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「久しぶりにお姉ちゃんに会えるんだね!」


「それだけレーシャに余裕が出てきたって事だよ」


 13月も終わり金冥の森が完全封鎖されてからこの1ヶ月。アルムはレーシャの教育に専念した。

 まずアルムが手を焼いたのは、レーシャの基礎知識力。レーシャの知識には異常な偏りがあり、魔法に関しては穴だらけと言っていいレベルだった。また理解力もアルムやフェーナの様な異常な領域に突入していないごく普通の女の子なので、アルムの説明を1度で噛み砕いて覚えることが難しかった。


 そんな中で、スイキョウは理屈は置いておきまず丸暗記させる事を提案した。

 どうやら丸暗記は苦手ではない節が見られたレーシャは理屈での理解は後回しにしてまず理論を全部暗記させる。その後直ぐに実践させてみることで、理解できない文章の羅列の意味を身体を持って理解させる。このやり方がレーシャに1番向いているのを早期の段階で見抜くことができた。


 幸い一度感覚を掴んでからの習熟スピードは体質も相まってアルムに匹敵するポテンシャルを持っていて、アルムでも敵わないと感じたイラリアと血を分けた妹であることでよくわかる素質があった。


 ムカリンとの生活もあまりぐちゃぐちゃと難しく考えない性格が幸いし、結構あっさり馴染んでいた。ムカリンはどれだけ雑に動いてもまるで固定されたかのように頭の上から離れず、ドジっ子なレーシャ相手でも平然としていたのも幸いしたのだろう。


 ただフェーナが初見でそのふてぶてしいひよこらしき何かがアルムがらみだと聞いて即座に異能でその正体を探り、声に出ないほど驚いて茫然とする珍事があったのだが、それ以降フェーナはもうアルムのする事をいちいち常識の枠で考えるのはやめるべき枠、つまり完全にサークリエと同じ枠組みに分類した。


 そんなムカリンの助力(実際は本当にただ余剰魔力を喰ってぼーっとしてるだけだが)もあって、レーシャは優秀な師のスパルタ教育の元、凄まじい勢いで魔法を習得し始めた。

 だがアルムがそれだけで満足するわけがなかった。ランニングしつつ算数の問題をだして頭も体も鍛えさせ、基礎知識に関してもわざわざ自分(スイキョウが担当)で図を用意してレーシャに叩き込んだ。

 先に暗記で後から理解がやってくるタイプの典型的な例の様なレーシャは、とにかくスパルタに最初は知識を叩き込み、実践させて理解させるの繰り返しで、本当に3ヶ月で決着をつける勢いでアルムは頑張っていた。


 本来は3年以上かけてやるカリキュラムだが、レーシャはイラリアのお客様の客層が影響して貴族のマナーや慣習はかなり知識があり、一般教養も偏りがあったが元が一般的な感覚を持ってる子なのであっさり身につけた。

 敬語に関してはもうとにかく暗記と実践の繰り返しで、なんとか問題無いレベルにまで鍛え上げた。

 基礎学術は元から文字も読めて書けているので大きく躓かず、ただし少し算術が苦手な傾向が見られたがスイキョウ作成の算数ドリルを解かせることでメキメキ力が伸びていた。

 根が素直で真面目なので、ステップアップを慎重に行い褒めてやれば勝手に伸びてくれるタイプだったので、レーシャはアルムにとっても教え甲斐のあるタイプだった。


 なので目下1番の課題は職業技能だが、アルムはゼリエフの意思を継いで一切の妥協はなく、全魔法属性を同時に鍛えつつ体力方面に関しても鍛えさせる鬼のようなトレーニングを実施していた。


 筋トレさせつつ魔法を操作させるのは当たり前で、一番厳しい時はアルムの飛ばす魔法から逃げつつ反撃をするなど、アルムからすれば遊び程度の鍛錬だがレーシャからすればスーパーハードな鍛錬を実施。

 だがレーシャもアルムが真摯に自分に対応してくれるのは異能を通じても理解していたし、同じようにスパルタで鍛えられる、むしろ性格上の問題でもっとハードに鍛えられてるフェーナの存在が、レーシャの心の支えになった。



