表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
反則スキルの条件付き確率  作者: どこにでもいる主人公
第一話「サバイブ」
8/8

不老不死は瀕死

 手のひらから心の臓へ。そして血が巡るように全身へ……。『不老不死30』という文字が放つ赤い輝きは、私の体中に満ちてゆく。

 そして唐突に、そう、あまりの突然さに衝撃を受けたかのような錯覚と共に、私の身体から『痛みが消失した』。

 混乱した。おぞましいほどの吐血は瞬く間に止まり、あれほどまでの痛みが何事もなかったと言わんばかりに消え失せたのだ。

 解毒、したのか……?

「いや、違う……」

 それだけじゃなかった。

 まず、先ほどまでの肌寒さを感じなくなった。私は依然として薄着であり、気温が変化した様子もないのに、寒さ、というか外気の温度を全くもって感じない。おまけに朝、目が覚めてからの空腹感もない。ありとあらゆる不快感から解放されたような不思議な安らかさだった。

 全身にまわった致死量の猛毒を一瞬で解毒、破壊された重要内臓器官の完全再生、その他諸々の感覚の遮断……、自然治癒というには人間の能力値を明らかに超えている。

 この現象を解き明かす鍵は、きっとこの手のひらの文字だ。

「ひょっとして、本当に不老不死になってる……?」

 私は近くに落ちていた鋭い木の枝を拾い、そっと親指を刺してみた。やはり痛みは感じないが、驚くべきはその後だ。ぷくっ、と鮮血が玉となって流れ落ちようとした瞬間、それは傷口から体内に戻り、刺し傷も跡形もなく塞がったのだ。

「マジじゃん……」

 命の再生にしては、世の理を無視する次元の話になってくるのではないだろうか。試したくはないが、今の私はきっと、頭を潰される即死コースでも難なく甦ることが出来るはずだ。

 ……。ヤバいとしか言えねー……。

「でも、この能力があれば私はもう二度と死なずにすぶふぉおぉっ!!!??」

 私の口から血の噴水。

 そしてぶり返す激痛。

『不老不死』効果切れた!?持続時間短っ!!

 死ぬ!死ぬ!死ぬ!

 もう一回!もう一回だけ発動して!!

 輝きを取り戻す手のひらの文字。

「はぁ、……、はぁ……」

 良かった。言葉にしなくても、心で念じるだけで『不老不死30』は発動してくれるようだ。これなら例え喉を潰されても安心だな。(喉を潰されるような状況には安心できないが)

「ん?『不老不死30』……。30……」

 ひょっとして、30秒だけっすか……?

 短い!!(泣)

「30秒ごとに発動し続けないと駄目なのか、これ」

 それって、かなりまずい。

 私は左手に目をやる。


『998』


 やっぱり、減ってる。

 最初に見たときは『1000』だったはずだ。それが、『不老不死30』を二回使った今は『998』。この数値はMP(ゲームに馴染みの無い人向けの補足説明。マジック・ポイントとは魔法を使うのに必要なエネルギーの一般的な呼称)とでも言うべきか。能力発動の回数制限とみて間違いないだろう。

 まとめてみると、こうだ。

・一度の発動で30秒間不死身になれる。

・一度発動する度にMP(仮)が1減少する。

・MPが0になったらどうなるか分からないが能力が使えなくなるのはほぼ確定。

・残りMP『998』


「………………………………ん?」


 不死身でいられる時間=能力発動30秒×残りMP998=29940秒=499分=8時間19分


「今から8時間以内に、本当の意味で解毒を行わなければ……、死ぬ?」


 猶予はもはや一日すら残されていなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