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「(体も辛い、精神も辛い…………)」
《ロベルタさん、あれこそ正しいスパルタ教育の手本だったな》
見た目通りの神経質さで、ダメなところがあるとすぐにピシッと杖が触れてくる。表情から首、肩、腕、指、腹、腰、脚――――様々な部位で驚くほど細かい指示が出るのだ。数時間の授業が立ち方1つで終わったといえばその細かさが伝わるだろう。
最後はようやく合格を貰えたが、割と天然さ由来の図太さがあるアルムと言えど初日から疲れ切っていた。
「(しかも夜はイヨドさんが待ち構えているし……)」
《ああ、帰ってきても容赦なかったな》
塾から帰宅した後は、スイキョウが肉体を動かし親戚の子達の家庭教師。夕ご飯を食べて部屋にいけばイヨドの拷問鍛錬。寝る前に習ったことの復習をして。
全てが終わった後は久し振りに眠り薬なしでアルムは深い眠りについていた。
「(今日は何からだっけ?)」
《確か『医学』からだな。次が『魔法武闘』で最後が『特別教養』だ。毎日ロベルタさんじゃないのが救いか》
「(そうだね)」
指定の教室に入ると、其処には机と椅子が2セット。
その1つには純白の髪の女の子、例のツンツン娘が座っていた。
「……おはよう」
アルムが一応挨拶をして座ると、ツンツン娘は頭が揺れたかどうかのレベルでほんの僅かに礼を返した。無視するほど狭量ではなかったらしい。
「(これは話しかけちゃダメ?)」
《アルムのコミュ力向上の為には黙っていたいが、まあここは言っておくか。結論から言うと、今は少し様子を見よう。さりげなく見てみればわかるが、身体が少し強張っている。多分ゼリエフさんの授業を受けるのに少し緊張しているんだ。アルムは肝が据わってるというか、元々そういうことは気にしない性格だし、ゼリエフさんと父親の仲が良かっただけに親しみもある。でもツンツン娘からすればいきなり塾長から教えてもらうとなれば、多少の緊張はあって然るべしだ。気が張ってる時に話しかけてもアルムだとちょっと難しいだろうな》
「(『会話』の科目があったらスイキョウさんが先生になればいいよね)」
《一般論の範疇を出ない。大人ならそれなりにできるさ》
それでも気になるのか、アルムはチラチラとツンツン娘を見てしまう。
「(こんな綺麗な白い髪も珍しいよね)」
《そうだな。街中でもこのレベルは見たことがない》
スーリア帝国は様々な国が併合されてできた他民族国家なので、非常に多様な人種が入り混じっている。髪色は大体、金が1番多く、あとは黒、茶、赤などまちまち。銀、白も僅かにいるが、やはり母数は少ない。
余談ながら眼は灰色が1番多く、青、緑、茶、黒と続き、赤や金は少ない。
《白髪に赤い瞳…………遺伝はあるだろうな》
先日見たツンツン娘の母親はちょっとくすんだ白髪だったが、瞳の色は灰色だった。まあ詮索する物でもないかと思ったが、スイキョウも少し興味があった。
暫くすると、鐘がなってゼリエフが教室に入ってくる。
「おはよう2人とも。『医学』を担当するゼリエフだ。この科目の教鞭をとるのは実に8年ぶりになる。それでも満足のいく授業ができるように頑張らせてもらうよ。それでは、たった2人しかいないが一応自己紹介をしてもらおうか」
本来は自己紹介などしないが、ゼリエフも少人数の授業だからか、それとも教室の空気からなにかを感じたのか少し配慮をしたのだろう。ゼリエフと目があったのでアルムが先に席を立つ。
「アルム・グヨソホトート・ウィルターウィルです。よろしくお願いします」