 スパルタ指導をする一方、アルムは鞭だけでなく飴も与えた。

 最初は散々拒絶されたが、不味かったら1週間鍛錬無しで良いとまで言って昆虫食の良さを体感させて一般的な栄養学は理解しているスイキョウ監修の栄養効率の良い魔蟲食を貢ぐように与えて、ラレーズのくれる果実類を加工した回復能力を超強化する絶品のジュースを提供し、ボードゲーム類などの娯楽の提供も行った(ラレーズといい勝負をするのでラレーズも嬉しそうだった)。

 また召喚魔法の無駄遣いで、ウサギ系などの小動物系の使い魔を簡易召喚してアニマルセラピーを定期的に実施し、レーシャのメンタルにも大きく配慮してモチベーションを維持させることを専念した。


 結果としてレーシャは生徒として従順に、むしろ飼い主を慕うワンコの様になっており、アルムは完全にレーシャを手懐けていた。

 だがその一方で待遇に差があると不満を言い出したのがフェーナである。


 確かに有料だとか500万セオンが懸かったりしていてアルムのモチベーションに差があるのは理解しているが、自分も同等以上にスパルタ教育されてるのに酷くない?私も女の子なんだけど忘れてない?とフェーナはアルムに詰め寄ったのである。


 レーシャがアルムに懐けば懐くほどフェーナがアルムに詰め寄った。

スイキョウにはまるで人懐っこいワンコを構う飼い主に、「私もかまえ」と近寄ってくる猫に見えた。


 そんな2人の関係にもアルムは戸惑いつつも色々配慮したりしてとおよそ13才のすることではないことに奔走していると、あっという間に一月が経過した。


 4日に1度、アルムがモデル業務の名の下にリタンヴァヌアを離れる日がレーシャの休息日だったが、レーシャには温泉に浸かりアルムから教わったストレッチをして身体を休めているだけで1日が終了してしまう状態で、レーシャも定期的にイラリアの元は訪れる気だったがなかなか行けない状態が続いていた。


 実際のところ、モデル業務と言いつつただイラリアの話し相手をしたり祝福の加工の時のアシスタントをしたりと、レーシャの休息日のために設けられた日であることは事実であるがそれでもレーシャの疲労具合はなかなか酷かった。


 だがとある手紙がレーシャに来たことで、急にレーシャがアルムについていく!と言い出したのである。

 水を得た魚の如く急に元気になり、フェーナまで一緒に巻き込まれていた。


 アルムも経過報告としてそろそろレーシャを連れて一度イラリアを尋ねた方が良いことは理解してたので、特に反対はしなかった。

 どうやらレーシャによると、レーシャにはこっちに来て出来た友人が居て、それはイラリアのお得意様の商会の子息で、上冬の間だけは公塾も冬休みなので逢える友達とのことで、その子がイラリアの元に来るとのことだった。


「その子ね、凄く鉄琴とか打楽器の演奏が上手なんだよ!」


「じゃあ一緒に演奏とかしたりしてるの?」


「うん!フェーちゃんも一緒に付き合ってくれるんだよ!」


 因みにレーシャもフェーナに影響されて、音神の教会で演奏されていたバイオリンとハープを強引に組み合わせたような弦楽器(正式名称はリュケロラーラ)をマスターしている。

 今ではアルムがフルートを担当できるので息抜きにフェーナも合わせた3人で演奏をすることがあるのだが、レーシャはその子も合わせた4人で演奏がしてみたいとのことだった。


「それは私も賛成。今まで弦、弦、打楽器ではバランスが悪かったから私が笛だった。ウィルが参加してくれると私もヤポンスカヤが演奏できる」


「それは構わないけど、僕はもともと仕事で来てるからそれが終わったらね?」


「ん、わかってる」


 そんな事情があって、今回はごねたりせずにフェーナもあっさり付いてくることに。


 除雪作業が既に完了した道をアルム達は歩き、そうして1ヶ月ぶりにイラリアの元を訪ねるのだった。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 各教会にいた司祭って各神が創り出した眷属なのか元々は人間で交信しすぎてやばい人になったのかな? 元々人だったら神から愛された上で司祭をこなせるとか化け物では……?
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