表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
反則スキルの条件付き確率  作者: どこにでもいる主人公
第一話「サバイブ」
6/8

獣との邂逅

 日が暮れた。

 相変わらず森は静かだ。このまま寝てしまっても、野獣に襲われることはないと思い、少し安心した。

 今日は一日中歩きっぱなしで疲れた。明日に備えてもう寝てしまおう、と木の幹を背もたれにして腰を下ろす。

 この体はやはり子供のものだ。少し歩いただけですぐに疲れるし、パワーもない。藤澤美咲はアニメ観て夜更かししてと、とてもじゃないが模範からはほど遠い生活を送っていたが、三食きちんと食べている分、まだマシであったといえよう。この子の境遇を考えるとなかなかに不憫である。それだけ日本の一般家庭が恵まれた環境を享受しているだけなのかもしれないが。

 それともう一つ気になることがある。私の両手には焼き印のような黒い文字がつけられているのだ。それも日本語で。

 右の手のひらには『不老不死30』という暗号のようなもの。

 左の手のひらには『1000』という数字。

 全く訳が分からない。なんだよこれ。不老不死?なわけねーじゃん。こんなに腹へってんだから下手したらすぐに餓死しますよ?


 ガサッ。


「!?」

 緩みかけていた緊張が、急な物音に反応する。今、音がした。向こうの草むらが動いた。微かだが確か、この森で初めての他の生物の気配。

 私はそこから目を離さないようにしながら、じりじりと後ずさる。ちなみにこれ熊に遭遇したときの対処法ね。背中を向けて走って逃げるのは一番のNG。追いかけられて後ろから襲われてデッドエンド。

 さあ、どんなやつが出てくる……?


 鹿だった。


 奈良の公園にいるあれくらいの大きさのやつ。とりあえず、肉食系ではないので胸を撫で下ろす。しかしよく見ると、ただの鹿ではない。角が石上神宮七支刀みたいな形をしている。え?石上神宮七支刀が分からないって?今すぐにググれ。

 とにかく見たことのないタイプの鹿だった。こんな生き物が生息しているということは、ここは日本ではないのかもしれない。いや、それどころか地球であるのかすら怪しい。だってあれ、動物図鑑に載ってないよ?私、もしかして新種発見しちゃった?

 そいつは私を一瞥すると、さして興味もなさげに森の中へと帰っていった。

 この時の私はとてもお腹がすいていた。

 この時の私はとてもお腹がすいていたんだ。


「あの鹿って食えんのかな……」


 そっと後をつけることにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