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朝方に落ち合ったアルム達はリリーの先導で出発し、まず2人はいきなり更に貴族居住区の方に進んでいった。
「リ、リリーさん?なんで腕に抱きつくの?歩きにくいでしょ?」
「デートなんだから腕組みするでしょ?」
ただ移動の際にはリリーがアルムの腕に抱きついていて、アルムは慣れない感触に顔が赤くなる。アルムの母アトモはカテゴリー的には巨のつく大きさの境界ギリギリくらいだが、母親は特段アルムだって意識する訳が無い。
アルヴィナはハグしていてもまだまだあるかないかの瀬戸際。リリーも今までサラシでガッチリ巻いて固定していたのでアルムも特段何かを感じた事はない。
しかし本日は完全にOFFのモードでサラシは巻いておらず、簡素な下着を身につけているだけ。大きく成長している膨らみがどうしてもアルムの腕にあたる。
これは単純に遺伝によるもので、そもそもとして妾は見目麗しい…………特に結婚してから好き勝手に女遊びができない貴族の男性が色々な配慮をせずにあれこれできるのが妾という存在なので、大概身体のセックスアピール能力値が高い。
リリーはそんな実の母親の魅力を遺伝していた。
アルヴィナに関しては年齢的な問題もあるし、アルヴィナ母は見目の麗しさだけでなく雰囲気も込みで気に入られたタイプなので体型は標準よりややスレンダー。
アルムは異性として見ている相手からの未知なる感触に戸惑いを隠せない。
一方で、リリーも揶揄うためにしているかと言われれば、今回ばかりはその要素は無きに等しい。リリーも周りのコミュニティーからかなり切り離されて養育されたので(実は学校に関しては唯のブラフでリリーは学校に通っていない)、経験も元にした知識などなく、教育の中で教えられた事や本などを読んで得た知識をもとにデートという物を考えている。
リリーだってデートは初めてなので、それに沿うしかない。いくら大人ぶっていて知識があっても素は16歳の娘なのだ。
手を繋ぐという案もあるが、リリーとしてはそれでは姉弟の交流のようだし雰囲気もでない。アルムだって今更手を繋ぐ程度では動揺もしないので、ただの観光地紹介で終わってしまう。消去法的に腕を組むのが1番だと判断したのだ。
なのでリリーの顔もうっすら赤い。
最初はうまくペースを合わせられなかったが、そこは元の運動神経が高い2人なので数分で歩調は揃ってくる。それがまたリリーにとって小さな喜びとなる。
しかし無言で歩いているのも味気ないので、アルムは適当に話を振ってみる。
「えっと、今日は本当に武器とか全然仕込んでないんだね?」
「魔法があるからね。それに横には信頼できる超強いボディーガードさんがいるもの。当然こうやって人通りの少ない場所では異能を使うけれど、混み合ってきたら危ないから異能は使えないし、アルムに守ってもらうつもりなんだけど、ダメ?」
腕組みは維持しつつ、蠱惑的な笑みを浮かべてアルムの顔を覗き込むリリー。アルムはそれにノックアウトされかけて「いいよ」と答えることしか出来なかった。
「でもどうしていきなり貴族居住区に向ったの?」
「ここでも有名なお屋敷があるから、アルムにも観てもらいたくて」
歩くこと五分、リリーはとある屋敷までアルムを連れてくる。
「ここに連れてきたかったの。どう、凄いでしょ?」
その屋敷はシアロ帝国の貴族の屋敷にしては珍しいほど大きな庭があった。
しかしその庭は丁寧に管理された植物や池がある訳ではない。凄い量の石膏像や銅像が展示されていた。
