『いつも』の終わり
「ったく、ヒドい目にあった……」
首を押さえる大河を私は笑顔で諭す。
「因果応報ってやつよ」
「ウルセーペチャパイ」
カッチーン。
額に青筋を立てながらも笑顔を崩さない私ってすごいと思う。
「童貞のまま死にたいか?」
拳の骨をパキパキと鳴らしてみる。
「ど、童貞ですが何か!?俺まだ中学生だしぃ!?」
「この中二病!知ってるんだからね、あんたいつも部屋で変な台詞をさけ……、」
「ちゅちゅ、中学生だしっ!!何か文句あんのか!!」
不毛な言い争いから取っ組み合いが始まってしまった。既に中学校の校門の前まで来ているというのに。恥ずかしい……。
ま、後悔しても反省してもしょうがないので気にしない。だってこれもいつもの事なのだから。まわりの中坊どもも「またか」って感じで見てきてるし。
そんな『日常』が終わろうとしていた。
生徒たちの悲鳴。
空気を切り裂く甲高い音。
タイヤの焦げる臭い。
その時、私の目に映ったものは、校門に向かって猛スピードで向かってくる大型トラックと、転んで逃げ遅れた一人の女の子だった。
「や」
ばいやばいやばいやばい。このままじゃ……、
「姉ちゃん!?」
私が咄嗟に飛び出したのは、反射に近かった。
疾走の勢いで少女を向こうに突き飛ばす。
間に合った!よし、あとは私も避ければ……、
衝撃。
体は宙に。
浮遊感の中、心には意外にも余裕があった。
アハ、私、お空を飛んじゃった☆テヘ☆
意識もトんだ。