特に言う事が思いつかないのでそれだけ言ってアルムが着席すると、ツンツン娘がスクッと立つ。
「私は、アルヴィナ・ネスクイグイ・フロリヴガです。略称はヴィーナです。よろしくお願いします」
ツンツン娘改めヴィーナは軽く頭を下げて着席した。
「はい、ありがとう。君達は次の授業も2人きりで受けることになるから、私も君達が仲良くしてくれると嬉しい。すぐに、とは言わないがね。切磋琢磨する良き友となる事を願うよ。それでは、授業を始める」
◆
『医学』の授業では、所々スイキョウの知識と異なる部分もあったが、どちらかと言えば肉体の構造に関する話より魔力に関わる説明が多かった。体を、肉体、精神体、霊体の3つのレベルに分けて捉えて展開された説明は、スイキョウにとっても興味深く面白いものだった。
スイキョウにも学びの多かった『医学』が終わると、次は『魔法武闘/超実践編』の授業になる。これは野外授業なので校庭に集合になる。
アルム達以外にも校庭に出ている子たちがいて、定められたエリアに集まっていた。しかして平均して1クラスの人数は約15人前後。2人きりで少し離れたところに立つアルムとヴィーナは、その美麗な黒髪と白髪のコントラストでよく目立っていた。
「待たせたね。それではこれより『魔法武闘/超実践編』の授業を始める。まず始めに、このクラスの最終目標を伝えておく。このクラスの最終目標は『戦士のクラスの子にも打ち勝つ武力を身につけた実戦特化の魔術師を育て上げる』だ。故に普通の魔法のクラスとは大きく異なる授業をさせてもらう」
魔法の修練だけでなく、体力作りも行うし武術も仕込むとゼリエフは続けて説明した。
「このクラスで免許皆伝に至ったならば、君達には私自らが最上級の『認可推薦状』を書こう」
ゼリエフがそう宣言すると、途端にヴィーナの目が爛々と輝いた。
「だが、いきなり授業には入らない。まずは自分を見つめ直す所から始めよう。何ができて何が出来ないのか、己の何を磨くべきかを再認識しなくてはならない。今から30分与えよう。その間に魔法を実際に使って確かめてみなさい」
そういうと、ゼリエフは少し離れて黙って見守り始めた。
「(まずはどれからやろうかな?)」
《天属性抜きの五属性使いって事になってるからな。先ずは1つずつ順番にやったら、次は複合魔法でいいんじゃないか?》
「(そうだね。じゃあ水からやろうかな)」
おそらく普段からコントロールの修練をしているだけあって、最もアルムがコントロールに秀でるのが水属性だ。
「(取り敢えず、小手調べにこれくらい…………)」
アルムは1度に100個の水弾を生成すると複雑な軌道を描いて飛ばせる。これだけでも普通の生徒には真似できない技だ。しかしそれに対抗する様に水弾の群れが追走する。
《うわっ、すげえ対抗心だな》
「(ヴィーナちゃんもかなり速い)」
《でもアルムほど精密じゃないな》
空中で大量の水弾が高速で煌めくのを見て、他のクラスの子達は、酷い場合は教師までポカーンとその様子を見ている。
《アルム、後ろ取れるか?》
「(やってみる。僕も得意分野では負けたくないからねっ!)」
アルムは軌道を地面スレスレの低空に下げてから水弾を一気に螺旋を描きつつ地面に垂直に上昇させる。
追走するヴィーナの水弾の群れは一瞬乱れたがまだ着いてくる。そこでアルムは更に急カーブを繰り返して、翻弄されたヴィーナの水弾の後ろを取った。
《よしっ!ひねりこみだ!》
豚はあの技でアドリア海の云々と勝手に盛り上がり地味にアルムの集中力を削ってくるスイキョウをよそに、アルムは振り払おうとするヴィーナの水弾にもしっかり付いていき、切れのいいところで水弾を減速させるとそれを一纏めにして龍の形に変えて、一気に霧散させた。