それはほとんどが人間以外の生物ばかりで、1つ1つが動き出しそうな程に躍動感のある像ばかり。何より目を引くのは、門と屋敷の間までの中間に鎮座する向かい合う巨大な龍の銅像。龍の頭同士が屋敷までの道にユニークなアーチを作っている。アルムが探査の魔法で探ってみれば、それはただの銅像ではなく特殊な合金を使用した大変高価な材料を元に作られた像である事がわかった。
「この子爵家の5以上前の当主、ルゴンゴ様というお方が【石替】という異能を持っていたそうなの。なんでも触れた物を石に変えてしまう能力で、ここの石像は本当に元は生き物だったみたい。その自分の戦果を飾り始めたのがこの庭園の始まり。そしてその御子孫は小さな時からこのような物に触れ合うからからか代々彫像がお好きな方が一族に多くて、代々が収集していった結果がこの庭園。
龍の像は7代前の当主が強引に造らせたもので、六代先まで借金を引っ張る元凶になったみたい。先代が借金解決の為、入場料金は取るけれど国の祭日などには自由に観覧できるようにしてからはかなり人気の場所なの」
「え、元は生き物だったりするの?」
やけにリアリティーが高すぎると思っていたアルムはそれを聞いて納得する。
スイキョウは衣装棚から異世界へ渡っていくとある有名な物語を思い出して石像が急に息を吹き返す気がして変にワクワクしていた。
「誰も確認なんてできないからなんとも言えないけれど、スギイア様は帝国の歴史書にも能力とセットで記されているし、毛の細かさから人間業じゃない気がするの」
「ほんとだ、探索の魔法で調べたら石像の半分は石になった臓器とかも確認できるよ」
「アルムの探査の魔法って性能がやっぱり異常だよね?」
クスクスと笑うリリー。それを見てアルムはピンときた。
「もしかして、ここに連れてきたのってただの観光だけじゃなく、僕が真偽を確認できるかもって思ったからだったりする?」
「半分は当たり。アルムなら真相を確かめられる気がしてたの。本当じゃなければ笑い話だし、本当だったらアルムにとって興味深い物なんじゃないかと思って。行動をとっている最中の生物を精細に確認できる機会って貴重でしょ?」
それは動物をそのまま石化させているので、筋肉の動きなども石になった時をキープしている。それはリリーの予想していた通りアルムにとって凄く興味深いもの。
つい真剣に“探査の魔法”でその構造を探るアルム。その凛々しい顔立ちをリリーは嬉しそうに眺めていたのだった。
◆
「次は宗教区画ね」
彫像をじっくり観察したアルムは、リリーの勧めで次のスポットに向かう。
「ごめん、さっきは像ばっかり見てて」
「いいの。それが目的だった節もあるし」
10分近くリリーを放置して像の観察をした事を詫びるアルム。リリーが笑いながら許すとアルムは返ってきた言葉に不思議そうな顔をする。
アルムには、リリーがまさか自分の真剣な表情が見たいがために最初のデートスポットを庭園にしたとは考えつくわけもないのである。
「次は音神ブネルンラトンのヒィツァリーエン教会ね。かなりマイナーだけど音神ブネルンラトンは知ってる?」
「楽器や歌唱に関わる人が信奉していて、鳥人族の一部や魚人族のごく一部も信奉しているよね。あとカテゴリーは邈神に属しているってだけかな?」
「それだけ知っていたら十分だよ。あの教会を治める教団は楽団の一面を持っていてね、うんと巨大な楽器があるの。ブネルンラトン様が邈神でもかなり鷹揚なお方だからか、ヒィツァリーエン教会への立ち入りは身分の証明だけすれば誰でも一定のゾーンまでは自由にできるの」
リリーの案内に導かれ到着したのは、スイキョウから見ても教会に見える大きな石造りの建物。類似する様式ではゴシック建築と呼べる建造物。ただ色が白と黒に柱などがはっきり塗り分けられていて建物1つがアートのようだった。
「良かった。余裕で間に合った」
出入り口の門に番人のように立つローブを深く被った者達。
