まぁあんま警戒せんでくれよ。
「で? ニイちゃんはどっからきたの?」
目の前の席にどかっと座り、悪びれもせずにせきをすすめてカラカラと笑う少年、いや人生の先輩にヘラリとした笑みを返してしまうのは、体育館系の縦社会で生きてきたせいだろうか……。
「前にお邪魔いたします。あの、あなたのお名前を伺っても?」
「あぁ、悪いな。デックスだ。座れよ。何、悪いようにしねぇよ。旅の話を聞きたいだけだ」
そんな俺と違いキヨラはモデルという実力主義で生きてきたのだからいつもあんなにも堂々としてるのかと、脳内キヨラに敬意を称してなんとなく背筋を伸ばした。
「お、いいねぇ。いける口か?」
「ん?」
言われて見れば座った席の目の前にはいつの間にか泡立つ小麦色の……。
「ビール!!?」
「ビーズエールだ。ヒトはそうして略して呼ぶのか?」
「いや、どうだろ。でも俺的にはそう」
「そっか。まぁ飲め。旅なんてしてると飲めねぇだろ? オレッチも旅には出てぇが、ビーズエールの無い生活は耐えられない気がしてんだなぁ」
カラカラと笑って進められたが、笑顔で誤魔化して手を出さずにいれば、その優し気だった瞳が細められ、
「オレッチの酒が飲めねぇっていうのか?」
「いただかせていただきます!!!」
俺は勢いよくそれを飲み干した。
*****
「わりぃわりい! 恋人連れてきたから、開けてくんねぇか?」
扉から突然と不躾に響くノック音に僕は警戒しながらも近付けば、アホみたいに間延びした声が続いた。
「キョーラちゃぁぁぁ〜ん。開けてえ〜〜。ハジメだすよぉ〜」
「は!? 出すな出すな!! いや『ハジメですよ』か? 悪ぃ!! コイツ下手に呑ませちまった!!」
仕方ないと開けてあげれば変な体制で立つハジメに驚き、しかしその顔を上げるとその下にはハジメを支える……いや、背負ってる子供がいる!!?
僕は慌ててハジメに手を伸ばすが、その上半身だけでも自分より頭ひとつ分以上大きな身体と、立派な体躯に押し潰されてしまいそうになるのを、子供はまた笑って背負い直すと中へと入ってきて近場のソファへと寝かしてくれた。
「えっと、ハジメが迷惑かけてごめん…………ん?『呑ませちまった』?」
さっきこの子の言ったセリフに違和感を覚えて繰り返せば、その子はカラカラと笑ってテーブルのお菓子に手を伸ばし、そのまま断りもなく椅子に座った。
「これうめぇな!」
「ご迷惑をかけたみたいだね」
「いや、迷惑掛けたのはこっちだな。コイツがこんなに酒が呑めないと思わなかった」
土産だと渡された大きな陶器の甕のようなものをそっと鑑定すれば、
『ビーズエール アルコール度数50%』
と見えて絶望する。
「ハジメは、多分そんな飲み慣れてなくて」
「そうか!! それは悪かったな!! キョーラだったか? お前ぇは飲める口か!?」
「そうですね」
その返事に既にご機嫌な様子でデックスと名乗った彼は嬉しそうに目の前に注いできた。
*****
「つぇぇ……! 強ぇぇなキョーラ!!」
「嗜む程度ですわ」
微笑み告げれば、デックスはカラカラと笑って
頬を赤くして負けた負けたと両手を振った。
それはそうだ。注がれた酒は飲む前に浄化して色こそ変わらないがアルコールは消して飲んでいるのだから酔うわけがない。しかし手間暇かけた酒をそんな事してるとバレれば多分のこの酒好きドワーフ共は怒り狂うだろうと頬に手を当てて、程々に酔った振りをしてみる。
「キョーラはなんだかアレだなぁ〜! 妙に綺麗な顔だな」
「光栄ですわ」
妙には余計だと思いつつも、明らかに酔っ払っている彼を刺激しないように笑みを返す。
10やそこらの子供の見た目だが、ゲームでもなんでもドワーフは長命種と聞くし、もし勢い余って僕を襲ってこようものならシールドで防げばなんとかなるかと考えつつ、この距離なら酔っ払って寝てるハジメも護れるかと思考する。
「まぁあんま警戒せんでくれよ。まぁお前らと比べれば見た目はこんなだが、ハジメの様子を見ればオレッチの方が年上だ。ドワーフの中では幼いが、オレッチは意外と勤勉なタイプでな、あのドエンの親父の様子だと、なんか珍しいもんでも渡したか? それだとあの親父のことだ、お前らが聞きたいことも聞けんかっただろ? 俺は酒を交わしてくれるやつとは楽しく飲みたい。聞きたいことはあるか?」
そう聞いてくれたことに甘えて、僕は口を開いた。





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