テレビもネットニュースもないお天気って読めないよね〜
「今日また雨じゃん……」
キヨラが宿の窓から外を見つめて言ったことに顔を洗ってた俺が溜息を吐く。
「うわぁ〜……やだなぁ」
「そう言いながらも雨具着て……まさかハジメ、収集いくつもり?」
「そうだよ。キヨラは宿でポーションでも作ってて」
聖女と違って、レベル表記もない役立たずの村人Aの俺で出来ることなんてそれくらいだと、鍵を閉めるよう伝えて部屋から出て行く。
雨は小雨というほど弱くは無く、大雨というほど強くもない。
「まぁ普通に雨だなぁ〜。テレビもネットニュースもないお天気って読めないよね」
着ているのは雨具と言ってもビニールやら防水率がめちゃ高いわけでもないこの世界では、やはり雨の日は街を歩く人も少ないと、俺はある程度染み込むコートを羽織ってカゴを持ち町中を抜けて、森へと向かう。
「雨の日に光る植物って不思議だなぁ」
その目的の光るキノコは普段は見つけにくい。
キヨラが合成にも使うそのレアキノコは草の陰に生えてて、普段はよく似たキノコが多くてそこに一緒に生えてて見分けがつきにくいが、何故か全体を水に濡らすとそのキノコだけは少し光る。
しかし夜に雨が降っても光らないから、この謎の習性はあまり知られていないらしい。
俺たちもこの旅の途中の雨宿り中にたまたま見ていたキノコが夕方にうっすら光って日が隠れると同時に消えたことでこの謎の習性を知ることが出来た。
なんかキヨラの目にも、手にとって単体にして初めて『コウゴウキノコ』って名前で見えるらしく、集団で生えてるとどのキノコか見分けがつかないらしい。「そのうちレベル上がればわかるかもね」とか言ってた。
「とはいえ、そんなにいっぱい生えてないんだよね」
似たキノコが大量に生えてる合間に『お仲間ですよ』みたいな顔で1本か2本生えてれば良い方程度。
さっきから木々の横のしかも草で隠れた場所を探し続けて、まだ2本だけ。
それでもキヨラの合成に使えるというから、それならばとせっせと探す以外にない。
「俺はエッグイ必殺技はあっても、基本的に役立たずだからなぁ」
キヨラを守るにしても用心棒と呼べるほど強くない。それに俺はきっといざとなってもあの技で対人となれば怯んでしまうだろう。
子供の頃からやってた武道のお陰でさほど弱く無くとも、相手が武器でも持っていたら勝てる気はしない。
「武器のある戦いかぁ〜……覚えておけばよかったな」
剣道、弓道、薙刀やあとは銃剣道。フェンシングでも良かったかもしれない。習っていればもしかしたらスキルになってたかもしれないと、今更ながらに思ったところで何も出来ないと諦めのため息を吐く。
「雨はやだねぇ〜、ネガティブな考えになっちゃう」
ジットリと水が染み入って来たレインコートというにはお粗末なそれが重くて立ち上がり、首を回しながら行った時、
「わかるよ兄ちゃん」
そんな声が聞こえてきた。