アルムとリリーが貴族のメダルを見せると、ドアを開けて中へ招き入れた。
それに対して2人は少しばかりのチップを守衛の2人に渡す。
自分の信奉する神以外への物の贈与は基本的に為されないが、こうしてチップという形で個人に渡すのは問題無いとみなす事がほとんど。守衛も心得ているのでチップは教会に奉納する。
チップとは本来受け取った個人の物。それをただ自分の意思で守衛が教会に奉納すれば何の問題もない。
教会の中はスイキョウの知る教会の様で、真ん中に通路があその両脇に長椅子が置いてある。しかし正面の壁は不思議だった。
金属製や木製のパイプが地面から天井まで伸びていたり、天井から金色の金属の棒が何本もぶら下がっていたり、天井から床まで太い糸が何本も張っている。
席はほとんど既に埋まっており、アルム達は1番後ろで立ち見する事に。
しばらくして入ってきたドアからガシャンと鍵を閉める音がする。
すると左右の壁の一部が開き、ローブを被った集団が音もなく現れる。手に何かを持っている者いれば何もない人もいる。そして各々が定位置についたのかしばしの静寂の後、徐に教団員の1人が張られた糸を手で弾く。
響き渡る重低音。そこから堰を切ったように糸の傍らに立っていた者達が糸を手で弾き、それが徐々に調和する。
そこに合わせるようにパイプの下のペダルが踏まれ、独特の透き通る音が響く。
吊り下げられた棒は次々にトンカチのような物で叩かれて金属音を奏でる。
まるで空間そのものを揺さぶるような重低音を元にした演奏。
そこにハープとバイオリンの中間の様な楽器の音が追従し、更にはフルートの音がメロディーを奏でる。
そして遂に合唱が始まる。
それはアルムの聞いたことのない言語で、沢山の言葉が入り混じったような歌詞だった。不思議と魔力を揺らがされるような、そんな不思議な音が教会に広がる。
破綻して雑音にさえ思える音が絶妙に調和して聴く者を強制的に聴き入らせる。
アルムは空気中の魔力に不自然に渦を巻くように動き回るのを感じ取り、何かが湧き上がるような感覚に襲われる。壮大な、感動的にすら思える音の中に、不思議と不安と漠然とした恐怖と焦燥感を呼び起こすなにかがある。感覚が引き延ばされるような、身体が危機本能を覚える一方で心が聞き入っていて身体が動かない。
アルムはこの音と似た様な音を聴いたことがある気がした。
《ああ、これはあれだ。あの時とそっくりだ》
スイキョウの無意識の呟きでアルムはそれに思い当たる。
「(これは、グヨソホトート様にお会いした時にほんの少し似てる …………?)」
全てが呑み込まれる様な、絶対的な何かの片鱗に遭遇した感覚。逃げる逃げないのレベルではない。正面奥で渦を巻く魔力の奔流の中心は、一体何処に繋がっているのか。
アルムがリリーの手をギュッと握ると、何か呪縛から解き放たれたようにリリーの身体から力が抜けてアルムに寄りかかる。ボーっとしていて体内の魔力も荒れ狂っている。
見れば演奏者達も少し苦しげに見える。
十数分程度の演奏だったが、最後の音が消えた瞬間、魔力は何事も無かったかのように漂いだし、聴き入っていた者たちも夢から醒めたように急に体が動く。
演奏が終わり出入り口の扉が開く。まだ何処か辛そうなリリーを抱えて傍に逸れると、他の者達も少しフラつきながらゾロゾロと出て行く。そして最後にアルム達が出ようとしたところで前触れもなくフラリとローブを被った者が現れる。
顔は伺いしれない。だがローブからチラッと見える体はシャクンタ族のものだった。
そしていきなりアルムに対して奇怪な音を発する。それは言葉ではなくただの音の響き。歌ですらない。だがその音に意味が込められている事を本能的にアルムは分からせられる。それは何かの膜を通してイヨドの精神への声を聞いているようだった。
