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The異世界な!!



「えいっ!おりゃっ!とーー!!」


“グシャ!ゲシャ!ゴシャッ!”


 あれから数日準備して、また次の街へと向かう森の中で掛け声と共に空気を掴む手を使えば、目の前のトカゲ型のモンスター達は潰れてアイテムへと変わってゆく。


「あのさぁ、その掛け声なんとかなんないの?」

「そう言われても、ちょっとコミカルにでもやらないとエグいじゃん?」


 アイテムを拾いながらキヨラに言われた言葉に苦笑いで返せば呆れたような顔をされてしまう。


「まぁハジメのは魔法にしてもなんか変だしね。僕のは『ヒール』とか言うことで……」

「女王様気分が味わえる?」


 ノリで言ってみたら、アイテム拾ってる俺の背中を踏まれて、


「味わってみる?本物のヒールで踏まれる下僕の気持ち」とか言われたので「充分味わっております」と嘆いてみる。


「まったく、か弱いぼくに何させるのさ。とにかく僕は言葉を言うことで慣れない魔力を連動させてるの」

 そう言いながらアイテムは拾い終わったらしく、当たり前のように俺の背中にくっついて乗ろうとするキヨラを止めることなく背負い立ち上がる。


 この行動も最初はただのわがまま、そしてその後は俺の体力作りに背負われてるのかと思ったが、町にいればポーション作りに魔力をかなり使っていて、多分それでかなりの精神力を使い常に疲れているのだと思う。

 現に歩き始めてすぐなのに、既に背中でうつらうつらと始めている。


「そんで目が覚めれば俺の回復だもんな。大変だ」


 背負う自分が大変かどうかなんてのは大したことないのだと、この可愛らしくも生意気な()()()()の小さな身体に背負わせるには重すぎる荷を一緒に背負えてるならまぁいいかと、「よっ」と小さな声と共にキヨラを背負い直す。

 

 最初は逃げ出した聖女の自分を守れと言いながらも、もしかしてそれは代わりに先に召喚された俺を探す為だったのかもしれない……なんて、本人に言えば否定されるかもしれないけど、実際こんな危険な世界で既にマリーさんにお世話になっていた近くの町も離れていた俺を探し出してくれたこの聖女様。


 先に召喚されたのがキヨラだったら、たとえ男であったとしてもこの顔の美しさに聖女の肩書きがあれば、きっと大切にしてもらえたんじゃないだろうか。


 すぅすぅと立てた寝息とその寝顔はなんだか年相応に可愛くて、先日のやりとりに少し顔に熱が集まる。



「あーー!それにしてもこんな森の中歩いてても、幸運のアイテムのお陰なのかすんごいモンスターに合わないで済むの助かるな〜」


 誤魔化すように声を上げれて思うのは、ポケットに入れた聖女様の祈り付きの幸運のアイテムの小さなピンクの宝石を思い浮かべる。


『ほう。幸運の……』


 突然の声に視線を上げれば、目の前には大きな黒い塊。


「ぅえ?」

『そうだ。よくわかっているな。余はお前よりも上の存在』


 思わず出た声に言葉を返されて、そのギョロリと動く大きな目を見つめれば、ヒュッと息をのみ身体が強張る。


『カッカッカッ!!身の丈のわかった人間だ』


 笑ってバサリと動くのは大きな翼。

 慌てることなくゆっくりと動くのは、きっと俺たちなんて羽虫程度の存在だから。


 突然目の前に現れたソレはまごう事なきドラゴン。つまり竜。


「おぉぉぉぉぉぉっ!!デカーーー!!!かっっっこい!!!!」


 その姿は一周回ってなんか逆に異世界すぎて現実味が薄くなり感激の声をあげてしまった。


『カッカッカッ!!なんとも怖いもの知らずよのぉ』


 大地も震えそうな響く声に「おぉぉぉぉ!」とまたも感嘆の声を上げれば、背中のキヨラがゆっくりと動き出す。


「なぁに〜?」

「キヨラ見てみて!!カッチョイイ!!」

「何が……」


 そう言いながら目を擦り、ゆっくりと前に視線を送れば、



「うわぁ!!本当だ!!!すっご!!!」

「なぁ!!竜だよ竜!!!The異世界な!!」

「そうだね! ヤバい、この世界で一番テンション上がったかも!」

「だよなぁ!!!」


 キヨラは背中から降りて俺の横で胸に手を当て、なんともキラキラとした視線を竜に向けた……いやそれは俺もなんだろうと、ただ目の前の4tトラックよりも大きい、いや4tトラック2台分?いや例えがよくわかんないけど、とにかく大きなそんな竜にテンションが爆上がる。


『……異世界?』

「喋った!!!うわぁ!!声もカッコいいなぁ!!VRとは違うなぁ!!」


 俺はともかくキヨラとは思えない程に上がったテンションはゲームのヘビーユーザーというのは本当なんだろうと思えてくる。


『カッカッカッ!!余に対してそんな態度でいる人間がいるとはなぁ〜!』

「し、失礼しました!キヨラと申します!……ほら、ハジメも!」


 促されて自己紹介もしていなかったと、慌てて気をつけをして頭を下げる。


「はじめまして!ハジメです!!一番のイチって書いてハジメ!! でもビックリすることに長男じゃなくて二男!! イチロースタイルのナイスボーイです!」


 そう言いながら親指を自分に向けてウインクしてアピールすれば……なんか無言の時間が流れた。


「……漢字の概念なかったんだった……」


 ペチンとキヨラからハタかれて、苦笑いをすればキヨラが必死に誤っている。


『カッカッカッ!!よくわからんが、楽しそうな人間だ』

「楽しさだけは忘れないように生きてます!」

「ハジメは黙ってて!」


 キヨラからのツッコミに口を尖らせれば、やはり竜さんは『カッカッカッ』と笑ってくれた。


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⭐︎書籍情報⭐︎

仁藤先生の美麗な表紙が目印の、2025年8月発売
『悪役令嬢なんてもうちょい若い子に任せたい』

全編長編に書き直し。仁藤先生の素敵過ぎる挿絵が入っております
どうかご自宅にお迎えいただけると嬉しいです!

※ 以前の記入から訂正です。
書き下ろしSSは電子書籍版のみになるそうです。
大変失礼いたしました。
心からお詫び申し上げます。
i7mc3drn1i2j620t1t1li4yqeigb_g1n_wr_19o_14dfj.jpg 一部通販はこちらで是非(*´꒳`*)
楽天さん
Amazonさん
その他通販サイトさんでも扱って下さってます。
タイトルまたは「そらいろさとり」で検索ご利用下さいませm(_ _)m
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