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第一話

道路に蔓延るカラス達の棲家を掻き分けるように、自転車で布に針を通すように降る。

曇り空で少し首筋が冷たいが、僕はこの感覚が好きだ。


今日もペダルを弱く踏み込んで、学校へ向かっている。

高校生になって遠くの土地へ登校しなくてはいけなくなったので、僕の朝は毎度早い。

支度の煩わしさとか、そんなイライラが小さく降り積もりながら、なんとか体を動かしているのだ。


坂道を抜け、傾斜がなくなる。

思いっきりブレーキを握って、坂の勢いを殺す。

軋む車輪を耳障りに感じながら、あとは線路しか見えない機械的な道を、道なりをゆったり漕ぐだけとなった。


周りの会話が背後へ消えていく。

周りに人がいても、この瞬間は一人の時間なのだ。


すると僕の頭は一人でに辞書を開き始める。

本当にどうでもいい、先に何もないような事を。


けれど、ぐるぐる頭を働かせるのは好きだ。

意外にも一人でに面白い事を考えることはできる。

気を使わず思った事を書き連ねるようなものなので、飽きもしない。


例えばそう、目に見える風景のことを。

服が宙に浮いているな、とか…。


言葉にして、漸く僕は目を疑い始めた。

服が宙に…いや、違う。


宙に舞う赤色のワンピースには、自我が宿っていた。

風に流される事なく、真っ直ぐと僕の学校の校門へ向かっていく。


僕は暫くポカンとそれを見つめていた。

と同時に苦しくなった。

空を泳ぐワンピース、何にも縛られないその美しさに、僻みが生まれてしまったからだ。


見失う前にと、僕は足を動かして学校へ向かった。

普段はこんなに必死に漕ぐことはない。

けれど、日々のストレスを代わりに預かってくれる安心感のような、そんな魅力に当てられていたのだ。


僕を誘惑するように、赤色は僕から逃げていく。

あれは、気怠さの対極、活力の神様とさえ思う。

靴の側面に爪が抉られるほど、僕は車輪を回した。


凸凹して道路に阻まれながらも、僕は再び空に浮く赤を見つけた。

しかし、先ほどまでとは違う、なんだか様子がおかしい。


裾には踊るような動きを感じる。

布が踊っているように映る。


華やかな衣装は、生地を波立てて、遂に校門へと着陸した。

…ハンガーに掛けられた姿のように、地に崩れることなく…。


赤いワンピースには、白く美しい肌が通されていた。

加えてさらりとしたロングヘアが、よく靡いていた。


同い年ぐらいのその女の子は、一歩一歩前へ、学校の昇降口へ向かう。

僕はチャリの脚を止めたまま、立ち尽くしてしまった。


頭が疑問符で溢れそうになる。

彼女は、一体何者なんだろうか。


「待って!今日小テストじゃん!!」


僕の静寂を破る、隣の先輩の声。

その声で、なんとか僕は現実に引き戻された。


目の前には、いつもと何も変わらない、空と白い校舎が広がっていた。

喧しい周りの日常会話も、何も変わらない。


乱れた呼吸は、役割を果たすことなく無様に聞こえる。

僕はその絶望から、少し地面に埋まったように感じた。

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