それを見てヴィーナは悔しそうに歯噛みする。
しかしここで終わらない。アルムは霧を収束させて水の矢を作る。そして自分に向けて飛ばすと、金属性魔法で全身を強化して空中でキャッチ。矢を瞬時に鞭の様にして振り回し、着地と同時に地面に叩きつけた所で完全に霧散させる。
《やるな、アルム》
「(獣を狩る時はこれぐらいしないとね)」
イヨドの鍛錬で、元々人並み外れていたアルムの水属性魔法のコントロール能力はいよいよ人外の領域に足を踏み込みかけていた。
特に1番の高難度は水を鞭の形状にする事だろう。実際に鞭のように動くわけではなく、動きを緻密にコントロールして鞭のように見せているのだ。簡単に言えば、3Dモデルをリアルタイムで動かしているのに近い。これを自然に見せられるレベルにするには、凄まじいコントロール能力に加えて極めて高い頭の回転力が必要になる。
「(次は金属性と、予定を繰り上げて地属性も一緒にやろうかな?)」
《おう、どんどんやっていこうぜ》
アルムは金属性魔法で全身を強化すると、ムーンサルト、ルドルフ、伸身ムーンサルト、ローユン、イポリトからリューキンと曲芸じみた動きを披露して地面を疾走すると、自分で地属性魔法で土壁を作り出していき、それをパルクール染みた動きで連続で飛び越えていく。
最後は壁の上を跳んでいき、その奥に1番分厚く作った壁を自分で殴り壊した。
一方ヴィーナは、入塾試験でも見せていた粘土を含んだ泥の魔法を使っていた。
《さて、アルム。仕掛けられたからには、こっちも仕掛け返してやろうじゃないの。あの子もそれがお望みだろう》
「(了解!)」
アルムはヴィーナが泥の魔法を操作している近くに強固にした土壁を何枚も作り出す。あまりに不自然に近い距離に現れた土壁にヴィーナは怪訝そうな顔付きに。しかし直ぐにその意図に気がつくと、アルムを軽く睨む。
同時ヴィーナの泥の魔法が動き出し、土壁に向かっていく。
《さあ来るぞ、最大強化だ!》
「(わかってる!)」
泥は凄まじいスピードで巨大な腕に変化すると、ヴィーナの怒りを表すような勢いで壁を殴り付けた。
1枚2枚と家の壁に匹敵するアルムの魔法の練度を証明する異常に高い強度の土壁が吹き飛んで行き、10枚全てをあっという間にブチ抜かれる。
《かー!やっぱり地属性に於いては凄いな!アルムを完全に上回ってやがる!》
ヴィーナは腰から下げていた水筒から水をゴクゴクと飲むと、アルムを見て勝ち誇る様に薄く笑う。
そして今度はその泥の手を壁に変えた。
《攻守交代って事か。自信の程は?》
「(やるだけやってみるよ!)」
アルムは深く集中すると、地面から太い土の槍を生成して壁に突き刺す。
槍は分厚い壁の半分を抉ったものの、壁をブチ抜くことはできなかった。
「(やっぱり凄いや)」
《でも、まだ手はあるだろう?先に複合魔法使おうぜ》
スイキョウの提案が何を示唆しているのか、アルムには合点がいった。
「(いいのかな?)」
《このまま勝ち逃げされるのも据わりが悪いだろ?》
2人とも心の中では大人気ないとは思うが、純粋に試したい気持ちもあった。
空中に水弾を500以上生成すると、それをかなりの時間をかけて獄属性魔法で変質させて、最大スピードでヴィーナの壁に向かわせる。
ヴィーナは魔法を解除しようとした寸でのところでそれに気づき、反射的に壁を再生成する。
水弾は凄まじいスピードで土壁に当たるが、やはり水。槍よりは威力は下がる。それを見てヴィーナも虚仮威しかと思ったのだが、あることに気づいて顔が驚愕に染まる。