『あたにんしゃしす、かみとしごよ。なたのないほうるひびきこたておんたはおすがをしょうしうおあらわになりした。あなはおかたのぶんたいごこうりんにもたうるごようす。かうならばわたしめのこうけいしとしてむかえいとおもってしまいした。かんしゃのししとしてこれおうけとくだい。あなたよきおとのであがありまように』
アルムの前にうやうやしく銀のフルートを差し出すローブの人物。
アルムがよくわからず首を傾げると、スイキョウは助言する。
《アルムのお陰で分体が御降臨されたそうだ。その感謝の意を示しフルートを渡すだってさ》
「(今の何言ってるかわかるの?)」
何かを伝えようとしているのはわかるが、凄くぼんやりとしかアルムは理解できなかった。しかしスイキョウは具体的に言い当て、アルムは驚く。
《何となく状況とかを照らし合わせてみれば、言ってることは予想できる。ま、変な物じゃなし、受け取っとけ》
こういう部分での頭の回転はやはり絶対勝てないと思うつつフルートを恐る恐る受け取るアルム。
ローブの人物はペコリと頭を下げてそのままフラフラと壁に向かっていき、壁の隠し戸に吸い込まれるように消えていった。
◆
「アルムと本当に飽きないっていうか、びっくり箱の生まれ変わりだったりするの?」
「そんな生まれ変わりは嫌かなぁ」
フルートをアルムが受け取った後、そのまま何ごともなく教会を出たアルムとリリー。
リリーの関心は先ほどの出来事とアルムが渡されたフルートに集中していた。
「さっきの人、教会の司教様だよ。数年に一度だけ音神様に歌を捧げる為だけに表に現れるだけで、人前に出てこないはずなんだよ?」
「あの方が司教様なのは分かるよ。グヨソホトート様の司教様に雰囲気が似てたし」
狂っているとはまた違う、生き物としての境界をどこかで違えたようなそんな超然とした雰囲気はアルムもよく覚えていた。
そんなアルムの言葉にリリーはすごく不思議そうな顔をする。
「時空神グヨソホトートの教会って、不敬を許してもらいたいんだけど、正直ククルーツイの教会だけじゃなく全建造物合わせてもトップレベルで意味のわからない建物だよね?…………そもそも建物なの?」
リリーが知っているのは黒い半球の物体。窓も無ければ扉もない。誰かが出入りした事も目撃された試しがない。ククルーツイの初期の初期からの古参の教会で、年に1度誰かしら役所に教会に関する手続きをしに来なければそもそもそれが教会という認識すらされないであろうオブジェクト。
リリーをはじめとしたククルーツイの住人のほとんどは、教会とは名ばかりの神の分体を収めたシンボルか何かだと考えていた。
「建物だよ。中には普通に通路があるし、司教様にも出会ったよ」
「 ………………そうなの?あれ建物なの?」
出入り口無いのにそもそもどうやって入るのかと思うリリー。
実はククルーツイでも七不思議みたいな物が存在しており、その1つが時空神グヨソホトートの教会なのだ。命知らずの者達が何度もその侵入を試みた事もある。どこかに別の入り口があって地下通路でも作って出入りしているのではないかと考えられたことがあった。
しかしどんな優秀な探査の魔法を使えるものに調べさせても、それは真っ黒な真球ということしか判明しなかった。半球のドームに見えるが地面にも半球が埋まっていて、内部は全く分からないが外はどう考えても真球としか言いようがなかった。
誰も出入りしていないのにちゃんと毎年申請がある教会として、役所の方でも神グヨソホトートの教会は謎大き建物としてある意味有名だった。
「そう、急に出入口が現れて、入ったら中に閉じ込められちゃって。結構長くいたはずなんだけど気づいたら外にいてね、実際の時間は1秒も経ってなかったんだ。凄い不思議な経験だったよ」
