明らかに若いのに失礼しました!
「アオー、薬草見つかった?」
「あぁ、でももうこの辺は刈り尽くしたんじゃないか?」
「だよねぇ〜。そろそろこの依頼も流石におしまいかな」
ギルド登録から三週間。
まずは簡単な依頼からと薬草探しに精を出したが、適当に拾ったら【薬草】とか文字が出る便利なゲームシステムは無くて、俺は似た葉っぱを片っ端から拾い、薬草の見分けられるアオが最終的に仕分けてくれて、最初の頃は7割以上ポポイノポーイっと捨てられて涙した日もありましたが、今や正解率は8割を越えました!俺、成長!!
「お前、いい加減見分けらんないのか?」
「えー?これでもかなりわかるようになって来たと自負してますが?」
「自負だけじゃなんともならん」
「それはそう!でも頑張ってるから許して〜」
座って布の上に広げた薬草を分けてくれるアオを背後から抱きしめて頭通してグリグリすれば、「やめろ」と言われるけど手は出ないから許してくれてると思う。
アオも暑いのかそれとも今日は町から少し離れたからか、フードを取っている。そういや先日宿で知ったがアオは目が赤いだけでなく、その髪までも赤かった。赤いのカッコいいな!アオなのに!
「でもアオは可愛いなぁ」
「やめろ。あとお前の会話は脈略がない」
「このふわふわの髪も可愛いなぁ〜」
「やめろ」
「可愛いにゃー」
「猫みたいに扱うんじゃない」
「可愛いにゃー」
「いい加減にしろ!」
アオはいい加減頭に来たのか頭を降ると、俺は油断したところでヘッドバッドを顎に喰らって倒れるが、疲れてたからそのまま仰向けで空を見上げる。
「天気いいなぁ〜」
「お前、もっと稼ぎいいの選べばいいだろ」
「いやぁ、俺には無理だろ」
「あのゴブリンを倒した時の……」
「うわぁっ!!」
それだけは言わないでほしいとアオに向けて手をかざせば、呆れた顔でこちらをみられて笑顔を返す。
マリーさんの酒場で少し分かった気でいたけど、この世界はやはり俺の知ってる常識と何かと違っていて、こうしてアオに薬草を教えて貰ったり、ギルドや宿を人に聞いてなんとかやってきた。
「アオがいなきゃこうしてやってこれなかったなぁ〜」
「お前さぁ」
「ハジメッ!……俺の名前はハジメです!いつまでもお前じゃ寂しいでしょ⁉︎」
「名前はどうでもいい。あの時の力を……」
「わぁっ!!」
耳を塞いで言わないでと顔で示せば、クソデカ溜息吐かれました。ごめんねアオ、子供の教育に悪いとかより、あのエッグいゴブリンのラストは俺の心に傷をつけました!!
「それでよく冒険者やろうとか思ったよね」
「とりあえず日銭と少し貯まったら、仕事もちゃんと探すよ。あーぁ……俺が聖女様なら良かったんだけどね……」
そうだ、元はと言えば聖女様と間違えてこちらにきたんだと、あらためて薬草をブチブチ抜き始めたところで、アオの目が驚いたようにこちらに向けられてることに気がつく。
「なに?」
「聖女ってなんだよ」
「あれ?言ってなかったっけ? 俺、異世界人なの。なんかキラキラな王子様達が聖女召喚しようとしたところ、間違えてこっちにきちゃったんだよ」
「は……?聖女?」
「そうらしいよ〜。可愛い子だったし、来たらチヤホヤされてたかもだけど、でも本人の承諾なしってどうかと……アオ?」
返事が無いとアオの方を見れば、頭痛でもするのか頭に手を当てたアオの背後にスラリと背の高い男が立っていた。
「えっと、どちらさんで?」
銀髪のセンター分け長髪イケメン。モノクルつけてるあたり頭良さそう。知らんけど。あれ、なんで両目付けないの?時折必要なときに覗き込むため的な……
「つまり老眼鏡的な?」
首を傾げて思わず出てしまった言葉に銀髪くんがピクリと身体を揺らした。
「ごめん!明らかに若いのに失礼なこと言いました!!」
まだ二十代くらいにしか見えない彼に素直に頭を下げて謝って顔を上げれば1ミリもこっちを見てませんでした!
「あの、ところでうちの子に何か御用で……?」
そう聞きながらもなんかジャラジャラした衣装は人攫いには見えないと、それでもホラ、世の中怖いからさ。見た目に騙されて子供連れてどっか行っちゃうとか、ハッ!!ショタコン!?あんなイケメンなのにまさかそーゆーのもあるの!?
「アオ!!こっちに来なさい!」
「誰に命令してるのです」
慌てて走り出してアオの方へ行こうと思ったが、銀髪イケメンくんが手を翳したと同時に俺の身体は暴風によって吹っ飛ばされて近場の木へと勢いよくぶつかった。
「オイ!!やめろ!!ウェントゥス!」
「おいたわしや。魔力を封じられて、どこにいかれたのかと思えばこんな幼い姿になられて」
アオが名前を呼んだようで、なんだ知り合いかとはや合点してしまったことを悔いるが、ぶつかった背中は洒落にならない痛さだと、2人の会話は俺にはあまり聞こえず、そしてすぐには立ち上がれなくてただその様子を見つめる。
「さぁ行きましょう。城へ」
「まて!アイツを……!」
「なんだ。まだ生きていましたか。ヒトにしては丈夫な身体ですね。殺しますか?」
「……!!」
痛みで何の会話か聞こえないが、アオが止めるように手を広げれば銀髪くんは頭を下げた。
「ア……オ?」
必死で上げた声にアオはこちらを見ることなくフードを被る。
「先程よりなんと失礼な。やはり殺しましょう」
「やめろ!行こう。……ヒトなんて、ほっておけばそのうち死ぬだろ」
アオが何か言えば、銀髪くんは冷たい目でこちらを見ると、「それもそうですね」と感情すらなさそうな顔でこちらへ背を向けた。
思わず手を伸ばしてあの日以来使ったこともない力を使いたいと……、ただアオが銀髪くんと行きたいのかの確認がしたいと思えば、振り向いたアオが何かを投げれば、伸ばした手は勢いよく弾かれて激痛が走る。
「グゥッッ!」
見れば俺の手に刺さっているのは、町に来て薬草採取の為にアオに持たせていた小型のナイフ。
「余計なことはするな」
ただそれだけを告げて、なんとなく嬉しそうな銀髪くんが空間を割いて、その中へ2人は入っていってしまった。
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