「(父さんが教えてくれた1番破壊力のある毒…………魔獣のトップクラスに位置する龍種が一種、腐蝕龍の使う劇毒を模した液体を極微量に混ぜた水弾)」
急拵えで均一に毒は混ぜられなかったが、水弾は徐々に壁を溶かして打ち崩す。
《凄い力だな。成分はよくわからんが》
「(魔獣ですら全く耐えきれない毒だからね)」
ヴルードヴォル狼を仕留めた真の魔法が、この毒だ。重力操作で叩きつけてから最後にスイキョウが放った魔法の熱風と圧力で狼が数秒気を失いかけた時に、素早く入れ変わったアルムが狼の尻の穴から強引に毒を流し込んだのだ。体内組織をズタボロにされてまともに動けなくなった後は、最大強化した天属性の光の矢でその首を貫いたのだ。これが魔獣撃退の最後だったりする。
しかしながら、やはり大人気なかったことには違いない。チラリと見るとヴィーナは親の仇でも見るが如く涙目でアルムを睨みつけた。
「(ねえ、今ので本当に嫌われてない?)」
《そんな事より、毒がヤベエぞ》
毒は壁を溶かすのみならずそのまま地面を溶かしている。怪しげな煙が上がっているので間違いない。
アルムはハッとすると、最大火力火の矢を限界まで収縮し、それを10本作り出すと地面に撃ち込んだ。この凄まじい破壊力を有する劇毒は、強烈な炎で消し飛ばすしか即座に無効化する方法が無い。念の為一瞬だけスイキョウが肉体側になり、地面で熱を解き放ち完全に毒を消した。
「(龍の峡谷の一部分はあの毒が地面に染み込んだから永遠に不毛の土地になった、と言われてるしね。危なかったよ)」
龍の峡谷とは、スーリア帝国最西端の国境線だ。そこには古来より魔獣のトップクラスのパワーを持つ龍が数多棲息しており、長年大きな被害を齎すと共に国外の侵略を防ぎ首都から遠く離れた西方地域の独立を封じる要にもなっている。
「(とりあえず、これで一通り主要な物は見せたかな?)」
《そうだな、全部やってたら魔力が足りないし、無闇に手の内を明かすことも無いだろう》
そう、アルムが披露したのは使える魔法の内でもほんの僅かだ。それに水弾の最大制御数は本来1000を超える。地属性も本領は探査だし、獄属性は薬物生成が得意ではあるものの、操作の難しい消滅の魔法や呪いの魔法も使える。火は森の中でも使えないので1番実力は低いが、それでも火の矢だけではない。
ヴィーナは水・金・地のみなので、ハイペースだったアルムに対してほぼ同じタイミングで終わったようだ。満足げな笑みを浮かべているゼリエフの元まで2人が駆け寄っていくと、ゼリエフは大きな拍手をする。
「素晴らしい!まだどちらも今年で11才という年でここまでの鍛錬を積んでいるとは。特にアルム君の水属性魔法とヴィーナ君の地属性魔法は戦場でも通用するレベルだろう」
「「ありがとうございます」」
アルムとヴィーナが頭を下げると、ゼリエフはうんうんと頷く。
「さて、それぞれに私が総評を述べてもいいのだが、まずは君達の口から分かったことを聞いてみたい。ではまず、アルム君」
「はい。まず水属性魔法ですが、もう少しスピードと威力の強化に課題があるかと思いました。僕が知っている1番の水属性魔法の威力では金属さえ切り裂くと言われています。当面はこれを目指します。
金属性魔法は、まだ全身強化に全力を回すと感覚が追いつかなくなる事があるので、自分の肉体によりあったレベルの強化のバランスの模索が必要と感じました。
火属性は1番使ってこなかったので、やはりレパートリーや精度、スピード、コントロール、生成位置などあらゆる点で水属性魔法と比較した時に劣ります。火属性はまずは水属性魔法レベルを目指します。獄属性は、均一に毒を混ぜる制御能力の無さが露見しました。加えて精製時間もかなりかかっており、実戦での登用にはまだまだ程遠いでしょう。
