だから言わなくてもいいって言ってるじゃん!
「突然の雪ってどういう事!?」
「いや、俺に怒られてもっ!」
キヨラが文句を言うように、あれからまた2日ほど野宿をしてまた出発した今朝までは晴れていて、夏とは言わないまでも春か秋のような気候だったのに、突然昼過ぎから降り出した雪。
寒さに震えだしたキヨラを背負い、なんとか辿り着いた次の町の宿屋の中、芯まで冷えてしまったのか相変わらず震えるキヨラに、部屋にあるだけの毛布をかけてあげてから部屋の暖炉に火を入れる。
「ハジメは……っ、よく、平気だねっ!」
「まぁ、俺はキヨラほど細くもないし、空手してるころは暖房もないところで胴着だけで稽古してたしなぁ」
「そんなレベル!?」
「まぁ突然の雪には驚いたよなぁ〜。ちょっと前に来た時は暖かかったくらいだったのに」
窓の外を見ればみんな防寒着を着ていて、きっとこの辺りの人にとってはこれは日常なのだと知る。
「俺、どっかで防寒着買ってくるよ」
「ハジメが?」
「言わなくても言いたい事はわかる!! キヨラ好みじゃなくても許してくれよな」
「センス……」
「だから言わなくてもいいって言ってるじゃん!」
ぴえんと嘆けば、キヨラは「ウソウソ」って笑ってから「あったかいのお願いね」って毛布の中から手を振ったので、俺は少し不貞腐れながらも扉を開けて……、
「あ、鍵閉めとけよ。キヨラも用事があれば外にも出るかもしんないから、ここ置いとくな」
そう言って鍵をいつもの場所に置くと四次元バッグを持って出掛けた。
「……て、言ったもののなぁ〜……」
普段見ててもキヨラのセンスはやっぱり良くて、あまりオシャレじゃないこの世界の服を上手く組み合わせて、なんかこー……超可愛い感じになってる。
「いや俺の語彙力のなさよ」
思わず苦笑いして、改めてピンクなら可愛いか?いやそれより黄色の方がキヨラに似合う気もするけど、キヨラは黄色着てるイメージ無いから、自分に合わないと思ってたら買ったところでその場しか着ないかもしれないと思うと、無駄遣いも嫌だと真剣になってしまう。
「まぁ結局のところ、その場凌ぎでもキヨラが暖かくなきゃだよな」
悩みすぎて訳がわからなくなったと、色々諦めた結果、とりあえず帰ったら即着れるものを選び、更に即着れるように一枚はバッグの上へと乗せて、自分の分はその場でジャージの上に羽織る。
ついでにキヨラが寒いから外に出たく無いと言ったた時の為にと、軽食も買って宿へと向かっていれば、なんだか布団のような大荷物を持った男たちとすれ違う。
「やっぱりみんなこの突然の冬の支度に大忙しだねぇ」
改めて考えたらこの四次元バッグがどこまで入るか分からないけど、たしかにまたこの先に野営するなら寝袋だけじゃ足りないかと思えてきたが、まぁそれはまたキヨラと話して買いに行こうと改めて宿へと向かった。
「あれ、鍵開いてる?てゆーか扉開いてないか?」
宿に帰れば扉が少し開いてるようにも見える。
「キヨラ〜、鍵開いてるぞ。気を……つけ、て……」
言いながら入ればまずは違和感。
部屋はあんなにキヨラが寒がっていたはずなのに、窓が空いている。
そしてキヨラはいないのに、書き置きもなく……なのに、入口近くの棚には俺がいつも少し隠すように布の下に置いておいた鍵を見れば……そこにある。
「キヨラ!!!」
叫ぶ様に呼んでも返事はなく、それでもまだ冷え切っていない部屋はさほど時間が経っていないのだと教えてくれて、俺はそのまま踵を返して宿を飛び出た。





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