事件です!ネズミ親分!
おれは、暗い森の中をひとりで歩いていた。
空には まぁるいお月さま。
歩いても歩いてもついてくる。
あのお月さまは、きっと おれの事がすきなんだろう。
だが、おれは今 お月さまにかまってられない。
おれしかできない、だいじなだいじな、しごとを任されているからだ。
家を出る前
おれのカミさんが、おれに大きなふくろを持たせた。
「あんた、それをウシさんの家に届けておくれ」
「おう、しょうちしたぜぃ!」
おれは、むねをドンとたたいて大きなふくろを持った。
おれは、そのふくろをもって、暗い森の中をひとりで歩いている。
ずっとついてくる月が、おれを見ているようだ。
気になったのでふりかえってみる。
「な!なんだこれは!」
おれのうしろの地面には、点々と血のあとが続いていた!
「おれはケガなんかしてないぞ!」
これはキケンだ!なにか事件がおこったに違いない!
おれは、血のあとをたどる事にした。
赤い点々は、ずっと続く。
ずっと、ずっと続いてゆく、
「あら、あんた早かったのね」
血のあとをたどったら、おれの家にもどってしまった。
「あらやだ、あずきの袋がペッちゃんこじゃない」
おれのもっていた大きな袋は、いつの間にペッちゃんこになっていた。
点々と続いていた血のあとは、あずきだったようだ。
「しかたないわね、もっとじょうぶな袋を用意して、あしたもって行く事にしましょう」
そういってカミさんが作ってくれた ぜんざいを食べた。
たっぷりのあずきに、笑っているお月さまみたいな丸いおもち。
そのおいしい事と言ったら!
とんでもない 大事件だぜ!
終