めちゃくちゃ理由あるじゃん!!
『こんなに笑ったのは久方ぶりだ。ハジメ、キヨラ。お前たちは何処から来たのだ』
ひとしきり笑われた後、その大きな身体に似合わないほどに優しい声で質問されると、俺たちは顔を見合わせてればキヨラは一度キュッと唇を結んでから凛として話し出す。
「僕たちは異世界から連れてこられました。僕らがいたのは地球、その中の島国、日本という場所から飛ばされてきました」
『そうか。それは災難だったな』
優しげに細められた目に、俺たちは言葉を失う。
「そうです。災難……でした」
ひとしきりの間の後に告げたキヨラに握られた手は冷たくて、先程までの瞳と違い下を向きその顔は辛そうなものへと変わる。
「災難ですけど、でも俺、多分、それなりに楽しんでます! ホラ異世界転移なんて普通に生きてりゃありえないし、そしたらキヨラ達とも会えなかっただろうし? それに、竜に会えるなんて普通に生きてたらゼェッッタイ無いわけだし!」
キヨラの手を少し強く握り笑って言えば、キヨラは驚いた顔をした後に困ったように笑った。
『ハジメ、お前は良い生き方をしているな』
「花は咲かせてもらうんじゃない!種の落ちた場所で咲くんです!!」
『そうか』
「ハジメは花よりむしろど根性野菜みたいだね」
「ははっ!むしろ花よりいいな!食えるし!」
笑って言えばキヨラも「そうだね」とキヨラこそ花のように笑ってくれる。
「じゃ、キヨラは花、俺は野菜ってことで!」
「仕方ないなぁ。僕が野菜を名乗ったんじゃ野菜が恥ずかしくて地に埋まるね」
「それ根菜!!」
笑って言えばキヨラも楽しそうに笑ってくれて、それを竜は言葉を挟む事なく見つめている。
「んで、竜の兄貴は何しにここへ?」
『カッカッカッ!兄貴と来たか!……別に理由なんて無いのかもしれん』
竜は優しい目で遠くを見るように言う。
「何処から飛んできたの?」
『遥か遠く。ここからは見えん山の上から。死ぬ前に息子に最後に会えるならば会おうかと思ってな』
「めちゃくちゃ理由あるじゃん!!」
『なぁに、会えんでもいい。たった5、60年ほど前にも会ったしな』
「俺、時間感覚の差に直面!!」
俺どころか親すら生まれてないじゃんと衝撃を受けてれば、また『カッカッカッ』と笑っている。
『お前たちに会えたことが幸いだった。もし息子に会ったなら安らかに逝ったと伝えてくれ』
「やだよ!!今、兄貴は生きてんじゃん!!自分で言ってよ!」
『そうか……しかしこの先会えるかどうかも……』
竜の兄貴がそう言った時、突然の音と共に目の前に土ぼこりが上がった。
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2日ごとの更新目指して頑張ります!(多分奇数日更新更新!!)