十一月/澱
秋も冬も名乗れぬ気温の中
その十一月はあって
霞む水色の空
川沿いに並んだ トックリキワタ
手のひらをぎこちなく広げたような
鮮やかなピンクの花々が
か弱い陽光に照らされ
浅い川底で じっと佇む
青黒いうなぎの背が
水面に吹き付けた風に
かすかに揺れる
玄関先に小さな上履きを
干した家の 古い隣家は
跡形もなく取り壊され
今日は動かぬ重機のキャタピラ
傍らを舞う 蝶の翅の翠
ひらいては閉じ
ちぐはぐな季節に
煤けた ものかなしさだけが
十一月を背負い
あふれる色の根底を
ひっそりと流れている