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いつもの朝
『春眠暁を覚えず』っていい言葉だよね。座右の銘にしてもいいくらい。そんなことをぼーっと考えながら夢と現の狭間をさまよっていた私の枕元で『春眠~』の情趣を解さない無学な目覚まし時計くんがジリリリリと騒ぎ出した。
殴って黙らせた。
「あと五分……」
……もう、布団って、最高。
あったかくて、ふわっふわなのは言うまでもないけど、なんかもう匂いも好き。好き好き大好き。ここが私のベストプレイス。
「姉ちゃん!いつまで寝てんの?今日は月曜日だよ」
そしてまた、私の平穏を侵略せんとする第二の刺客がドアの向こうから現れた。そいつはつかつかと私のベッドまで歩み寄ると、あろうことか愛しの掛け布団たちをひっぺがし、カーテンを開け放った!ま、まぶしぃ、浄化されてしまうぅ。
「ぐぁあぁ、やりおったな、『生ける目覚まし時計』!」
「そんなくそダサい名前は御免だわ!愚姉の実弟、大河です。どうぞ宜しく」
リビング・アラーム・クロックこと、弟の大河14歳の登場だった。