベルが低いため効果時間がかなり短く、さらに次までの硬直ディレイが長いためにあまり使う機になれなかったのだ


次に使うのは魔法カード


「呪縛のルーン!」


これを使う事によりリングの床に紋章が現れてそこからウネウネと触手が生えてきた

そしてその触手はムーチョンを雁字搦めにしてその場に押さえつけてしまう

これで相手はその場から動く事が出来なくなった


「食らえ!バッシュ!」


そして戦士系の特技の一つバッシュ、これは使う事によって威力を直接アップさせる事が出来るもので、これにより相手の防御力に関係なくダメージを底上げする事が出来る


そして振りかぶった剣をムーチョンに向かって振り終えろすマーク

ムーチョンは笑顔でそれを受けようとしする


そして結果は…


MISS


「……へ?あ、呪縛が解けた」


ついでに命中力アップも解けた

酒場は静まり返っていた


「うわー、あそこで外すか」


「たしか呪縛って回避の可能性をかなり下げましたよね?」


「あそこまで舞台を整えておいてあれはなー」


ヒソヒソと声が聞こえてくる

その噂の張本人はリングの中央で固まってしまっている


「えっと……えい、えい、えい、えい」


そうやって固まっているうちにムーチョンはマークに四撃与えてマークのHPをゼロにした



 ※ ※ ※



「マークさ~ん、元気になってくださいよ~」


シエラが戻ってきて最初に見たものはテーブルについて項垂れている恩人の姿だった

その隣ではムーチョンが苦笑している


「なんで?あれって高レベルモンスターに対する最善の組み合わせのコンボのはずなんだぞ?」


「あぁ~、運が無かったとしか言いようが無いね」


そしてマークはその日、リアルでもゲームでもずっと酒を飲んでいるのであった


「ところでネカマってなんですか?」


「ん?リアルでは男だけど、ネット内では女性を演じている人のことよ」


マークは隣で永遠と酒を飲み続けているのでムーチョンが代わりに答えた


「そうなんですか?」


「そ、だから私はリアルでは男っていうこと」


「なるほど~。じゃあ私は違うわけですね~」


「「「「え?」」」」


酒場の全員がシエラの方を向いたのだった

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