最後に地属性になりますが、地属性もやはり水属性レベルの能力はありません。ヴィーナちゃんの魔法に比べてもやはり課題は多いです」
《まあそんな所だろう》
アルムは今年で11才とは思えないはっきりとした口調で自己分析を述べた。スイキョウと共に生活するようになってからは、色々な事を日々議論しているのでアルムも問題点は把握済みなのだ。
「ふむ、なかなかいい分析だ。では、ヴィーナ君。君はどうかね?」
ヴィーナは少し悩みつつも、ポツリポツリと話し始めた。
「私は、地属性では、魔力消費にも気を配って操作していました。難点は、大雑把にしか形を作れない所です。彼のやったみたいな、槍状にしたりといった形状変化にはまだ時間がかかります。
金属性は、少しムラがあって、単純な力の増加は苦手です。速度や回避は得意ですが、地から足を離れた後の制御も……これは運動が元々得意じゃないのもありますが…………苦手です。
水属性では、速度も制御もレパートリーも、悔しいですけれど、全ての面で彼に負けました。まずは彼のレベルを超したいです。それと、自分の扱える属性以外の魔法への知識が足りないと思いました。彼が私の壁を溶かした方法が、全く分かりませんでした」
「ヴィーナ君もいい分析だね。それでは私からの総評を」
ゼリエフは優しげに微笑むと、アルムに向き直る。
「まずアルム君。君はかなりコントロールに重点を置いて修練を積んでいるようだ。そして多角的に、実戦を想定した動きもかなり見受けられる。これは師匠の影響かな?だが、魔力消費の抑えに少々粗があるね。速度やコントロールを優先する一方で、消費にムラが見られる。それと火属性についての問題は自分自身でも自認しているようだね。それと…………何処か抑えているような時が幾度か感じられたね。その用心深さ、よく似ているものだ」
《うわ、バレてら》
少し懐かしげな顔をしてゼリエフは苦笑する。ヴィーナはよくわからず首を傾げているが、アルムは示唆している内容が理解できた。
「次にヴィーナ君。君の泥を用いた地属性魔法は大変よろしい。特に君は全体的に魔力消費を丁寧に抑えている。一方で少々の臆病さがある。特に金属性魔法での激しい動きの中で、君はどこか怪我を恐れている。故に腰が引けて、魔力の操作も乱れる。そして余計に恐ろしくなる。恐怖が恐怖を呼んでいる。それと全体的に火力不足だね。攻撃手段がもっと多くないと少し厳しい。また最大の難点は、折角の地属性持ちでありながら探査の魔法が未成熟な所だ。アルム君の最後の方の魔法は、地属性魔法が使える君ならば全容は掴めずとも概要は理解できたはずだ」
そう締めくくり、ゼリエフはアルムとヴィーナを見る。
「君達には、金属性魔法以外に関しては自己修練を積んで欲しい。無論、授業では教えないだけで、あとで色々と聞きに来るのは大いに結構。遠慮せずに聞きに来なさい。私の使えない属性であろうと経験則からできるだけ対応しよう。場合によっては他の先生に聞いてもいい。君達は既に己の力でここまで実力を伸ばしている。故に私もあまり口は出さない。直すべき点も既に述べたからね。それは君達の実力を信頼してのものだ。時折抜き打ちで魔法を見させてもらうからね」
「「はい」」
「いい返事だ。では次のテストに移ろう。今度は純粋な身体の強さを見させてもらうよ。勿論魔法は一切無しだ。ズルしてもすぐわかるからね。まずは50m走から立ち幅跳び、高飛び、柔軟、槍投げ、腕立て伏せ、腹筋、最後に長距離走だ」
ゼリエフがそう言うと、アルムは微妙そうな顔になり、ヴィーナは明らかに顔が引きつって青みがかっていた。




