ただ頭痛だけが響く
キヨラは可愛い対戦に無惨に散った俺を眺めながら首を傾げ、
「さっきの様子見てて思ったんだけど、もしかしてハジメって今時ヤンキー?」
「いや、至って真面目な大学生ですが?」
キリリと顔を引き締めて言えば、なんだか呆れたような顔を向けられてしまった。
「そんなことより、ほら、やっぱり一回ステータスを……」
その言葉に頷いたが、キヨラがすぐに首を振った。
「だからまだいいってば」
「大丈夫……ステータスオープ……」
俺が笑って言えば、指先で口元を抑えられる。
「だからいいってば。またにしよ」
「……キヨラ」
「ハジメは演技できないねぇ。笑顔下手すぎ。俳優は諦めた方がいいよ」
「ははっ、そんな大逸れた夢はもってねぇかな」
そう言って笑えば、キヨラはその方がいいよと笑ってくれた。
***
「クッソォォォォ!!!」
悪態と共に壁と門番のリザードマンが吹き飛ばされたのが目に入った。
「何をしている」
些か呆れてトニトロスの前へと出ていくが、その苛立ちも隠さずに破壊行為を続けようとするのを止めることもなく、ただ声だけをかけた。
「あぁ!!!? やっと見つけた竜は殺せねぇ!! 聖女も殺せねぇ!! イライラするに決まってんだろぉ!!」
「……聖女?」
トニトロスが言った気になる単語を繰り返すが、怒り狂ったヤツの耳には届いていないらしい。
「オイ魔王様よぉ!!! 戦おうぜぇ!! イライラが治んねぇんだよぉぉ!!」
「断る」
「あぁぁあぁぁぁ!!! クソほど腹立つ!!!」
「口が悪いな」
「うるせぇ!!」
我ながら自分の発した『口が悪い』との言葉に、確かに何を言ってるんだと驚けば、トニトロスはそんなことを気にした様子もなくこちらへと飛び込んでくるのを、躊躇いなく蹴り上げる。
「ウゴォアッ!!」
「?」
全力でもなく蹴り上げたにも関わらず思いの外飛ぶトニトロスを見上げて驚く。
「アオエーン様、御力を取り戻しつつありますね。心当たりは?」
いつの間にか近くに来ていたウェントゥスはその長い髪が靡くのも気にせずに微笑まれるが、視線は向けない。
「お身体も日に日に大きくなっております。それに……なんと素晴らしい魔力」
ほぅ……と、感嘆の息を漏らすのを、はじめなら綺麗だなんだと騒ぐのだろうかと、そんなことを思えばなんとなく胸に違和感を覚える。
「日に日に魔力が解放されているご様子。おめでとうございます」
「……あぁ」
何がめでたく、その胸の何かを否定したく、しかしその何かがなんのことかも判らずに、ただ短く返事だけする。
「貴方様がまた支配される世界を楽しみにしております」
「支配……」
「お忘れですか?」
流石に驚いたとばかりに目を見開かれて、めんどくさくもその顔を見れば、嬉しそうにその口が開かれる。
「人からこの地を奪い、魔物の為の世界。以前はこの大陸を治めようとあと一歩のところで勇者と名乗る男と聖女に止められたことまでお忘れとは」
…………ただ、頭痛だけが響いた。





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