ハジメにはその才能はないみたいだね
「ハジメはさ、もう少しのんびりしなくて良かったの?」
「俺はもう充分休んだよ。あっ!そっか。キヨラはもう少し休みたかったか?」
結局一泊だけでして町を出て、暫く歩いたところで聞かれたことに、そういやキヨラの気持ちを聞いていなかったと慌てて確認すれば「別に僕はいいよ」と首を振られた。
「そっか。ごめんな。俺の気持ち先走ってた?」
「大丈夫って言ってるじゃん。旅荷物は整えたし僕は平気だよ」
珍しく隣を歩くキヨラは俺の持つジッと四次元バックに目をやっているのに気がつく。
「あ、もしかして竜の翼? あれ、まだ使い勝手わかんなくって。試すにしても町中じゃアレだし、もう暫く進んで人と会わない場所に行ってからの方がいいかなって」
「それはそうだし、どちらにせよ暫くは使わない方がいいかもね」
兄貴の最後に落としてくれたアイテムの一つ『竜の翼』。
あの場から逃げ出したのもコレのおかげだと思いキヨラの言葉に首を傾げる。
「なんで?練習した方がよくないか?」
「多分あの牛は飛んで行った方向くらいは把握してそうだし。アイツ飛べなかったしね。それなら『竜の翼』なんて多分とんでもないレアアイテム欲しがるか、それでなくとも僕らを殺したいはずだから、今は空なんて飛んで見つかるリスクは少しでも減らした方がいい」
「それはそうだな!」
至極納得したと、今は絶対勝てないあのトニトロスを思い浮かべれば、無意識にグッと拳を握っていた。
「あとハジメ、ステータス確認はあれからした?」
「……」
答えるのを躊躇ったが、素直に首を振ればキヨラは何も言わずに固まった俺の拳に手を添えてくれる。
「……ごめんな」
「いいよ」
自分のステータスに『竜殺し』の文字が出ているならきっと耐えられないと俺が下を向けば、キヨラは手を引くように少し先を歩いた。
「僕らはステータスなんて元々見えないんだ。当たり前なだけだよ」
「ははっ、そうだな……。不便だなって兄貴に言われたけど……当たり前だよな」
「そうだよ。それにわざわざ聖女とかの括りになんてするから揉め事なんじゃないの?人の才能なんて見えなくていいじゃんか。肩書きなんてものは努力して努力して手に入れるものでしょ」
キヨラのその言葉に思わずフハッと笑いがこぼれる。
「そうだよな。空手で段取るのだって、高校生が甲子園に行くのだって、全部全部長年の努力だ」
「そうだよ。ただ呼ばれて聖女だって言われても、何の努力もしてないのにさ」
「ちなみにキヨラさんは今までどんな努力を?」
そういえばスカイダイビングからの浮遊とかは効いたけど、他に何があるのかと聞いてみれば、キヨラはこちらに向かって頬に手を当てて笑みを作ると、
「可愛いと綺麗の努力」
その輝く笑みは流石モデル様だと、俺はただ拍手を送り「流石です!天性の才能に上乗せさせて国宝です」と告げれば、「でしょ」とやっぱり最高の笑みを浮かべてくれた。
「そうだ!俺も見習おうかな!ニコッ!どう?」
「ハジメにはその才能はないみたいだね」
キヨラを真似て笑ってみれば、急にスンッてして言われてぴえんとすればキヨラは可笑しそうに口に手を当てて「変顔の才能はありそうだよ」とやっぱり笑ってくれた。
「キヨラはさ、理不尽すぎる今に不満はないのか?」
「ありまくるに決まってるよ。僕はモデルで結構稼いでたのにさ、全部パーじゃない。こんなに可愛いのにそれだけじゃ稼げないのおかしくない?」
「ははっ、この世界じゃ芸能人って訳にいかないよな」
「格差社会の縦社会。王様王子様聖女様。肩書きだけで人を見てくる。聖女なら助けて然るべきだと呼ばれた意味すらわかんない」
掴まれてた腕には不満気に力が入ると、そこからは逃げ出した聖女様の不満は止まらない。
「あのままならあのバカ王子と結婚しろとか、僕が男だってわかったら、もしかしたら勇者とあんな牛と戦う最前線に突っ込まれてたか、死んだらまた誰か呼ばれる程度の使い捨てだったかもしんないし」
「怖いなぁ」
「肩書きなんてあってもどこまで伸びるかもわかんないし……僕は、僕の道をどこでだって自分で決めたいんだ」
「うん」
キヨラの芯の通った言葉は聞いていて心地よいと緩む頬のまま聞けば、キヨラはこちらを見上げると「ばーか」となんだか照れるのを隠すように言うと、掴んでいた手は腕に回され、腕組みをしてきてそのまま暫く一緒に歩いた。
しかしなんとなく照れ臭くなった頃にはキヨラは背中にまわり、いつものようにおぶさるとお休みされて、その安心して眠るとあどけなさに何故だか俺が安心する。
「よいしょっと」
そう言って俺はまた一度歩いた道を辿り次の町へと踏み出すと、なんだかあの時不満気に繋いがれたアオの小さな手を思い出していた。





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