アルムは呑気にただ感想として言うが、リリーは思わず歩調が乱れるほど驚く。
「それは不思議な経験で片付けていいものじゃないよ!一生語り草にできるレベルの話だから!そもそも本当に中に入ったの?」
「うん、コレが証拠かな?」
アルムが胸元が引っ張り出して見せたのは、司教が持っていた物と同じと思われる銀の鍵状のペンダント。魔力がこめられているのとはまた違う独特の雰囲気のある代物にリリーはビクッとする。
「アルム、それ教会の代理を名乗れるほどの代物だと思うんだけど。でも何よりの証拠だね。これなら貴族社会に出ても鉄板ネタにできるよ」
そんな凄い物なのかとアルムは首を捻っていると、リリーの関心は音神やフルートに移る。
「そういえば、歌を聞いててあんな不思議なことが起きたのは初めてだったんだけど、アルムが途中で引き戻してくれたよね?」
「実はあの時分体が少し顕現してたみたいなんだよね。あのまま引き戻さなかったら嫌な予感がして、咄嗟に手を握ったんだよ」
「よく覚えてないけど、凄い奇妙な感覚だったのは覚えてる。でもアルムはそれに耐えられたの?」
アルム達も知らぬ事だが、アルムが引き戻したおかげでリリーはギリギリで戻ってこれたのだ。他の者は頭の中にメロディーが流れ続けて現在進行形で精神を蝕ばまれている。数年もすれば司教の様に声は音としてしか出すことができず狂ってしまうか廃人一直線のレベルだった。
分体でもほんの僅かに姿を見せるだけでこれほどの影響を及ぼすのが神という存在。
アルムが耐えられたのはグヨソホトートに謁見した経験があり、また銀の鍵状のペンダントがアルムでさえ知らぬうちに超強力な護符として効果を発揮していたからだ。
「直接視たらダメだったと思うよ。でも似たような経験があるというか、なんて言えばいいかな?視てるってのは正確じゃないよね ……………音神ブネルンラトン様のお姿って“音そのもの”でしょ?聞き入るけれど、同時に魔力の渦に気が向いていたお陰か意識が分散していたのかも」
「どの道それで耐えられたら凄すぎるよ。だからフルートをいただいたんだろうけど」
アルムはそう言われて改めて手元のフルートを見る。
「(スイキョウさん、どうして音神様は僕に反応したのかな?)」
《なんかグヨソホトート様とやらと仲でもいいんじゃねえか?仲悪い神同士がいるなら仲良い神同士のがいてもいいだろう?》
ぶっちゃけあんな超常現象そのものみたいな存在の意思など考えるだけ無駄。スイキョウはそうサジの投げたくなる相手が神だった。
「(確かにグヨソホトート様と謁見したとき似たような音を聞いた気がするんだよね。こう、地の底から響くような重低音を)」
《司教さんも愛し児ってアルムを呼んだし、神様同士だとなんかわかるもんかね?》
結局具体的な理由はわからないが、アルムもスイキョウもなんとなくグヨソホトートへの謁見が関係している気がしていた。
「でも ……………このフルート、どうしたらいいのかな?」
しかし急にフルートを渡されてもアルムも少々困惑する。
探査の魔法で探ってもうまく判定できない謎のフルート、厳密には横笛と言った方がわかりやすい代物だが、見た目は銀の金属質だが手触りは木製の笛で不思議な暖かみがある。
吹き口の裏には二本の笛を十字架状にクロスさせた音神ブネルンラトンの印が刻まれており、迂闊に扱えない代物であるのは明白。
雰囲気は銀の鍵状のペンダントに近く、普通の代物だとは思えなかった。
「貴族社会で何か1つ楽器が扱えたら、その手のものが好きな貴族とも縁が作れるかもよ。人脈って強力な武器なの」
「うーん、取り敢えずは保留かな?」
少なくともデート中に腰を据えて観察するべき物ではない。1番最初の失敗があるだけに、アルムは内ポケットにしまうフリして虚空に笛を収納した。




